HOT SPICE CUSTOMSのハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパー(S&S KNUCKLEHEAD)

H-D S&S KNUCKLEHEAD
HOT SPICE CUSTOMS

July 12th, 2025

淡々とつむぎ出される
隠されたハズしの美学

今となっては、簡単には手の届かない憧れのモーターサイクルがナックルヘッドだろう。いくら手入れをしていても、普通に乗っていれば相当劣化しているのが現状。もしくは日常的に動いているならば、むしろ極上とも言える。

HOT SPICE CUSTOMSのハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパー(S&S KNUCKLEHEAD)

しかしナックルヘッドに乗りたいならば、「この手があったか!」と気づきを与えてくれたのが、京都にある『HOT SPICE』が手がけたチョッパーだ。

エンジンまわりを見ると相当使い込んでいることがうかがえる、いい感じのヤレ方だ。経年変化しているが、それは決して劣化ではなく、現役モーターとしての活躍を予感させる。だがその情報には、虚偽が多分に含まれている。

HOT SPICE CUSTOMSのハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパー(S&S KNUCKLEHEAD)

ナックルヘッドの最終モデルは1947年製造だが、このチョッパーに搭載されるエンジンはS&S製。つまり現行でも新品が手に入るナックルヘッドモーターを載せているのだ。ということは活躍を予感させるのではなく、現役モーターであり、普通に走れるというのが真実。

「エンジン自体が結構ヤレた雰囲気になっているので、それに合わせて外装を全部作っていこうかなという感じでしたね」、と答えるビルダー笠井さん。

HOT SPICE CUSTOMSのハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパー(S&S KNUCKLEHEAD)

ショップの創設期以前からこのオーナーとは付き合いがあり、気心知れた旧知の仲。だからこそ、ある程度オーナーの好みというか、ノリがわかった。

笠井さんは言葉を選びながら「わかりやすくというか……どう言ったらいいんですかね。ガレージチョッパーなイメージといえば、そういう感じですかね」と、紡ぎ出した答えは正規のビルダーのフルカスタムながら、意外にもガレージチョッパーだった。

HOT SPICE CUSTOMSのハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパー(S&S KNUCKLEHEAD)

確かに’50年代、’60年代を彷彿させるワルそうなスタイル。象徴的なのが、あえて色をハズしたリアフェンダーだ。

「赤のリブフェンダーは結構多いんで、ちょっと変わった色というか。『あのカッコいい緑のナックル』って感じで覚えてくれるじゃないですか」と色をハズしながらも、したたかな狙いが隠されている。タンクペイントもヴィンテージ風でありながら、笠井さんが手がけた。

HOT SPICE CUSTOMSのハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパー(S&S KNUCKLEHEAD)

「普段はガッツリやらないですけど、このときはやりたいテンションというか、やろうかなって感じで……」、と照れながら細部を語る。作り込みにも、照れにも狙いが隠されている気配がある。

ベースとなったガスタンクはありがちな純正分割ではなく、わざわざマスタングタイプを割った。ここにハズしの美学が垣間見えた瞬間、S&S製ナックルヘッドのガレージチョッパーに奥深い狙いを感じた。

(文/野上真一)

HARLEY-DAVIDSON S&S KNUCKLEHEAD DETAIL WORK

ハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパーのフロントフォーク

FRONT FORK

スプリンガーは4インチオーバーのW&W製。パウコのライザーにクリーク製プルバックバーを組み合わせた。

ハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパーのガスタンク

GAS TANK

ガスタンクはマスタングを分割し、キャップをブリティッシュタイプに。タンク塗装は笠井さん自身が手がけた。

ハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパーのエンジン

ENGINE

オイルが滲みヤレた風体のナックルヘッド。だが実際は現行S&S製モーターを乗り込んだ末の味わいである。

ハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパーのシート

SEAT

Whale & Co.製シートが美しく収まり、ガレージチョッパーと名乗りつつもその枠に収まらない雰囲気を醸す。

ハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパーのマフラー

MUFFLER

マフラーは高い位置までカチ上げられる。リアフェンダーはリブ付きでボディ色と異なる緑色が個性を打ち出す。

ハーレー ナックルヘッドのガレージチョッパーのリアエンド

REAR END

テールランプはトラック用のマーカランプを使用。シッシーバー先端の突起は、米国で購入したフェンス用の飾り。

BUILDER’S VOICE

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