シュアショット SURESHOT 相川拓也 Takuya Aikawaのインタビュー

SURE SHOT

相川拓也 Takuya Aikawa

August 11th, 2019

時代の流れにあらがうことなく、常に最新の技術を取り入れ進化し続ける『シュアショット』。これまで、国内有数のカスタムショーにおいて幾度もアワードに輝く実力派で、今ではオンライン化の普及により、日本はおろか海外のファンからも高い評価を得た存在だ。

そしてそれは、他国メディアからの取材や、東南アジア最大規模のカスタムイベントへの招待など、ワールドワイドな広がりを見せている。

代表の相川さんは神戸生まれ神戸育ちで、18歳の時に移住して来た千葉の地で2003年に同店を起動。外見ではなく、『実際に乗った時に面白いかどうか』に力点を置いたカスタムを手掛け、決して飾りではないオートバイ本来の魅力を追求している。

また、2018年よりシャシダイを導入してインジェクションチューンに注力し、そこで得たノウハウは旧車にもフィードバック。「新しい物を取り入れて理解を深めることで、作るバイクの完成度も上がっていく」、との持論を掲げている。

シュアショット SURESHOT 相川拓也 Takuya Aikawaのインタビュー

高校は結構な進学校
だから一人で勝手に乗ってた

ー まずは、相川さんが初めてバイクに乗ったときの話から聞かせてください。
初めて乗ったのは高校ですね。原付から。
ー 周りの友だちも乗ってたから?
いや、高校が結構な進学校で、意外と周りにバイク好きなやつがいなくて、ひとりで勝手に原付の免許を取ってきちゃった。親なんかに言ったら絶対反対するから内緒で。それでバイク欲し過ぎてバイトして(笑)。20万ぐらい貯めて中古のバイクを買った。
ー 最初は何を買ったんです?
マニアックなんですけどホンダのMTX50Rって分かります? オフ車のやつで、エンジンは2ストのNSR50とかと一緒のバイク。
ー なるほど、オフ車好きはそこから来てるんですね。それでバイクにどっぷりと?
そうです(笑)。神戸の高校から千葉の大学に行って、卒業してみんな企業に就職するなか僕はいきなりバイク屋に入って。
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バイク業界に入る時点で
将来は店を構える気だった

ー オフ車から始まって、アメリカンに興味を持ち出したのはいつごろです?
大学ですね。それまでは50のモトクロスでビーン!って遊んでて、中免を取った時に買ったのがホンダのSTEED(笑)。で、後ろのフェンダーストラットっていうんですかね、シートレイルのフレームをぶった切ってフラットフェンダーにして。
ー それ当時はハードカスタムでしたよね。
やべえカッコ良いみたいな(笑)。その辺からですねアメリカンのカスタムに興味を持ったのは。あとは結構暇なバイトをしてたから、その仕事中にタンクをプラハンで叩いてパテ盛りして、シコシコ面出してってやってましたね(笑)。缶スプレーで塗ったりとか。
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ー 大学でカスタムの面白さにハマって、卒業してから業界最大手の二輪量販店に就職ですか?
そうですね。
ー 大学在学中からバイクの道に進もうと?
そうです。それで資格を取りたかったんですね、整備士資格を。僕専門学校卒じゃないんで、3級からしか取れなかった。それでとりあえず3級取ってみたいな感じで。
ー 量販店の後に千葉県にあるハーレーの旧車屋を経て独立ですか?
はい。オープンしたのは2003年。
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ー そもそもシュアショットを始めるキッカケを聞きたいんですけど、すでに自分の店を持つ気で動かれてたんです?
一番最初からそうでした。量販店に入る前から。もうバイク業界に入る時点で自分の店を持つ以外は考えてなかったです。
ー サラリーマンという選択肢は頭になかったと。
なかった。当時はやっぱりそういう世界でしたね。丁稚(でっち)だから。要は丁稚で給料が安くて食えないけど、みんな独立して一旗揚げるっていう考えですよね。それかこの世界を去るか、という選択肢しかない。若い人はいくらでもいたから。時代が違いますね今と。
ー ショップを立ち上げた頃はどうでした?
もう食えなかったんで夜バイトして、昼バイクいじってという生活をずっとやってましたね。3年ぐらいやってたんじゃないですか。
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乗って面白いかどうか
重視するのはそこです

ー 洗練されたマシンバランスが真骨頂のシュアショットですけど、今、相川さんが作りたいカスタムの形って何かあります?
うーん、そうですね……。ただ古いのを作りたいんじゃなくて、ずっと長く続けてるとカスタムビルダーの考えって、作るバイクにすごい反映されて進化していくと思うんですよ。例えばアーティストの曲聞いてても昔のアルバムと今のアルバムは全然違ったりしますよね。
ー 変わりつつ、荒削り感もなくなっていって。
そう、やっぱりその時その時の考えが作る物にフィードバックされると思うんですよ。だから自分らがいま意識してるのは、見た目が一番重要なんじゃなくて、『実際に乗った時に面白いかどうか』っていうのを凄い重視するようにしてます。
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ー 見てくれよりも、今後作りたいのは「乗って楽しいバイク」だと?
もちろん見た目もカッコ良いけど、乗って凄く面白いっていうのが重要です。
ー 外見と内面なら、どちらかと言えば内面派。
まあそうですね。ハーレーのカスタムに関しては、やっぱり機能が備わってないとカッコ悪く見える、ただの飾りに見えちゃうっていうのはある。例えばそこのマフラーにしてもなんでこの形にしてるかと言えば、もちろん細く作りたいからだけじゃなくて、等長の方がしっかりセッティングが出しやすいし前後同じ焼けになりやすい。
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ー 『等長』のセオリーも踏まえて。
それにやっぱり等長のマフラーってカッコ良く見えるんですよね。他に点火にしても、アーリーショベルにダイナ2000iって僕がいつも話してるのを入れてるんですけど、やっぱりここまで調整してチューンしてるのに、ポイントだったら進角2段階の機械式かってちょっと残念になる。
ー ポイント点火とダイナ2000iのフルトラ点火では差は歴然です?
ここまでピチってタイミング合わせてクリアランス詰めて組んでるんだったら、点火って絶対にデジタル制御で無段階に進角していく方が良い。走りが全然違いますからね。それと旧車のフルスクラッチのカスタムに関しては、僕ホットロッドだと思ってるんですよ。チョッパーというのは。
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バイクとしての完成度
ちゃんと走らないのは論外

ー というと?
ホットロッドって元々速く走るためのカスタムですよね。例えば、A型FORDのスチールのでっかいフェンダーを取っ払ってフードも取っ払って、車体軽くして屋根薄くして空気抵抗減らして、エンジンかりかりにいじって。
ー そうして初めて。
はい。そこから派生していろんな広い意味で『ホットロッド』って使われてるみたいですけど、やっぱり速くないと駄目だと思うんですよ。スピード出さなくても良いですけど、バイク自体は速い方が面白いと思うし。
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ー 旧車のチョッパーでも走りが熱くなきゃ。
トータルで、要はバイクとして完成度が高いのが重要です。作り込みとか鈑金とか塗装が凄いとかじゃなくて、バイクとして走って面白い、走って楽しい乗り物というのが重要ですね。だからちゃんと走るもんじゃないと駄目だと思うし。
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メーカーに対するリスペクト
改造屋には、そこは常にある

ー シュアショットはカスタムだけではなく技術面もウリだと思います。そのテクニカルな部分の強みはどんなところにありますか。
自分個人が、旧車のハーレーだけが好きなわけじゃないというのが大きいと思う。もっと言うとハーレーだけが好きなわけでもない。国産車も大好きだしスーパースポーツでサーキットを走ったりもしてるし、国産オフ車で林道に行ったりもしてるし。
ー なるほど。いろんなテクノロジーに触れる機会が多ければ、それだけ世界も広がります。
あとはバイク屋としての考え。ちょっと話がそれちゃうかもしれないんですけど、バイク屋の存在意義は何かって考えた時に、僕らメーカーが作ったバイクを改造してるわけですよね。メーカーって物凄い膨大な開発費をかけてテストを繰り返して、それをまたフィードバックさせてようやく生産ラインで量産バイクを作ってるわけですよね。
シュアショット SURESHOT 相川拓也 Takuya Aikawaのインタビュー
ー はい。
けど、もうこのバイク全然つまんねえってお客さんが言ったとしてもそのバイクってメーカー側の関わった人がメチャメチャ頑張って考えて考えて、研究して、テストし尽くして世に出てるわけですよね。絶対にリコールが起こらないように。それでもリコールって起こっちゃうぐらいですから。
ー ええ。
メチャメチャ考えられて作ってる。それを僕らチューニングしたりとか改造したりとかしてて、やっぱりメーカーに対するリスペクトは常にあるんです。改造屋っていうのは。ノーマルをまったく馬鹿にしていない。そこを結構勘違いしてる人いるんですけど、カスタムショップってノーマル馬鹿にしてるのかなって思われてる事がある。
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ー 全くそんなことないのに。
ノーマルをリスペクトしてて、その上で便利さを削ってカッコ良さを優先してカスタムを作ったりするわけじゃないですか。で、チューニングにしてもそうなんですけど、チューニングってメーカー側が発売してる物に対して、味付けを変える作業なんですよ。
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バイク屋の存在意義は
要望を実現してあげること

ー それぞれのお客さんに合った『乗り味』に、細かく手を加えていくわけですよね。
例えば、コーナリング中の速度調整をしたくてスロットルをほんの少し開けても前にどんどんバイクが進んじゃって難しいとか、エンブレが効かなくてもう少しエンブレ効かせたりとか、そういうのって点火時期いじったら調整出来たりするんですよ。だけどメーカー側がなんで最初からそうしないかって言うと、直接ユーザーとコミュニケーションを取れないからなんですよね。
ー ユーザーではなくまずは販売店に降ろすから。
そう。販売店からの意見を吸い上げることは出来ても個人は無理。要は万人に受けるバイクを作るのがメーカーの仕事で、そうしないとバイクは売れないですよね。すごいコアな偏った人しか運転出来ない、偏った一部の人が面白く感じるバイクを作っても評価は真っ二つに分かれるわけじゃないですか。
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ー それは飲食業界でもなんでも、どの世界も一緒ですね。
僕それがビューエルだと思ってるんです。ビューエル超面白いと思ってたんだけど無くなっちゃいましたよね。やっぱりメーカーが販売するバイクって誰もが乗って面白いと思えるものじゃなかったらダメなんです。
ー だと思います。
でもバイク屋っていうのは直接ユーザーの意見や好みを聞いて、それを実際にユーザーに対して調整したり作ったり改造できる立場にあるんですよ。要は万人受けするバイクを更に個人に対して合わせてあげることが出来る。それはバイク屋しか出来ない仕事なんですよね。
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ー 確かに唯一の接点です。
だからカスタムショップの存在意義ってそこにこそあるわけだから、お客さんの好みや意見をしっかり聞いてそれを実現してあげるのが、僕はカスタムショップの意味なのかなと思ってます。
ー お客さんの要望を第一に。
もちろん。自分らの好みに寄ったバイクばかりを作るんじゃなくて、「高年式のバイクでこういう感じの乗り味にして欲しい」って言われたらそれが例え自分の好みとは違っても、お客さんがそれで満足するんだったら僕はそれが絶対正解だと思うんですよね。
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常に新しい物を取り入れて
バイクの完成度を高めていく

ー そうした考えがあってインジェクションチューンも始めたと。お客さんそれぞれにあった味付けで?
そうです。あとやっぱりバイクって常に最新の技術が搭載されてどんどんどんどん発売されるわけじゃないですか。それを常にバイク屋が勉強しなかったら旧車屋さんになっちゃいますよね。ウチは旧車専門店ではないので、常に新しいものは取り入れて勉強して、それをよりよくお客さんに合わせて改造するのが僕らの仕事だと思ってます。
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ー 常に新しいものを吸収してお客さんにフィードバックすると。
結局それって旧車にもフィードバック出来てるし、フルスクラッチのバイクにもかなりフィードバック出来ていて理解も深まっている。まだまだバイクのことで知らない部分もいっぱいあるし分からないこともいっぱいあるんですけど。
ー でも結果的にはWin-Winで。
そうですね。要はさっき言った、見た目だけじゃなくて乗り味も含めたトータルでバイクの完成度が上がっていく。新しい物を取り入れて理解を深めることによって、僕らが作るバイクがより完成度の高いものになっていく。
シュアショット SURESHOT 相川拓也 Takuya Aikawaのインタビュー

自分ではなく
相手の理想を形にする

ー さて、シュアショットのスタンスをたっぷりと聞かせてもらいましたので、そろそろエンディングの質問をさせていただきましょう。相川さんにとって、『カスタムバイク』とはどんなものですか?
まあお客さんの頭の中にある理想のバイクを実際に実現するものですよね。カスタムバイクを作るということは。
ー ちなみに、いま何をしてる時が一番楽しいですか、幸せを感じますか?
(笑)。それは昔からバイクいじってる時ですよね。
ー えっ!? 愛娘と一緒にいるときじゃなくてですか?
いやいや(笑)。それは娘と一緒にいる時の方ですよ(笑)。
ー 完全に言わせてますね(笑)。今日はありがとうございました。

SURE SHOT

シュアショットのショップ外観
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電話 043-312-0900
FAX 043-312-0901
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営業時間 10:00 ~ 20:00
定休日 水曜日、木曜日