HARLEY-DAVIDSON FLSTF 1992
COSMIC
A面よりB面の
渾身のオフセット
国内を見渡しても、仙台ほどFRISCOスタイルが横のつながりを持つ土地も珍しい。先輩から後輩へと代々受け継がれる往年のフォルムは、その時世に合わせながら時にアグレッシブに、時にスピーディーにマシンを彩り、今日に至っている。そして、その中でも頭角を現す存在がコズミックだ。
自らもどっぷりとその世界に頭を突っ込み、周りの錚々たる先輩達にもまれて育った店主三浦さんのバックボーンを言えば、まさにエリートである。そこに持ち前の感度の高さと、技巧的作り込みが合わさることで、次世代FRISCOの旗手としてその存在を不動のものたらしめている。
「まあ分かり易く言うとフリスコスタイルだけどあんまり形式的にしたくないんだよ。でもこれをいちいち説明すると長くなるし、言ったところで分かってはもらえないでしょ(笑)」
思うところはあるがキリがない。今回の一台も同店の得意なシェイプにフィニッシュ。ニュースクールのテイストを取り入れ、ワイドタイヤとドラッグバーというオーダーを踏まえた上で、独自の味付けを施したものだと言う。
「基本的に自分が乗るんだったらと考えてバイクを作る。だから取り回しは軽くないと嫌だし、ポジションも楽な方が良い」。その言葉通り、8インチオーバーのロングフォークながら全体のディメンションとトレール量を計った設計により、バイクを降りての押し引きは至って軽やか。また、ハンドルとミッドコントロールが織り成す姿勢に無理はない。
しかしやはり、今回の目玉はプライマリーのオフセットに尽きるだろう。「すげえめんどくさかった」、と氏があけっぴろげに語るその内容はこうだ。
ベースに使用したのが’92年の古めのエボリューションだったため、ワイドタイヤ化でスイングアームを交換すると、それにフィットするプライマリーが市販品では無かった。そのため2次ドライブやミッションメインシャフトに合わせてプライマリーをオフセットする必要があり、そこにはめるスペーサーをその都度数値を計って製作するという、なんとも気が遠くなる作業がなされているのだ。曰く、「ひとつひとつ手探り状態だった」とのことで、外装のそれとは比較にならないほどの労力が注ぎ込まれた箇所である。
ブレることなく一心不乱にかのスタイルを探究し続ける仙台のキングフィッシュ。注目を集める華やかな世界の裏では、こうした知られざるドラマを日々繰り広げている。
HARLEY-DAVIDSON FLSTF 1992 DETAIL WORK
HANDLE
自社オリジナルの削り出しのトリプルツリーとライザーにドラッグバーを装着。操作系はPMで豪奢に固める。
FRONT FORK
フロントは8インチオーバーの39φエボリューションタイプ。ボトムケースは純正メッキでインナーは社外。
GAS TANK
車体ボリュームに合わせたワンオフのタンクは後部と裏側のネジ留めをラバーマウント化。ひび割れを防止する。
OPEN PRIMARY
PM製プライマリーキットのベースプレート内側等にスペーサーを噛ませてオフセット。最も労力を費やした部位だ。
MUFFLER
スチールでワンオフしたミッドハイマウントのスラッシュカットは、中央で外側に膨らむ有機的なデザイン。
REAR END
18インチ240ワイドのタイヤを覆うフェンダーのステーは、一枚板の両端に丸棒を溶接してくり抜いた箇所。
BUILDER’S VOICE
COSMIC
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