H-D FXBBS 2020
SUNNY-SIDE GARAGE

妖しくも硬質な
隣り合わせのボナパルト

毎年3月後半に開催される東京モーターサイクルショーでの『オーリンズ』ブース。世界最高峰のサスペンションメーカーとして知られた存在だが、そこに近年決まって出展を果たしているのが『サニーサイドガレージ』だ。

同店が手掛けるオーリンズ製サスを使ったマシンはスピードの残香を散らす、ハーレーらしさをスポイルすることない威儀を正したものだが、今年はそれにプラスしてゴージャス感をセットオフ。

いま市場にある既存のカスタムスタイルとはごくわずか、許容域を外したストライクゾーンすれすれを貫いたものとなっている。

「ウチがクラブスタイルを作ったらどうなるのか。そこで周りを見た時にみんな同じような部品を使ってたんで、じゃあゴージャスなスピードクルーザーみたいな雰囲気で作りたいなと思ったんですよね」

オーリンズ製サスに象徴される欧州パーツに始まり、造形に美しさが宿るものを選択基準として各所を編成。むろん走行性能は何よりも優先順位が高いトピックのため、結果として自然と機能美パーツでまとめられ、カスタムスタイルありきではない、機能性と見栄えを意識した必然形としての一台が完成した。

「やっぱり足周りの振り幅が面白いです。今のサスペンションって柔らかくも全然振れるし、レーシングにもいける振り幅を持ってるんです。結局のんびり走る方が大半なんで、その中でも最上級の乗り心地が出せるというのが良いですよね」

乗り手に合わせて倒立フォークのバネとオイルを改善。一度に500km前後走るオーナーの用途に則した柔らかな乗り味を提供し、曰く、ふわふわと魔法の絨毯のようなライドフィールを指向。そして、経験が物を言うサンダーマックスによるインジェクションチューンで調律した。

店主の須川さんの言うことは長年一貫している。それはさかのぼれば、氏が修行を積んできた埼玉のチューニングショップから彼これ20年近くに及んでいる。

なので、オーリンズブースとの関係性からPRをしているといったうがった見方はお門が違う。そもそもそのレベルで仕事をしてきた人ではないし、もしそうだとすれば逆に、一大メーカーが自社ブースに毎年同じショップを招致することもない。

カスタム屋ではなく、オートバイ屋であり調整屋が創るスピードクルーザー。この種のカスタムに備わる不良性はないものの、眼前のマシンにはゴージャスな中にもスピードを核とした妖しくも硬質な、同胞の殺気がけば立っている。

（写真／山田健太郎）

FRONT FAIRING

純正フェアリングをそのまま使用。ウインドシールドは他社製をセット。塗装はシェイキン清水氏が担当する。

HANDLE

操作性の高い絞りの効いたハンドルはサニーサイドガレージの商品で、ライザーは12インチのレビュフィニ製。

WHEEL

バネ下重量の低減を計りホイールは前後19／17インチのBST製カーボンで、キャリパーにブレンボ製を用いる。

FRONT FORK

運動性能と剛性の高いオーリンズ製倒立タイプを選択し、オイルとバネを変更。同店が長年信頼を寄せる一品。

FOOT CONTROL

フットコントロールに質感の高いミスミエンジニアリング製をおごる。このマシンにジャストな相性を見せる。

MUFFLER

マフラーはオリジナル商品の第二弾。エンドの多角形部はドライカーボンで製作し、GPメッシュもワンオフ。