H-D FL 1947
DRAG ON
‘90年代のカスタムシーンを
彷彿させるナックルチョッパー
この世にあるすべての万物は常に変化する。
それ故なのか、カスタムに造詣が深いほど「これは流行のスタイルだ。あれはもう古い」と、簡単に口にしてしまう。時代の変化を敏感に察し、トレンドに乗るということは流行を追う姿勢に一貫性はあるが、個性を貫くという点からは遠のく。
埼玉県草加市にある『ドラッグオン』が手掛けたナックルは、’90年代のカスタムシーンでよく見かけたようなチョッパーがテーマ。1989年創業の老舗ショップだけに、当時流行したスタイルもよく知っている。
「基本的にはお客さんのオーダーを具現化したカスタムです」と打ち明けるのは、現場を指揮する二代目の速水唯(はやみずゆい)さん。
オーナーの頭の中にはカスタムイメージがしっかりと固まっていて、その理想を求めて自らパーツを集めてきた。「本人から雑誌の切り抜きや画像など、具体的に提示されたわけではなく、パーツを並べながら『シッシーバーはこれくらいの長さで』と、口頭でのやりとりでした」。
多くのカスタムを作り上げてきたドラッグオンだからこそ、オーナーリクエストの飲み込みは速く、求めているのは’90年代初頭のスタイルであると理解した。
「イメージが固まっていたので、こうした方がいいのでは、といった提案の必要もなかったんです。ただひたすらオーナーの求める完成像へ持っていくという作業が中心でした」
だからといって、持ち込まれたパーツをそのまんまポン付けで組み上げたというわけではない。こうして欲しいと指示された位置へ装着するためには、ワンオフパーツを作らなければいけない。
また持ち込まれたリアフェンダーは6インチだったが、オーナーの理想とする立ち上がりを具現化するには、5インチへ幅を詰める加工が必要。さらにマフラーも、持ち込まれたショットガンをベースに手を加える。
エンジンはケースを割り、シャフト類もすべて交換したが、持ち込まれたSUキャブを組んで火を入れると調子が上がらない。そこでEキャブに変更するなどのメカニカルな提案はもちろん行った。走れる段階になっても、フットペダルの位置や角度など微調整を繰り返す。
そうした緻密な作業を影に隠し、オーナーのイメージするものを、手となり足となって完成させた。
どこか懐かしくもあり、いまはあまり見かけなくなった90’sスタイルのチョッパーかもしれないが、歴史は繰り返し、流行もまた必ず繰り返す。‘90年代を経験していない人たちには、きっと新しいスタイルに見えているに違いない。
(文/野上真一)
HARLEY-DAVIDSON FL 1947 DETAIL WORK
HANDLE
オーナーの趣味嗜好が色濃く反映されるハンドル周り。プルバックにはロナーセイジ製グリップとレバーを取付。
FRONT FORK
W&W製2インチオーバーの74スプリンガーに、ネオファクトリー製ライトとキジマ製ウインカーを装着。
GAS TANK
純正の3.5ガロンタンクにメーター、ダッシュも純正と思われる物がオーナーから持ち込まれ、リペイントした。
FOOT CONTROL
フォワードコントロールとなるペグ、タンデムステップもすべてロナーセイジ製。それらのマウントはワンオフ。
TOOL BOX
クラシカルに見えて最新装備も充実。純正風のツールボックス内にはETCがインストールされている。
REAR END
シッシーバーにはキャッツアイのストップランプを。オーナーイメージを具現化したシートはスカンクが製作。
BUILDER’S VOICE
DRAG ON
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