
H-D KH 1956
HOT SPICE CUSTOMS
乗り手を選ぶ
食い込む背徳的果実
「一番最初にこの店知ったんが京都のイベントで、かっちゃんが作ってるバイクが展示されてたんですよ。それでひとめ惚れしたんす、むっちゃカッコいいって。ほっからですね」
このオーナーにしか似合わないマシンである。ブルーのカバーオールに合わせたオレンジのワークパンツに、頭頂で一本に結んだドレッドヘアと、トレンドに流されることなく自身のスタイルをしっかりと確立した旦那である。

そもそもは、事故をきっかけに始めたカスタムだそうだ。ちょうどそのタイミングでかっちゃんことホットスパイスの笠井さんと出会い、彼とまたたく間に距離を縮め、愛車を理想のカタチへ変貌させることになった。
「かっちゃんのセンスが信用できるでえ、カッコいい思ったでえココに出して任せてる感じですね」と、オーナーは手放しの信頼を寄せている。また、何より注目したいのは、笠井さんのバイクを見て『ひとめ惚れ』と表現したことだ。

いま時代、大の大人がこの言葉を発する機会はそうそうあるものではない。こういったカスタム業界ならまだしも、カスタムとは縁もゆかりもない世界においてはほぼ皆無だろう。
そして逆に言えば、「ひとめ惚れした」と人目もはばからず言える大人というのは、周りを見渡してみても、総じて純粋で感性が豊かな傾向にある。

オーナーが希望したのは、ガスタンクとナセルカバー、シートカラーだった。店主の笠井さんはその好みを真芯で抱きとめた上で、自店のテイストを注ぎ込み、オーナーにしかフィットしない出で立ちでととのえている。
最初から付いていた純正フレームと深紅のボルトオンリジッドフレームキットの組み合わせはそのまま活かし、そこにアエルマッキ製ガスタンクをちょこんと載せ、フロントマスクは純正ナセルカバーで正装。一方、随所に講じたスロッテッドがマシンのインパクトを増幅させている。

ドリルとリューターを駆使したスロッテッド加工はエンジンやリアフェンダーなどにこれでもかと咆哮し、マシンのアグレッションを無条件に助長。更に、リアタイヤにドラッグレースカー用のMOROSOを履かすなど、オリジナリティの邁進にも油断はない。

いわゆる俗に言うチョッパーとは一風違う。オーナーの思い描くレーシーな世界観とホットスパイスの興趣(きょうしゅ)が互いににじり寄り、すべての指の第三関節までがしっかりと食い込んだ握手があってこその背徳的な果実である。
HARLEY-DAVIDSON KH 1956 DETAIL WORK

HANDLE
フランダースのライザーにダブルデザインのロボハンを装着。ライザー横に自身のチーム名BPMCが入る。

FRONT FORK
印象を決定付ける純正ナセルをセット。そこに設置した大ぶりなミラーなどアンバランスをバランスさせる。

GAS TANK
オーナー希望のタンクにはアエルマッキ製を。位置を吟味し、スモールサイズを車体中軸にちょこんと据えた。

MUFFLER
潔くカットしたショートマフラーに、エンジン随所に施行したスロッテッドがマシンに重度の個性を与えている。

SEAT
経年劣化でヤレていたシート表皮をホワイトレザーで貼り直し。リアフェンダーにも同様のスロッテッドを施行。

REAR WHEEL
ボルトオンリジッドフレームに10本インベーダーホイールを設置。タイヤはドラッグ用MOROSOとなる。
BUILDER’S VOICE
HOT SPICE CUSTOMS
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