H-D FLH 1966
NUTS CUSTOM CYCLES

仙台と四国をつなぐ
伝統のダブルノワール

今さらながらカスタムスタイルの多彩さに舌を巻く。しかもそれぞれの完成度がしかと地に根を張り、むくむくと力強く蒼空へと伸長している。チョッパーやボバー、カフェレーサーと、どのスタイルにおいても外しはないし、むろん凡退もない。

仙台の地で育（はぐく）まれたチョッパースタイル、『仙台チョッパー』をボトムラインにした一台だ。オーナーが偏愛するスタイルを、作り手の薦田さん共々に考えながら作ったバイクである。

「僕も仙台スタイルが好きなんで一緒になってこういうのにしたいよねって。もう絵を描いたりとかじゃなくて直接写真を見ながらでした（笑）。でも気を付けたのは、なるべくお客さんが思っとるカタチにしてあげようと。そこですね」

作り手側の主張をはさむことなく、オーナーの希望をまるっと汲み取って製作したものだ。

そもそも、当人が誰よりも吟味を重ねて来ているために、希望するパートのほとんどは真に迫っていた。ディテイルのちょっとしたこだわりなどに関してはもう、かなりの審美眼を覗かせる。

ガスタンクがいい例だろう。単にスポーツタンクを装着したのではなく、憧れのチョッパーがそうだったように上面に丸みを持たせて味付け。

そしてこの具現には、一度タンクを割ってナロー化する際にトップを叩き出し膨らませて改良。曰く、普段はやらない加工だそうだが、オーナーの熱心な人柄を受けて着地させたものである。

6インチオーバーのフォーク長やタンクのマウント箇所、ハンドルの高さ、マフラー位置も密な打ち合わせを経て、要望に等しく反映させたものだ。作り手側からすればもう少しこうした方がいいのでは、という考えもあったが、そこは黙して作業に没頭。

もちろん誰彼構わずオーナーの要望に一任することはないが、今回は違った。それはそもそもの『線』が良かったのと、下手に口出しする必要のない良質な予感があったからだ。

「僕だったらああするこうするって絶対あったんですけど基本それを出さんように。で、出来てしまったらおお正解だったねっていうバイク。むちゃかっこええ思いましたね（笑）」

ちなみに、高嶺のツースロートキャブはオーナーの何かのお祝いでプレゼントした物だという。一方で、ヘッドライトは汎用品で数千円で買ったものだと屈託ない。この辺の偏向主義に走ることのない、やわらかくバランスの取れた思考が脇を固めて初めて、両翼はくつろぎを見せる。

FRONT FORK

フォークは純正SHOWAの 35φナロータイプを6インチオーバーに。ほどよくアグレッシブな様相を呈す。

FRONT WHEEL

ホイール径はフロント21／リア18インチのコンビネーション。トラディショナルな丹紅のカラーリングに彩色。

GAS TANK

スポーツスタータンクをベースにナロード加工。また鉄板をバラした際に上面を叩き出し、膨らみをもたせ成形。

ENGINE

リビルドしたエンジンはソリッドな黒色に統一。キャブは高値で取引されるS&S製ツースロートを装着した。

REAR FENDER

アイアン用レプリカをワンオフステーで支持。ステーは鉄板2枚を張り合わせニードルスケラーで風合いを出した物。

MUFFLER

仙台チョッパーの気風を盛り上げるミッドハイマウントのストレートパイプ。オーナーが考え抜いた長さで配備。