H-D XLCH 1971
HOT SPICE CUSTOMS
人種勝ちし続ける
コーピングの濡れ鼠
台風接近のさなか、わずかに晴れ間をのぞかせたその一瞬を狙って取材を敢行した。なので、今回の撮影は中止と伝えてあった近所に住むオーナーに、店主の笠井さんの方から即行で連絡をしてもらい、店に来てもらうよう段取ってもらった。
までは良かった。結局は恐縮なことに、オーナーは店までの道中で大雨に遭ってしまい、全身ビショ濡れの状態でかろうじて漂着。そして開口一番「ドッキリかこれ!」と、怒るでも笑うでもない豪快な一声を発した。
そのオーナーの人柄をギュッと詰めたような予想外の言葉と、ずぶ濡れの現状に動じない態度が妙に新鮮で、彼の人間性に一気に同調したのを覚えている。
昔からの友人のバイクを好きに作らせてもらったものだと、笠井さんは話す。スケーターでもある彼をイメージして、あとは前々から自分で作ってみたかった『低く小さく、出来るだけ短く』というテーマのもとに執行。アウトラインをつかさどるフレームの後ろ半分をハードテイルで作り、コンパクトな基本骨格を形成した。
「珍しいのは右ジョッキーシフト、右クラッチですかね。意外とオーナーもいけてました。初ジョッキーなんでそもそも左足クラッチの感覚がないからすんなり乗れてましたね」
加えてスケーターである。この人種は若手からベテランまでが総じて運動神経が高い。エントリー技のオーリーまではなんとかなるが、本気の滑り手たちが磨くフリップといった回し系トリックになると一気に難易度は上がる。
そもそも身体能力が良くないと、動的な一枚板に呼吸を合わせたアクションは至難のわざ。だからこそ歴あるオーナーにしてみれば、若干クセのあるシフトコントロールなどは朝飯前だろう。
さて、ホイールは前後21/16インチで、フロントにはスプールハブを配備。ガーターフォークは外注に依頼したワンオフで、ライトにワーゲン用フォグランプを二連で装着。そして、シフトノブはスケボーのウィールをかたどったものを旋盤で造作し、左右出しとしたマフラーのレイアウトがアグレッシブな悪性を添えている。
「自分から話すところは特別ないですけど、やりたいようにやらせてもらった感じです」
納車してわずか1か月というライディングはスムースだ。スケーターならではの敏捷な適応性からだろうが、それにも増してこのバイクとの一体感といったらない。そして、そんな主が乗るバイクがもっとも映える場所は、彼のホームグランドの高架下に決まっている。
HARLEY-DAVIDSON XLCH 1971 DETAIL WORK
HANDLE
ワンオフのライザーとハンドルはロウ付けで接合。ライザー上にスケートブランドのトラックプレートを付ける。
FRONT FORK
74スプリンガーより1インチ短いガーターフォークはアパッチ製のワンオフ品。ライトはワーゲン用を二連装着。
FRONT WHEEL
ホイールにシンプルを極めたスプールハブをセット。前後21/16インチとし、コンパクトな全景と均衡させる。
GAS TANK
汎用ピーナツタイプを幅詰めしてフレーム上にハイマウント。シフトノブは旋盤を使いウィール形状に単一作製。
SEAT
シートは交友の深いパーツブランドWHALE & CO.が製作を担当。座り心地とデザインの双方を有した一品。
MUFFLER
スケーターの乗り手の雰囲気にフィットしたマフラー形状。突出させつつも全体のフォルムに上手く調和させる。
BUILDER’S VOICE
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