HARLEY-DAVIDSON SHOVELHEAD
HEART CUSTOM CYCLES

一巡して立つ
刻まれるダンディ

以前勤めていたショップオーナーに任され製作したロングフォークである。店主小林さんの代表作のひとつであるこのチョッパーは、細身のボディラインが特徴だ。

「ここを始める前に居たショップのオーナーのバイクです。ナロースタイルがテーマなんで、5速ミッションを載せた時の各所の調整が大変だったかな。4速から5速に換えるとギヤひとつ分が外に出っ張るから、そこに影響を受ける部分の加工ですよね」

この場合どうしてもエキゾーストが外に出がちなため、なるべく出ないように、ステップと併せて内側へと追い込んでいる。また、無垢のステン材から削り出したキックアームに関しても、オフセットしていないためキックを踏んだ際にエキゾーストと干渉。そこでアームの内側を削り、先のステップを内側に押し込むことで対処した。

さて、こだわりは何か。単刀直入に質問を投げかけてみた。

「やっぱり乗りやすく。あとは後ろのカスタムテック製のブレーキなんですけど、付属のマウントプレートだと薄すぎて、溶接するとどちらかに引っ張られたりセンターがズレてしまうと思う。だから20mmぐらいの無垢の角材を買ってきてそこは作ってます」

これまで見てきた輸入車両の中には、ブレーキプレートを締めると芯が出ていないため動かなくなってしまうことから、まったく締まってない状態で来るバイクも何台かあったそうだ。その経験を反面教師に、氏は20mmの角材を用意して10mmほどフライスで落とした後にガッチリと、ラインを狂わさずフレームに固定している。

シッシーバーを始め、フットステーなどにあしらったツイスト加工もほど良くアイキャッチに効く。が、実はこれ、ワンオフパーツではなく、門などに使われる市販の建築素材とのこと。時間やコストを抑えるばかりか、種類もダブルやトリプルと様々なパターンがあるため重宝していると話す。

一方、エンジンハンガーはスチールのワンオフで、表面には一個ずつミルでドリルド加工。こうした細やかな作業の集大成がクオリティの高さにつながっている。他にも、ハンドシフトの主軸にベアリングを内蔵して『ガタ』を防ぐなど、機能性への配慮も怠ることはない。

ある物は使い、ない物は作る。盲目的でない臨機応変なその処置には、クレバーな大人の思考が冴える。そして、市販品を有効活用したワンランク上のカスタムの裏では、腕に覚えのある技の応酬が音もなく飛び交う。

HANDLE

クロームとグリップのゴールドのコンビが色鮮やかなハンドル周り。操作性を損なわないプルバックを選択。

FRONT FORK

ロングフォークは、チョッパー乗りの支持が熱いMCペッカーズ製。ライトはボディのみ色を変えたユニティを装着。

ENGINE

ストックのモーターをオーバーホール。ロッカーカバーにスローバックを付けて、キャブにEキャブをチョイス。

HAND SHIFT

ワンオフのハンドシフトの主軸にはベアリングを挿入。エンジンハンガーには一つずつドリルド加工を実施。

MUFFLER

内側に追い込むのがテーマ。マフラーやステップは可能な限り寄せて装着。結果ナロースタイルに大きく貢献する。

TAIL LIGHT

羽は車のラジエターキャップに取り付ける部分で、ボディは真鍮無垢材からの削り出し。ランプはキジマ製。