
H-D FLSTF 1996
Take Root
80を前にする
親子で見た蜃気楼
毎回、いろいろと思い知らされる店主だ。いつも忙しなく動き回り、それはたいがいが原付や小排気量車のオイル交換やメンテナンスだったりする。
そんな姿を前に、『絵になる男』とひと言で片づけてしまえばそれまでだが、そのフレーズだけでは事足りない地元客との温かなやり取りもまた、胸に響くものがある。

ハーレー専門ショップではなく、むしろ普段はそれ以外の車両をさばくのに精を出している。が、ひとたびハーレーと向き合えば、かつて日本有数のカスタムショップで勲功を立ててきた才腕がふるわれることになる。この緩急自在のマナーはただしく、町のバイク屋風情そのものだ。

こちらは、店主阿部さんの父親のバイクである。高齢になってきたことで、年配者が好んで乗るFL系の重い車体ではなく、逆に軽いチョッパーに乗りましょうと、提案したものだそうだ。そこでベース車両を見付け出し、これで俺にやらせてくれと、テンポよく話はまとまった。
「たしか77歳になったはず。まあ親父がタオルのデザインの仕事をしているから、塗装はいつもとはちょっと違う唐草っぽいグラフィックにしてもらってます。綺麗なのが好きだからそうした感じですね」

御年77歳というパワーワードが衝撃だ。しかも今も現役のライダーで、このチョッパーを日常の足に使っていると聞けば、おぼろげながら阿部さんの血筋というものが理解できる。
というより、氏の二輪車に囲まれた日常を見てきた側(がわ)からすれば、これほど痛快な答え合わせもない。なるほど、血は争えないわけだ。

フロントフォークには、自身が使用していた2インチ詰めのスプリンガーを設置。純正品を詰めた加工のためあまり推奨しないパーツだが、父親だったら何か問題があっても許容できると判断して移譲。
そして、ガスタンクやリアフェンダー、ハンドル、マフラーといったワンオフの外装は、これまでの実地で培ってきたバランス感覚で構築。『テイクルート』の色が全面に出たスリム&コンパクトな装いで仕上げられている。

ライディングポジションもいい。手を伸ばした先にごく自然にあるハンドル位置に、同じく足を下ろした延長線上に無理なく配されたステップ位置。世の高齢者が不思議と乗りにくい大柄な車体へと群れ集まっていくのに対して、こちらは至ってスマートだ。
そもそも、バイクに興味を持ったきっかけは父親の影響だったと阿部さんは言う。夕陽を背に、優しげな目元がほころんでいる。
HARLEY-DAVIDSON FLSTF 1996 DETAIL WORK

HANDLE
若干の絞りを利かせたワンオフのミディアムエイプバーは『テイクルート』の十八番。操作性も高いパート。

FRONT FORK
自身が使っていた2インチ詰めの純正スプリンガーを移譲。ヘッドライトはダンパーの上方でハイマウント。

GAS TANK
他のカスタムではやらないと言うシルバーリーフを使ったグラフィック。父親の趣向を取り入れた雅な塗装。

MUFFLER
操作系にはミッドコントロールを配備。マフラーはエンド部をわずかにターンアウトさせたショートタイプ。

REAR END
リアフェンダーもソリッドカラーの上に唐草リーフを。フェンダーステーとチェーンカバーはシンプルに造作。

REAR WHEEL
前々から試してみたかったリムの丸い社外製リアホイール。値が張るため親父に頼んで付けてみたそうだ。
BUILDER’S VOICE
Take Root
| 住所 | 愛媛県今治市郷六ケ内町3-1-10 |
|---|---|
| 電話 | 0898-23-5294 |
| FAX | 0898-31-9893 |
| SHOP | Take Rootのショップ紹介 |
| 営業時間 | 9:00 ~ 18:30(平日)/9:00 ~ 17:00(日曜祝日) |
| 定休日 | 水曜日、第3木曜日 |

H-D FLSTF 1990
H-D SHOVELHEAD





















