H-D SHOVELHEAD 1978
NUTS CUSTOM CYCLES

焙煎したメモリアルを飾る
20年目のフリスコスタイル

あそこに行けば欲しい車両がある。そして、カスタムや修理に関しても頭ひとつ抜けた技芸が冴え渡っている。愛媛県の『ナッツ』はそんなショップだ。だから自然と、地元の四国地方だけではなく、評判を聞きつけた趣味人らが全国から心拍数を上げながら訪れている。

今や、多岐に渡ったカスタムバイクを揃えるユートピア的様相を呈した同店だが、その支持率の高さに浮つくことなく、むしろかえって冷静沈着に、日々業務を進めるいぶし銀が店主薦田（せんだ）さんの徳性だ。

今年で店を開いて20年。このフリスコスタイルのチョッパーは、ナッツのメモリアルには欠かすことの出来ない一台だ。オーナーとは店を始める前からの付き合いで、当時初めて作ったカスタムバイクでもある。

「僕が店始めるときに初めて作らせてもらったものです。今とは違うカタチで20年乗ってもらってて、今年ウチが20周年なんで一回ちょっと乗りやすいフリスコに作り変えようと。そういうバイクですね」

数年前から出ていた話をこのタイミングで実行。王道のフリスコスタイルは、薦田さんがかつて憧れ、生活していた地の仙台のチョッパースタイルを参考にしてはいるものの、それをブラッシュアップしたものへと消化。「憧れとったものよりひと手間加えたバイクにしたかった」とは本人の弁だ。

スタンダードなリジッドフレームには、ナローフォークと前後ナインキャストホイールを装着。ガスタンクは勿論スポーツタイプを選択し、ハンドル周りにH型ライザーとドラッグバーをセット。

各所をフリスコスタイルの常とう手段で構築するが、全体のバランス感覚がしたたかに長けている。カスタムに秀でたショップの腕をいやがおうにも思い知らされるシルエットだ。

一方オイルタンクは、汎用品を使えば労力も時間もかからない所を、敢えてイチから単一で製作。一般的にめんどくさいがために敬遠されるパートだが、仕上がりに影響することでワンオフしている。そして数をこなしてきた今では、氏にとって簡単な作業のひとつだと笑う。

「あとは配線の取り回しとかシート下のまとめ方で変わってくるとは思います。でもショベルなんで基本そうとう下手くそじゃない限りシンプルにはなると思うんすけど（笑）」

自分を大きく見せることないストレートな物言いが痛快だ。やはりカスタムの技もさることながら、氏の気だての方にも全国の趣味人たちはやられてしまう。

HANDLE

H型ライザーの上に更にプルバックライザーをジョイント。ドラッグバーを合わせて往年のフリスコスタイルを描出。

FRONT FORK

4インチオーバーのフォークは2000年以降のダイナ／スポーツ系の物をセット。ライトバイザーをわずかに加工。

FRONT WHEEL

ブレーキはダブルディスク仕様のブレンボ製。ショベル純正のナインキャストホイールはセラコートされた。

GAS TANK

スポーツスタータンクをベースにほんのりと絞り成形。キャップ位置を変更。上面のグラフィックに個性が宿る。

SEAT

あえてコブラシートではないガンファイタータイプの選択に作り手の感性の高さが現出。程よい肉厚も保持。

REAR END

クーパースミス製フェンダーにリサイズしたルーカステールを。ステーはシッシーバーも装着出来る作りとなる。