
H-D S&S KNUCKLEHEAD
HOT SPICE CUSTOMS
淡々とつむぎ出される
隠されたハズしの美学
今となっては、簡単には手の届かない憧れのモーターサイクルがナックルヘッドだろう。いくら手入れをしていても、普通に乗っていれば相当劣化しているのが現状。もしくは日常的に動いているならば、むしろ極上とも言える。

しかしナックルヘッドに乗りたいならば、「この手があったか!」と気づきを与えてくれたのが、京都にある『HOT SPICE』が手がけたチョッパーだ。
エンジンまわりを見ると相当使い込んでいることがうかがえる、いい感じのヤレ方だ。経年変化しているが、それは決して劣化ではなく、現役モーターとしての活躍を予感させる。だがその情報には、虚偽が多分に含まれている。

ナックルヘッドの最終モデルは1947年製造だが、このチョッパーに搭載されるエンジンはS&S製。つまり現行でも新品が手に入るナックルヘッドモーターを載せているのだ。ということは活躍を予感させるのではなく、現役モーターであり、普通に走れるというのが真実。
「エンジン自体が結構ヤレた雰囲気になっているので、それに合わせて外装を全部作っていこうかなという感じでしたね」、と答えるビルダー笠井さん。

ショップの創設期以前からこのオーナーとは付き合いがあり、気心知れた旧知の仲。だからこそ、ある程度オーナーの好みというか、ノリがわかった。
笠井さんは言葉を選びながら「わかりやすくというか……どう言ったらいいんですかね。ガレージチョッパーなイメージといえば、そういう感じですかね」と、紡ぎ出した答えは正規のビルダーのフルカスタムながら、意外にもガレージチョッパーだった。

確かに’50年代、’60年代を彷彿させるワルそうなスタイル。象徴的なのが、あえて色をハズしたリアフェンダーだ。
「赤のリブフェンダーは結構多いんで、ちょっと変わった色というか。『あのカッコいい緑のナックル』って感じで覚えてくれるじゃないですか」と色をハズしながらも、したたかな狙いが隠されている。タンクペイントもヴィンテージ風でありながら、笠井さんが手がけた。

「普段はガッツリやらないですけど、このときはやりたいテンションというか、やろうかなって感じで……」、と照れながら細部を語る。作り込みにも、照れにも狙いが隠されている気配がある。
ベースとなったガスタンクはありがちな純正分割ではなく、わざわざマスタングタイプを割った。ここにハズしの美学が垣間見えた瞬間、S&S製ナックルヘッドのガレージチョッパーに奥深い狙いを感じた。
(文/野上真一)
HARLEY-DAVIDSON S&S KNUCKLEHEAD DETAIL WORK

FRONT FORK
スプリンガーは4インチオーバーのW&W製。パウコのライザーにクリーク製プルバックバーを組み合わせた。

GAS TANK
ガスタンクはマスタングを分割し、キャップをブリティッシュタイプに。タンク塗装は笠井さん自身が手がけた。

ENGINE
オイルが滲みヤレた風体のナックルヘッド。だが実際は現行S&S製モーターを乗り込んだ末の味わいである。

SEAT
Whale & Co.製シートが美しく収まり、ガレージチョッパーと名乗りつつもその枠に収まらない雰囲気を醸す。

MUFFLER
マフラーは高い位置までカチ上げられる。リアフェンダーはリブ付きでボディ色と異なる緑色が個性を打ち出す。

REAR END
テールランプはトラック用のマーカランプを使用。シッシーバー先端の突起は、米国で購入したフェンス用の飾り。
BUILDER’S VOICE
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