H-D FXWG 1980
HOT SPICE CUSTOMS

イレギュラーに寄せる
着せ替え自在の即興劇

「テーマはよくあるB級チョッパーじゃないですけど、こぎたないチョッパーですね。今の状態で言うと、長めのシッシーバーとか。普通よりちょっと長めでダサイよりに寄せた感じでは作ったんですよね」

カスタム業界のトレンドを押さえた上で、ストリートに映えるグルービーなカスタムを取りさばく京都の『ホットスパイスカスタムス』。時代の流れを敏感にとらえるアンテナは感度が高く、そのため、一見はてなマークが点灯しそうな『ダサイよりに寄せた』なんていう意表を突くコメントも同店では至って普通に飛び交う。

さて、開口一発目の店主笠井さんの言葉にはわずかなフレーズながら引っかかることがあった。それは『今の状態で言うと』のくだりである。ならば、すかさずそこを刺さないわけにはいられない。

「ああ、これはオーナーさんの気分で付け替えられてるんです。一応今はワイドの41mmフォークが付いてるんすけど、別に35mmのナローも持ってはってそれに替えたり。シッシーバーもあの長いのと短いのがありますし、シートも別に持ってますね」

なるほど、要は着せ替えである。その時そのときの自分にとってのベストな状態を求めつつ愛車との付き合いを深める。乗り換えるのではなく、現状ベースで嬉々としてカスタムを楽しむのがこのオーナーのスタンスだ。

笠井さんに聞けば、基本的にボルトオンで製作したチョッパーだと言う。深く作り込んでいる箇所はなく、しいて挙げるならリアフェンダーとシッシーバーをやり直したぐらい。他は6インチオーバーの41mmフォークにアイアンスポーツ純正のガスタンク。汎用マフラーとオイルタンクなどのほとんどをそのまま装着している。

「シートはドラッグスペシャリティーズの当時のやつかな。ステップ周りも何もしてないです。せやし外人さんが作ったまんまのやつですね。ポン付けで出来る所ばっかなんで」

となると、やはり日々縦横に走らせた感度の質がキモだろう。例えポン付けのチョッパーでも土台のバランス感覚がなければ始まらないし、ワンオフ箇所がないとすればパーツチョイスでそのほぼ全てが決まってくる。

「このオーナーさんと付き合いが長いんですよ。せやしなんかノリというか好みが分かってるんで、ある程度のイメージを言ってもらって僕の好きなものも混ぜさせてもらって、って感じですかね」。生かすも殺すも感度次第。その張り巡らせたアンテナの精度が見栄えにつながる。

HANDLE

ゆったりとしたライディングポジションを生むハンドルはEVO用純正のプルバック。ライザーは4インチ。

FRONT FORK

フォークは6インチオーバーのFXWG純正41mmワイドをセット。過剰にならない程度でB級感を演出する。

GAS TANK

ガスタンクは店に余っていたアイアンスポーツ用をマウント。同系色で入るシンプルなピンラインがアクセント。

MUFFLER

エンドがスラッシュカットタイプのマフラーを選択。程よくダメージの入ったボディがバイクの雰囲気と馴染む。

SEAT

ホールド性の高いハイバックシートはドラッグスペシャリティーズ製。ストレスフリーな乗り味を確保する。

SISSY BAR

曰く、普通より少し長くしてダサイよりに寄せた箇所。ライト上にはテイストの合うオーナメントを配置。