ウラウズモーターサイクル URAWUS MOTOR CYCLE 鈴木良太 Ryota Suzukiのインタビュー

URAWUS MOTOR CYCLE

鈴木良太 Ryota Suzuki

October 8th, 2021

カスタムスタイルを問わず、堅実なディメンションの中にキラリと光る手の込んだディテイルを落とし込み、あくまでもさり気なく個性を主張するショップだ。

ハーレーのキャブレター時代のモデル、特にEVOやショベルへの豊富な経験を擁する店主の鈴木さんは、カスタムにやり甲斐を感じるビルダーであると同時に、修理にもそれと同等以上の喜びを見出すメカニックでもある。

全くと言って良いほどバイクとの接点のなかった少年時代を秋田で過ごし、上京後、一念発起して日本屈指のハーレー中古車販売台数を誇る千葉県松戸市のベガスモーターサイクルに入社。目まぐるしい修行の日々の中で成長し、独立を果たすと東京足立区に根を下ろした。

気の遠くなるような手間暇を感じさせないクリーンな作り込みはベガスの血統。そこに加えられるひと捻りの変化球は、氏の屈託のない柔軟性が生み出すオリジナルだ。飾りだてのないその小気味好い人柄は、作り出すカスタムにも如実に映し出されている。

(写真・文/馬場啓介)

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ファーストコンタクトは
近所のオジさんの100cc

ー では最初に鈴木さんの幼少期の頃の話を聞かせてもらえますか?
小さい頃ですか、イタズラ……ひたすらイタズラばっかりしてましたね(笑)。俺は秋田出身で、まぁ田舎なんで、記憶に残ってるのだと田植えしたばっかりの田んぼを荒らしたりとか。結構、怒られましたね。「お前これ、どんな思いでやってると思ってんだ!」って。
ー なかなかの少年だったんですね(笑)。
でも悪さは中学でもう落ち着きましたよ。そこからは野球一筋で。
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ー 野球ですか。では、どういう経緯でバイクに興味を?
ど田舎だったもんで、乗ってる人自体がいなくてバイクはあんまり馴染みがなくて。ウチの斜め向かいのオバさんの……弟さんかな? そのオジさんがたまーに100ccくらいのバイクで遊びに来てて、バイクに乗ってる人ってもうその人くらいでしたね。
ー 郵便配達の人なんかは?
もちろん仕事でカブなんかに乗ってる人はいましたけど、ジイさんバアさんが畑に行くのにカブを使ってたりとか。でもそれすらもウチの集落にはいなくて、本当にそのオジさんだけ。いわゆるファーストコンタクトがそれですね。なんのバイクだったかも覚えてはないですけど。
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窓拭きのバイトをして
手に入れた念願のハーレー

ー 自分のバイクを手に入れたのは?
東京に来てからなので……19のときです。高卒で上京してきたんですけど、それから二輪の免許を取って。初めてのバイクはスズキのグラストラッカーでした。自分でテールランプとかを換えてみたりもしましたけど、それで壊しちゃったりもしてましたね。
ー ちなみに、中学高校の頃はイタズラ小僧の延長でバイクに乗ったりは?
友達のを借りてちょっとっす(笑)。それでどっか行くとかじゃなくて、ただ「乗ってみた」って感じの。乗り回すとかではなく。
ー それでやっぱり楽しかったり、自分に刺さるものがあったんですね。
なんとなくやっぱりバイクってカッコ良くて、男らしい乗り物だっていうのは思ってましたね。さっきも言ったように俺、野球部だったんですけど、遠征でマイクロバスに乗ってるときにオジさんバイク軍団と遭遇したことがあるんですよ。で、みんなで「ハーレーだぜ!」って盛り上がったのは覚えてます。今思えばあれゴールドウィングだったんですけど(笑)。それくらい珍しい存在でしたね。
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ー ではまず東京に出てきて何を?
まぁプラプラしてました(笑)。就職で出てきたんですけど、すぐに辞めちゃって。
ー なるほど(笑)。バイク屋へはどういう流れで?
当時、窓拭きのバイトをしていたんです、定職に就こうと思って。で、俺そのときショベルのチョッパーに乗ってて、同僚にそういう定職の話をした時に、「お前バイクにそんな金かけるならいっそのことバイク屋になればいいじゃん」って言われて。
ー そのショベルはバイトで貯めたお金で?
ですね、21のときに東京の東久留米にあったカンナムってショップで買いました。別にショベルにこだわりがあったわけじゃなくて、EVOチョッパーをお願いしたら「ショベルにしとけ」ってんでショベルになりました(笑)。確か当時、EVOの方が高かったっていう事情もあったのかな。それを気に入って、この店を始める頃までずっと乗ってましたね。
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ー そのバイクとの思い出はどうですか?
納車のその日にそのまま北海道に行ったんですよ(笑)。その帰りに地元の秋田に寄って友達の家でウダウダしてたら嫁から電話がかかってきて「子供できた!」って。そっからまた1年窓拭きやってたんですけど「ちゃんとしなきゃな」ってバイク屋になったんです。
ー ショベルを売らなきゃとはならなかったんですね(笑)。
手放したくないからバイク屋になったってのはありますね(笑)。
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営業をやるぐらいなら辞める
一心に励んだ松戸の修行時代

ー 修行はどちらのショップで?
千葉県松戸のベガスってお店ですね。メカのことは何にも分かりませんって感じだったんですけど、多分、人を集めてた時期だったんでしょうね、同期も7人くらいいましたし、それで採ってもらえたんだと思います。それが20代半ばくらいでしたね。
ー お店としては仕事はこれから覚えてもらえばいいって年齢でしょうね。
でも同期が結構、メカの専門学校上がりで。出遅れ感はやっぱりありましたね。だから最初は「営業やらないか」って言われたりもしましたし。
ー それは突っぱねたんですか(笑)。
「営業やるくらいなら辞めます。それしに来てるんじゃないんで」って(笑)。でも、「ヤダヤダじゃ務まんねーんだよ! お前だいたい自分の工具持ってねえだろっ!」て凄い言われましたよ。
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多くを学んだ
凄腕の先輩たち

ー それでも仕事を覚えていって。
仕事時間外に自分のバイクいじったりとか、先輩から溶接を教えてもらったりとか。鷲尾さんって人が凄く面倒見の良い人で、休み時間に練習してるとわざわざ見に来てくれるんですよ。店長の新村さんからも沢山教わりましたね。ベガスって外から見るとただの中古車販売店なんですけど、メカとか凄いしっかりしてて。特にこの二人はいわゆる凄腕でしたね。
ー どちらも独立してカスタムショップを開いても通用するような。
もう全然全然! 近くに来ないでくれってレベルですよ(笑)。あの人たちとは戦いたくないですもん。
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ー では、鈴木さんが独立しようと思ったきっかけは?
ベガスには6年くらいいたんですけど、最初から独立するつもりではいました。で、いざってなったきっかけは同期の独立です。それから1年して俺も独立して、ちょうど30のときでした。年齢もひとつの要因ではありましたね。
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車種年式問わずどころか
チェーンソーまでもが守備範囲

ー 独立して始めから今のこの場所ですか?
最初は埼玉県八潮のちょっと手前の、同じ足立区の六木ってところに場所を借りてました。でも住宅街の中だったんですけど、向かいのお兄さんが「シャッター蹴破られてバイク盗まれたことあるから気を付けなよ」って注意してくれるような土地ではありましたね(笑)。
ー 当時はハーレー以外の車種も?
取り敢えず生活していかなきゃなのでバイクは何でも。カスタムショーに出すようなバイクを作りたいって想いもありましたけど、そこまで熱くなっていたわけではなかったので。バイクどころか植木屋さんに頼まれてチェーンソーを直したりなんかも頻繁にしてましたよ(笑)。
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ー 今の場所に移転したのは?
流石にいつまでも住宅街でやるつもりもなかったですし、7坪しかなくて狭かったので、ずっと良い場所を探してはいました。この辺りは家賃が高いのも知ってたんですけど、たまたま見付けたこの物件の家賃を聞いてみたら「ギリッギリなんとかなる!」って。家から自転車で通える距離なのも良かったです。休みの日には子供が遊びに来たりもしますし。
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カスタムだけでなく
修理も楽しむ進歩の日々

ー カスタムやメンテナンスをするなかで好きな作業ってあります?
(※しばらく考えた後)加工物は割りかし好きっすね。でも最近は修理とかも楽しめるようになって来ました。ゴールが分かってるんで、そのゴールを目指して、まぁ分かり切ったことをやるんですけど、ちゃんと直るじゃないですか。そうすると嬉しいんですよね。
ー なるほど達成感というか。
で、やっぱり経験積むごとに、仕事がキレイにできるようになるんですよ。「あ、俺ちょっと腕上げたな」って。それはずっと感じながらやってます。「また上手くなってる、嬉しいな。まだもっと上手くなれるんだろうな」って。
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ー 対して、加工物は?
加工もそれあるんですけど、加工とかカスタムは考える時間が楽しいときとシンドイときとがあるんで。
ー 生みの苦しみですね。
だから有名なカスタムショップさんとかは、この楽しい感じの方が多いのかなぁって思ったりしますね。俺は苦しんでるときの方が多いんで。もちろんテンション高いときもありますよ「これカッコいいんじゃないか!」って。でも割合で言うとキツいときの方が勝っちゃってますね。
ー じゃあ今はカスタム依頼よりも修理依頼の方が嬉しいと?
『今は』ですね。昔はカスタムの方が嬉しかったですし、また変わるかも知れないですけど。
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やってしまう
細かいウチっぽさ

ー ウラウズのスタイルで定番みたいなものありますか?
あんまり一途じゃないんで……(笑)。最初はロングフォークが好きだったんですけど、最近はちっちゃい方が良いなぁって思うようになってますし。正直、スタイルってあんまり考えたことないですね(笑)。でも、あんまり全体的に奇抜にならないようにしようかなっていうのはあります。で、良く見ると変態的なことをやってるってカスタム。
ー おぉ(笑)。
パッと見は普通のバイクなんだけど、良く見ると「うわぁ~なんだコレ、めんどくせぇことやってんな」みたいな。あ~今言ってて思いましたけど、それがもしかしたらウチっぽいのかも知れないですね。やりたい訳じゃないんですけど、やっちゃうんです。
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ー 影響を受けたカスタムビルダーやカスタムバイクってあるんです?
いっぱいありますよ。窓拭きのときにハーレーを買うきっかけになった先輩がいて、その人がバイク屋に連れてってくれたんですけど、それくらいから色々と雑誌を見るようになって。ホットドック(※東京練馬区)とかロナーセイジ(※茨城県小美玉市)が業界を引っ張ってた頃ですね。俺は勝手に第一世代って呼んでますけど(笑)。
ー じゃあ影響を受けたのもその辺りの?
一番最初に好きになったのはロナーセイジのバイクでした。あの美しい系のチョッパーですね。あと海外のビルダーだとジェシー・ジェームズが作ったロングフォークの青いナックルがあるんですけど、あれはロングフォークの中でいまだに一番好きですね。俺の中では一番カッコいいです。
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ー でもそれを今も引きずってる感じはないですよね?
そうですね、俺、流行りに乗っかりますね結構(笑)。流行ってるもんって実際カッコいいですもんね。まぁエイジングとかはやらなかったですけど、それ以外は全部好きですね。
ー 柔軟な感じですね。「俺はこれだ!」ってこだわることもなく。
あーもう全然全然ないっすないっす(笑)。とにかくもうちゃんと乗れるんであれば。誰かのカスタムを真似することはないですけど、そこはやっぱりプライドが出ちゃうんで。
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オリジナルパーツは
抱えずマイペースに

ー オリジナルパーツとしてはプラグを収納できるペグが有名ですが、他には?
いやーあれ以来、何も展開してないですね。もう4年とか前ですか。タイミングがあればまた違うパーツもやりたいですけどね。普段の仕事で手一杯な感じで。
ー あれはまだ売ってるんです?
売ってるも何も、不良在庫抱えてますよ(笑)。つい最近オーダーもらって発送しましたけど。
ー 腐る物ではないんで気長に(笑)。
もうカルトパーツになるまで持ってようかなって思ってます(笑)。
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大事にしていきたいのは
自然と滲み出るウラウズ感

ー 今後の展望についてお聞きしたいんですが。
今後ですかぁ、う~ん……(※しばし考え込む)。
ー まあ展望というか将来的に(笑)。
(笑)。自分で言うんじゃなくて、周りが「ウラウズのスタイルってこうだよね」って言ってもらえるようになれば嬉しいですね。バイクだけ見て「ウラウズでしょ」って言ってもらえたら良いなって思ってます。そこを狙ってカスタムはしてないですけど、ちょっとずつそうなっていけば。
ー 自然にそうなれば最高だと。
そうですね。あるときロッドショーに出したEVOを見た人から「変な意味じゃなくてベガスっぽいよね」って言われたんですよ。それで「やっぱり作ってるとそういうのって出るんだな」って。全然意識してなかったんですけどね。
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ー 昔、学んだものが。
狙ってなくても出るんですね。だから「それでいいや」って思えたんですよ。
ー それは嫌だったわけではなく?
全然全然! だってベガスのバイクってキレイなんですもん。俺は凄い良い仕事だと思ってるんで、むしろ嬉しかったです。
ー オールドスクールチョッパーを作っていても、ひとつひとつの仕事はクリーンな仕上げに。
雑に作って、それを味って言うのはナシだと思ってるんで。やっぱりキレイに作って、味ってのは後から出てくるものかなって。基本的にはなんでもキレイに作ろうっていうのは心掛けてます。

URAWUS MOTOR CYCLE

ウラウズモーターサイクルのショップ外観
住所 東京都足立区千住仲町15-15(Google MAPを開く
電話 03-6319-9170
FAX 03-6319-9170
SHOP URAWUS MOTOR CYCLEのショップ紹介
営業時間 10:00 ~ 20:00
定休日 水曜日