TRIUMPH TR6 TROPHY 1968
KICK BACK
希代の手練れへ送る
圧倒的賛歌
「ペイントはブリキのおもちゃがテーマ。これは昔影響を受けたショップがやっていたタッチで、僕がずっとやりたかったオマージュ的一台なんです」
かつて一世を風靡しながらも業界からスッと姿を消したカスタムショップへの敬意を表したマシンである。素材に選んだのは、1968年式のトライアンフTR6。リアサスペンション付という大前提のもとでカスタムは進められた。
同店にとってはサス付きのトライアンフを扱うこと自体久しぶりということで、いやがおうにもビルダー加藤さんのテンションは上がってゆく。そんなパッションを内に秘め、まずはフレームの加工から取り掛かった。
「純正のシートレールは幅が広いんですよ。それがすごい嫌だったんで、全部引き直して細くしてる。あとはサス受けを上下にそれぞれ作って位置を変えて、社外のショートタイプを付けてます」
キックバックは作り手の熱い感情とは裏腹に、「これでもか!」と手をかけた作りを前面に押し出すタイプの店ではない。あくまでもさり気ない加工をマナーとしている。今回もシートレールに手を入れながらそこを強調するでもなく、逆に、全体に馴染ませて存在感を無くしている。
前後ホイールはノーマルの19/18インチから前後19インチに変更。これは単純に氏の好みによるもので、タイヤはオールステートのブロックタイプを選択した。そして、こちらが意外なチョイスの真相を訊ねる前に、「なんかどこでもブリッと走れそうなイメージじゃないですか」と、屈託ない。
そこで一番大変だったところを聞くと、タンクの加工という答えが返って来た。ベースに使ったのはハーレーのショベル用3.5ガロンの分割タンクで、右側を燃料/左上にオイルタンク/左下がまた燃料という3つのセクションに分けて、ひと回り小さいサイズ感にリメイク。左右に分かれた燃料をバイパスでつなぎ、オイルタンクのみ隔離した構造で仕上げている。「昔のインディアンとかもそうだし、どうしてもこの場所にオイルタンクを作りたかった」と、その動機はシンプルだ。
そして、満を持してのペイントである。敢えてフリーハンドのベタ塗りとすることで、ちょっとしたはみ出と、丸や直線のズレを『味』として効果的に利用。ブリキのおもちゃというやわらかくアナログなイメージを、筆を使うことで上手く表現している。
自分が丹精込めて手掛けたマシンを、オマージュだと氏は呼ぶ。100パーセントのリスペクト。見栄やプライドの入る余地のない、同年代に生きるカスタムビルダーへの圧倒的賛歌がここにある。
TRIUMPH TR6 TROPHY 1968 DETAIL WORK
HANDLE
汎用のアーチ入りハンドルのセンターを詰めて装着。樽型のゴムグリップと併せて土っぽいイメージを演出する。
FRONT END
純正フォークにヴィンテージカバーをセット。汎用品のヘッドライトは外装と同じく筆のベタ塗りでペイント。
GAS TANK
最も苦労した箇所のガスタンクは、右側が燃料/左上がオイルタンク/左下が燃料の3つのセクションで構成。
ELECTRIC BOX
電装系はシート下にすべて格納。同じくペインターのヨッピーによりフリーハンドでグラフィックが描かれる。
REAR FENDER
19インチ化によりサイクルフェンダーを幅詰め。シートレールのスリムなラインに合うコブラシートを選択。
REAR WHEEL
18から19インチへ変更したリアホイール。タイヤはオールステートのDIRTMANというブロックタイプ。
BUILDER’S VOICE
KICK BACK
住所 | 東京都練馬区春日町3-35-17 |
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電話 | 03-3577-1941 |
FAX | 03-3577-1941 |
SHOP | KICK BACKのショップ紹介 |
営業時間 | 10:00 ~ 19:00 |
定休日 | 火曜日、第3水曜日 |