HARLEY-DAVIDSON PAN SHOVEL 1961
OUT CAST
プロフェッショナルの信頼も厚い
埼玉で暗躍する腕利きの男
2015年のホットロッドカスタムショーでBest of Show Motorcycleに輝き、その後幾多のカスタムショーにおいても名声を欲しいままにする1961年式のパンショベル。製作は、一般のユーザーのみならず同業のプロショップからのオーダーも絶えない国内屈指の実力派、アウトキャストである。
このパンショベルは、パットケネディーズ製のスプリットフィンドロッカーカバーに代表される80年代のパフォーマンスパーツに、ワンオフのアーティスティックな部品をうまく融合させるのが目的のひとつであった。そして更に、『ひし形』というテーマも掲げていたため、ホイールのデザインから細かなパーツに至るまでが同形でまとめられる。
前後のフレーム長を詰めてコンパクトなフォルムに仕上げた車体には、同業のプロフェッショナルをも唸らす数々のパーツが奢られる。まず、アメ車のモールをイメージしたリアフェンダーの中央からシート、タンクへと真っ直ぐに続くオーナメントに注目したい。ビルダーの久保田さん曰く、『プラスビーム』と命名したこの統一感のあるオーナメントは十字断面で形成されている。
「H鋼みたいなカタチはアイビームと呼ばれている。VLフォークなんかがそういうカタチをしているけど、これはその逆。だからプラスビームなのかなって、僕が勝手に付けた言葉です(笑)」
他にも見せ場は多岐に渡る。車体を最大限コンパクトに設計したため、そこに各パーツをすべて収めてしっかり機能させることに苦心したそうだ。とりわけマフラーは、いろんなアイデアや技術を出してなんとか完成にこぎつけた部位とのこと。何本も何本も作ってみて、最終的には縦オーバル形のテーパーパイプに落ち着いた。しかし、そこで終わりではなく、今度はそのマフラーを左右のフレーム内側に収めるのがまた至難の業であった。
「フレーム自体がナローだからどうしてもタイヤに当たる。だからエキゾーストをカットして逃がしつつ、フレームにも逃がしを作らなきゃいけない。そのためにはホイールとフェンダーを外す必要があって、外した後に初めて削ることが出来る。ちょっと削ってみて、また全部を取り付けて確認という作業の繰り返し。これをずっと繰り返すわけですよ。冗談抜きでタイヤの脱着だけで100回はやっていると思います」
技術ばかりでなく超人的な根気を持ってして初めて実を結んだセクションである。こうした、一見しただけでは知ることの出来ない労力は至るところに潜んでいるが、ビルダー久保田さんはそれらをことさらアピールすることはない。
「まあ、大変だったところは全部っちゃ全部。でもオーナーありきなんで、納得して満足してもらえればそれでOKです」
費やした時間や手間隙ではなく結果がすべて。アウトキャストの物作りに対する不器用なまでの職人気質は、このマシンで遂に日の目を見る。
HARLEY-DAVIDSON PAN SHOVEL 1961 DETAIL WORK
FRONT FORK
74スプリンガーをベースにしながらもほぼワンオフで製作。ヘッドライトはビンテージパーツをリメイク。
GAS TANK
タンクの中央にモールを溶接。スムージングした後にクロームメッキをかけて、モールを残して塗装している。
REAR END
フェンダーステーから美しく流れて一体となるモール。苦心したマフラーは見事にフレーム内側に収められている。
PLUS BEAM
フェンダー、シート、タンクの中央を走る『プラスビーム』。デザインと統一感によりマシンの完成度を高めている。
ENGINE
腰上はS&S製。パットケネディーズ製スプリットフィンとS&Sツースロートというファン垂涎のセットアップ。
FOOT CONTROL
レイクサイドカスタム製オープンキットにミッドコントロールを加工して装着。チェーンのみRKのブラックに変更。
BUILDER’S VOICE
OUT CAST
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