H-D FXEF 1979
CROAD CYCLES

クロームに走る
星屑のジュピター

静岡県浜松市。バイク好きの間ではある種、特別な響きを持つ地名である。ここは、日本が世界に誇るオートバイメーカー、ホンダやヤマハ、スズキといった天下一品の創業地として知られた領有である。そんな二輪に大いにゆかりのある場で、地元のカスタムファンを支えているショップが『クロードサイクルス』だ。

名立たるメーカーが生まれた土地柄ゆえ、カスタムを手掛けるショップもさぞ多いと思いきや、それがさほどでもない。一説には店に頼らず『自分でやる派』が多いという土壌もあるようだが、そんな中でも『クロード』は気脈を通じたフォロワーを従え、各自の希望に耳を傾け評判を得ている。

「ポイントは細く、ですかね。とにかく前側は細くして、あとはフレームのラインかな。ネック角を寝かせた上で、横から見た時にアンダーチューブが地面と水平になるようになってます」

そもそもこのカタチにするにあたっては、オーナーが持ち込んだ何枚かのイメージを参考にしたと店主の辻さんは言う。それを煮詰めていき、フロントを細くすることに主眼を置いて作業は進められた。

まず、事前に予定していたナローなフロント周りの描出には、大神戸共榮圈製スーパーナロートリプルを選択。そこにφ33フォークを6インチオーバーでセットし、極細身のフロントエンドに合わせてホイールは単一で製作した。

「このフォークに合うインベーダーホイールがなかったのでワンオフしてます。お願いした加工屋さんが、リム何インチ幅何インチを指定してくれればやれるよ、ってことだったんで作ってもらいました」

このフロント周りのタイトな幅に合わせて、ガスタンクから後方の外装を充実。変に横幅が出ないよう細心の注意を払ってボディバランスが整えられている。それはオイルタンクやマフラー、フットコントロール、シッシーバーまでに至り、その一連の流れが見せ場のひとつとなる。

「基本的にはひとつひとつ手作りの物が多いんで、そこですかね。他のカスタムだとそこまでワンオフしないで売ってる物を付けてある程度カタチに出来るんですけど、これは違うんで大変でしたね」

なかなかこれほど手を入れたカスタムは珍しいそうだ。タンクといった主要パートからステーなどの小物までに比重をかけ、ペイントは塗装とは全く関係ない仕事に就くオーナー自らが担当している。この互いの丹心からなる一台には、全体を彩色するクロームの輝き以上のものが照り映えている。

HANDLE

ナローなフォーク幅に合わせたワンオフのライザーハンドル。ライザーはわずかに手前に曲げたデザインとなる。

FRONT FORK

大神戸共榮圈製スーパーナロートリプルにφ33フォークを6インチオーバーで装着。スタビライザーは一品製作。

GAS TANK

持ち込みのマスタングタンクをメインフレーム上に浅くマウント。ペイントはオーナー自身が塗ったものだ。

FOOT CONTROL

プライマリー周りはオープンチェーンとなる。操作系は単一で手配し、要所のスロッテッドがアクセントに。

MUFFLER

ミッドハイのマフラー中点にバンプパイプを使用。ブレーキにはPMをダブルで配備し、ひとつはフロントと連動。

REAR END

往年のイージーライダース製ダブルリブフェンダーにフリンジシートを設置。ホイールはインベーダータイプ。