H-D FLH 1981
FREE STYLE CUSTOM & CHOP

望んだ走りを支える
ピークのリスクヘッジ

親しみのもてるスタッフのオープンな人柄で、足を運ぶお客さんが絶えないカスタム屋だ。この日も、飛び込みで来た近所の軽トラックを談笑しながらあっという間に直してしまうなど、地元に根付いたショップなのがありありと伝わってくる。さしずめサーファーでもある店主山下さんからは、全身でウェルカムを発しているかの人を呼ぶ大らかな雰囲気が漂っている。

今回のショベルは、「早く乗りたい！」という熱心なオーナーの依頼を受けて製作したものだと言う。そのため当然、納期が勝負どころとなり、可能な限りそのパッションに短期で応えられるように。また、『走り』を重視してなるべく壊れないように配慮したものだそうだ。

全体のスタイリングは、基本的に山下さんが好きなフレームと外装が同色の’60年代風にデザイン。そのシンプルなチョッパースタイルに、壊れないための加工が要所に加えられている。まず、リアフェンダー。一見華奢な印象を与えるナローなルックスだが、フェンダー裏に鉄の骨組みを入れて万全と補強。経年劣化で割れやすい箇所だからこそ不安のない処置を施している。

他に、ステーの強化にも油断はない。ステップ周りには振動で折れないようにガセットをあてがい、更にステップ下にサブステーを配備。そして、HSRキャブのステーに関してもごつめの物を使用し、脇を固めている。こうした意外と見過ごしがちなキャブステーにまで目が回った措置は、実際自らが現場で学んできた経験値によるところが大きい。

「フェンダーにしてもめんどくさいからやらないお店もありますよね（笑）。でも言っても、これが凄い持つんですよ。最初にやっておけばよっぽど長く付き合っていけますから。オーナーぶっ放して乗るもんで、とにかく走って壊れんようにみたいな（笑）」

前後ホイールに21／18インチのHリムを用い、フォークは35φタイプの4インチオーバーを装着。えぐり加工がなされたガスタンクは同店では比較的出番の多い造作で、それら外装は外注業者に任すことなくすべて自社でペイント。今回はキャンディゴールドで華やかに彩られている。

ボディワークや外装全般は店主自ら作業にあたり、エンジン系の整備は長年甘苦（かんく）を共にするスタッフに一任。分業で仕上げるその仕事は、「スタッフが凄い細かい所までやるんで結構良い物が出来ると思う」と、あくまで控え目な語調ながらきっぷのいい自信に包まれている。

HANDLE

ハンドルはフロント周りのバランスに合わせた高さでワンオフ。三つ又はノーマルを成形した後にポリッシュ。

FRONT FORK

35φフォークの4インチオーバー。ライトはオーナー持ち込みのヴィンテージのスクエアタイプを2連で装着。

GAS TANK

えぐり加工を施したガスタンク。空洞に鉄板を曲げてフタをするように溶接して仕上げた一品。塗装は自社で行う。

OPEN PRIMARY

プライマリー中央で支持するフットステップにはサブステーを配備。ステップはイタリア製家具材を流用加工。

MUFFLER

アグレッシブな雰囲気を放つハイマウントのストレートパイプ。ナローな全体に合わせて極力内側にセット。

REAR FEDER

フェンダー裏は鉄の骨組みで補強。エンドチップはアルミ叩き出しの箇所でハンマリング跡をそのまま残す。