H-D FLH 1962
INFINITY,
同じ方角に流れる
銀白のジェラシー
なにせスピードが速い。ここに来て、ようやくカスタムファンがその事の重大さに気付いて一挙手一投足に目を向けるようになったわけだが、当の本人はあれよと言う間に遥か前方を疾走している。これは気付くのが遅かったというよりは、店主の駆け幅があまりにも加速度的な面の方が強い。
中堅筆頭のひとりとしてカスタムシーンの核心部に躍り出る土野さんだが、このマシンもただ事ではない。氏の好きな1920年代のボードトラックレーサーをイメージソースとしたシルエットは、スリムかつクリーニッシュ。『美』を読み取る作り手の感性がとっぷりと注がれている。
「全体的にガスタンクにしろ何にしろ細く製作しているんで、非常にスリムなスタイルが一番の推しかと思います。基本的にはバイクに跨ったときに下を見て、そのエンジンの横幅より狭くしたいっていう考え方なんで(笑)」
ついては相当な細さである。あのエンジン幅以内にガスタンクを含めた外装パーツを収めるとなれば、かなりの矯正が強いられるのは明らかだ。しかも、その限られた容量の中でデザインを最大化させるわけだからその陣痛具合は推して知るべしだろう。
更にだ。同店が振るっているのは、容量の少ないガスタンクのままでは終わらせずに、そこに必ずサポートを用意する点である。本来ある場所のオイルタンクを予備ガスタンクとし、その斜め後方に新たにオイルタンクを設置。すべては乗り手ファーストの視点に立った物作りが原点だ。
「タンクを小さくすればガソリンの量が凄い減っちゃうわけですよね。ただ実際にお客さんがどういう乗り方をするかというと、ツーリングしたり長距離を走ったりとかなんです。だからウチはもう一つ作ることで総合的な容量を確保してるんですよ」
作り物に関しても、タンクなどのメインパート以外にも目を光らせている。すべての可動部分に入れたブッシュがその象徴たるもので、必ず消耗する箇所なだけに交換さえすれば新品状態に戻せるという配慮がなされている。また一方、配線やケーブルの処理も独壇場で、土野さんが本音で自信を持つ重要なセクションだ。
走ってる時や信号待ちで何気に下を向けば、パンヘッドのロッカーカバーに自分の顔が照り映える。それは、銀白のタンクローリーの真後ろを走った時に映る、あのなんとなく嬉しいような照れくさいような光景と重なるものがある。そんなオーナーだけへの贈りものもまた、ジェラシーだ。
HARLEY-DAVIDSON FLH 1962 DETAIL WORK
FRONT FORK
VLスプリンガーの左右を1インチずつ詰めてナロード。最初に治具を用意してそこに固定し、確実な作業を行う。
GAS TANK
ごくスリムに製作したタンクはエンジン幅以内に収まる。メーターが埋め込まれた直線美を持ったフォルム。
FOOT CONTROL
無垢の16mmの鉄棒を曲げて製作し、パーカーライジング処理。稼働部には将来の摩耗交換を考えブッシュを挿入。
MUFFLER
スタイリッシュな中にトリッキーなディテイルを仕込むのも同店の特長。右側から有機的に取り回された。
OIL TANK
シート下オイルタンクがガスタンクに転化し、その下後方に新たにオイルタンクを設置。総合的にガス容量を確保。
REAR END
他の外装同様にスリムなリアフェンダーはロウ付けを駆使して成形。レザーシートが全体の雰囲気と調和する。
BUILDER’S VOICE
INFINITY,
住所 | 埼玉県入間市狭山台4-19-9 |
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電話 | 04-2936-6876 |
FAX | 04-2909-9272 |
SHOP | INFINITY,のショップ紹介 |
営業時間 | 9:00 ~ 18:00 |
定休日 | 不定休 |