HARLEY-DAVIDSON SOFTAIL 2016
SELECTED CUSTOM MOTORCYCLE
アップグレードし続ける
ロイヤルシリーズ最前線
ラグジュアリーな装いに内包した『走り』の哲学。見てくれではなく、走る曲がる止まるのスリーピースにこそ本質を宿らせるセレクテッドが手掛けたマシンは、ソフテイルをベースに111cu.in.(1800cc)のパトリックレーシング製モーターを積んだスペシャルである。
流行に左右されないという意味で名付けられたこの、『ロイヤルアンボーグ』は同店の最上位であるロイヤルシリーズのブランニュー。ディテイルは追いきれないほどの見せ場に溢れている。まずは1.4ミリ厚の鉄板から叩き出したタンクだが、上部と両サイドを内部に湾曲させることで立体感を演出。この部分は各ピースを地道に繋ぎ合わせて成形したもので、カーボン調の塗装に合わせた箇所だと代表の西岡さんは言う。
「タンクにテクスチャーが入ってるんで、立体的な加工が無いとそれが目立ち過ぎてしまう。だから少し陰影を付けてボリュームを持たせた」。このカーボン調の塗装は転写プリントと呼ばれるもので、大きな水槽を用意してそこに柄シートを浮かして貼り付けたものだ。海外では知られた手法だがまだ国内では一般的ではない。こうしたメソッドをいち早く取り入れるのも同店の広範な視野の成せる業だろう。
また、フレームは一見チャコールの塗装に見えるが、実はパウダーコートのマットクリアである。パーカライジング後にブラストを当てたものが下地で、乗り込んでいくほどに風合いが増す、鉄の経年変化を楽しむための処理だと言う。
そして、セレクテッドの伝家の宝刀、プーリーブレーキシステムに目を移そう。既に6年前ぐらいから用いている手法だが、これがなかなかに強烈だ。端的に言えば、ラジアルマウントキャリパーを分割してその間にスペーサーを噛まし、プーリーローターを咥えるというもの。これはローター位置がわずかに変わっても調整しやすいのと、スイングアームに直マウントのためラジアルの特徴が活きて、ブレーキング時のたわみが逆方向の垂直に掛かって歪みやぶれが出にくいという利点がある。つまり効きが良く、更に見た目もクリーンな機能美を備えたセクションなわけだ。
しかし同店を語る上で特徴的な部位はまだある。マフラーの左出しがそれで、そもそもはワイドタイヤを履かせた際に、スイングアームをかわすと外側に張り過ぎてしまうのが発端だ。そこで、マフラーを短く設定してしのいでもトルクが減って音量も大きくなってしまう。そんな折、左側に取り回せば長さとスタイルの双方を確保出来ることに行き着く。また、フロントとリアの等長をなるべく取るように、造形に配慮した巻きや曲げを駆使して調整。こうした過程を経て、このレフトサイドマフラーはセレクテッドを象徴するアイコンのひとつとして知られるようになった。
ディテイルひとつひとつにストーリーがある。その数は両手じゃ収まらないほどに数多い。そしてそのすべては、走る曲がる止まるのスリーピースに帰結している。
HARLEY-DAVIDSON SOFTAIL 2016 DETAIL WORK
GAS TANK
タンク上部と両サイドにえぐり加工を施して立体感を演出。カーボン調の塗装は転写プリントによるもの。
ENGINE
パトリックレーシング製111cu.in.(1800cc)モーターを搭載。自社のシャーシダイナモでセッティングは完調。
MUFFLER
左側に取り回されたレフトサイドマフラー。巻きや曲げの造形は排気の抜けを調整した機能性も兼ねている。
SEAT
ROYAL UNVOGUEのマシン名が誇らしげに入る精緻なカービングソロシートは仙台のジミードープが担当。
FENDER STAY
無垢の丸棒を旋盤で加工。その後両端2箇所のみ様々な角度からフライスを当てて空洞化デザインに仕上げる。
PULLEY BRAKE SYSTEM
同店のキラーセクション。ブレンボキャリパーでプーリーローターを挟んで制動。スイングアームに直マウント。
BUILDER’S VOICE
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