H-D EARLY SHOVEL 1969
COSMIC
円熟味を増す
15年のジャッジ
「もう15年前ぐらいに作ったものだよ。これはね、当時今までストリートで走ってたやつをショーアップしたいなっていうので作ったバイク。あとエンジンにストローカーを組んでるんだけど、確かストローカー入れたのはこれが初めてだったのかな」
‘69年式アーリーショベルがベースの一台。エンジンにS&S製ストローカー86cu.in.(1,410cc)をセットアップしたチョッパーは、仙台の雄、コズミックによる仕業である。そしてもちろん、外装のフォルムは同店の代名詞的FRISCO(フリスコ)スタイルにフィニッシュ。一貫してブレのないキレ味は、今も昔も何ひとつ変わっていない。
フリスコスタイルを構成するタンクやフェンダーは、当然既製品をポン付という訳にはいかない。狙ったボディバランスを得るために、全てに鈑金加工を加えて装着。そしてホイールに至るまでもハブやスポーク、リブを一つずつ選んで取り付けている。
「あの時はまだコンプリートのホイールが無かったんじゃないかな。それにもしあっても、このバイクにマッチしなかったと思う。そういう時代だよね。だからエンジンもそうだよ」
当時はまだ社外製のコンプリートモーターが主流ではなかったことから、三浦さんを始め多くのカスタムビルダーがノーマルをベースにモディファイ。現在のように完成された物を買うのではなく、パーツ選びに始まり、イチから全部の工程が作り手の主戦場だった。
「もちろんそれが当たり前に走って、調子が良いっていうのが前提になるわけでしょ。やっぱりやってみないと分からないこともあるけど、結局それが経験になってノウハウになっていく。その積み重ねだよね」
エンジンだけでなくミッションもクロスミッション化され、極めつけはショーアップするように外注業者へ依頼をかけたフルポリッシュである。これもあらかじめポリッシュされた物を手に入れるのではなく、いわば手塩にかけた部品ひとつずつの最終仕上げ。『全てに手を入れた』と話す一台は、ともすれば聞き逃しやすいフレーズながら、そこに込められたメッセージは甚大だ。
実は今回のチョッパーは、取材当日にたまたま運よく入庫していたもの。そしてオーナーの好意で撮影に付き合ってもらい、ライディングを動画に収めてみたのだが、それまでの温和な人柄とは裏腹なアグレッションに一瞬空気がピリ付いた。そう、ワイドオープンした加速には、15年の凄味が詰まっていたことを記しておきたい。
HARLEY-DAVIDSON EARLY SHOVEL 1969 DETAIL WORK
HANDLE
ブラックアルマイトのライザーとグリップはオリジナル商品。汎用ドラッグバーを計算通りの形状にリメイク。
FRONT FORK
フォークはスタンダードな39φナロータイプ。トリプルツリーも39φ用でFXRなどに用いられる物を使用する。
GAS TANK
シンプルゆえにタンク形状ひとつで印象が大きく変わる。底面処理、装着位置などこれ以上ない箇所にセット。
FOOT CONTROL
ロナーセイジ製ミッドコントロールをハンドシフトに伴い加工。分厚いアルミステーを曲げてフットクラッチ化。
SEAT
15年の歳月を経て風合いを増すシートはTISS CUSTOM LEATHERS製。オイルタンクはバレルタイプ。
MUFFLER
マフラーは王道のポーカーパイプを。フェンダーステーのスロッテッドデザインは同店を象徴するディテイル。
BUILDER’S VOICE
COSMIC
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