H-D FX 1983
VIDA MOTORCYCLE
斜め上をいく
もてなしの茶道
福岡の『ヴィダモーターサイクル』といえば、国内指折りのカスタム屋として知られるが、その名声の裏にはすぐれた柔軟性がある。ある時はM8やツインカムといった現行モデルをベースにしたスピードクルーザースタイルを放ち、またある時はバッキバッキに仕上げたショーカスタムを発信。そして今回は、それらとは毛並みの違うオールドスタイルチョッパー。
「4速フレームのサス付きでオールド感を出すというオーダーだったんですよね。そこでグライドフォークに前後ブレーキはドラムにして、まあオーナーのお店に飾ってもらったりもあるんで雰囲気重視で作ってます」
福岡市大名でストリートアパレルを扱う『DOMINO66』主宰のチョッパーである。九州最大の繁華街で長きに渡ってローカルに支持されるショップなだけに、その審美眼は確か。前線でアメリカンカルチャーの発信源を担ってきた感性は、そのまま作り手の大久保さんへと伝播(でんぱ)された。
外装に関しては、当時の風合いを損なうことなく必要に応じて新品パーツを装着。しかしそこでは中身のみを新品に換え、外見はそのままの状態をキープすることで色褪せた質感を保持。そこに来て、円熟のペイントである。
オーナーの希望を汲んだうえで、百戦錬磨の『420カスタムズ』によるカラーリングが白熱。ガスタンクとリアフェンダーの色合いを変え、タンクに入るゴールドのフレイムスカラーをリアフェンダーに当て、逆にフェンダーのフレイムスをブルーに転換というからくりがある。が、そこに取って付けた感はなく、本物と見紛うエイジングペイントが要(かなめ)の完成度を請け負っている。
「ペイントもポイントですけど、リアにはラウンドのスイングアームを付けたり、ガスタンクにはパンヘッド純正を使ってます。あとフェンダーはリプロではあるんですけどクレイジーフランクで、フォークはパンヘッド用の6インチオーバーですね」
オーナーがトレンドと並走し育(はぐく)んできた感性は、ものの見事に真芯で受け止められ、具象化された。そしてそこには、あえて外装の一新だけでは終わらせない大久保さんならではの茶道も控えている。
この手のヤレたカスタムスタイルには珍しく、エンジンにも視点を向け、ピストンに鍛造のS&S製を使ってわずかに圧縮を上げ、カム周りもアップデート。飛ばす時は飛ばす、結構乗るオーナーに合わせたスペックで、意向の斜め上をいく手はずが整えられた。
HARLEY-DAVIDSON FX 1983 DETAIL WORK
FRONT FORK
パンヘッド用グライドフォークは6インチオーバーとなる。スクエア型ヘッドライトはオーナー持ち込みの物。
GAS TANK
タンクもパンヘッド純正をセット。ペイントは山口県の『420カスタムズ』が担当。多彩なスキルを披露する。
FOOT CONTROL
フットコントロールはロッカークラッチで、フットマウントは鉄棒で製作。ペグにはハウゼンブロス製を使用。
MUFFLER
マフラーはスタンダードなドラッグパイプを延長してマウント。ボリュームのある車体とバランスを計る。
SEAT
ほど良い肉厚のハイバックシートはワンオフによるもの。普段から距離を走るオーナーに合わせたフォーム。
REAR FENDER
リアフェンダーはこの系統のオールドスタイルと相性の良いクレイジーフランクを。エイジングもよく馴染む。
BUILDER’S VOICE
VIDA MOTORCYCLE
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