
H-D EARLY SHOVELHEAD 1968
FATECH
ルーツに迫る
青光りした精神
人知れずに物作りを推し進めているビルダーだ。自分のなかでのテーマやクリアすべき課題が明確にあり、いつもそれに向かって腕を鍛え、キレを増している。今回のアーリーショベルも例外ではなく、渡辺さんのチャレンジングな造形が細大漏らさず繰り広げられている。

「お客さんと話して、’60年代のマッスルカーとかギャッサーってあるんですけどそういうものが好きだと。あとカリフォルニアのきらきらした印象。そういうものが良いと言うのでいろいろ考慮してこうなりました」
‘60年代のマッスルカーで、そのドラッグレースの方がイメージだそうだ。当時そこに描かれていたポップなグラフィックに惹かれたオーナーの趣向を取り入れ、その軽妙な雰囲気を盛り込みつつ、金属加工の苦闘が始まった。

まず、ポップな雰囲気については全体の鮮やかなカラーリングと、フレームのクラシックなニッケルメッキでそれを表現。
一方、見せ場となる作り物に関しては毎度のごとく、骨格をつかさどるフレームやスイングアーム、ガソリンタンクといった外装のほとんどを一品製作。そして今回の作業工程では、『リバースカーブ(逆ぞり)』が挑戦事項となった。

ガソリンタンクに顕著だが、タンク下部の造形はエンジンロッカーカバーのラインをもらうように成形。横から見ると勾玉(まがたま)のような形状になっていて、これは膨らみを持たせているだけではなく、リバースカーブを駆使することで完遂させたパートである。
そして、同じくリアフェンダーも既製品をカットして詰めた物ではなく、逆ぞりの手法でコントロールし施術したものだ。

また、最新鋭の工作機器クラフトフォーマーを使った逆ぞり成形に次いで、ガソリンタンクとフェンダー双方の表面に立体的な段を付けたノッチも並みならない。
あらかじめ凹ませておいた鉄板を溶接でつなぐのではなく、ビードローラーで溝を付けたのちに促成。曰く、トラディショナルな物作りの手法が縦横無尽に肉迫する。

マフラーも新たなチャレンジングの部位で、フレーム内側を貫通させたトリッキーなデザインは、内実をともなうよう確実な作り込みでもって完成度を強化。そもそものスタート地点からして、無いから作るのではなく、作るの一択だけである。
「1920年代からワンオフの世界ではパワーハンマーひとつでずっと一人の人間が作って来たというのが物作りのルーツではあるわけですよね。だから僕はその精神に迫りたいんです」
HARLEY-DAVIDSON EARLY SHOVELHEAD 1968 DETAIL WORK

HANDLE
ミディアムエイプは純正ワイドフォークに合わせワンオフ。操作性の高い、無駄を廃したソリッドな形状とする。

GAS TANK
2ピース風の1ピースタンク。左右上面にビードローラーで段を入れ、ガスタンク下部はリバースカーブで成形。

OIL TANK
立体的な『段』が連鎖した装いのオイルタンク。ナンバープレート裏に至るまで徹底した物作りの姿勢が現れる。

MUFFLER
フレーム内側を通るマフラー。オイルタンクとマフラーにカチリとジャストな寸法で『逃げ』を設けてセット。

REAR FENDER
ガスタンク同様の逆ぞりで製作。フチは鉄板を内側に折り込んで強度を増進。フェンダーステーはロウ付けとした。

REAR END
フェンダーステー内側を貫通する軌道を描いたリアエキゾースト。『逃げ』を設けた箇所の巧緻な作り込みが光る。
BUILDER’S VOICE
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H-D FL 1959
陸王RQ 1953







