ストゥープモーターサイクルズ STOOP MC 生森”モーリー”まさとのインタビュー

STOOP MOTORCYCLES

生森 “モーリー” まさと Masato “MORRY” Ikemori

December 23rd, 2017

ドラマチックな日々を地でゆく店主である。特別多弁なわけでもない『モーリー』こと生森まさと氏はしかし、その行動や空気から大切なことを語る数少ないカスタムビルダーだ。そして無意識に発せられるその強烈な電流に感電したら最後、ハートをゴリッともってかれてしまうほどのインパクトを持つ。

同店が手掛ける肉感的でスタイリッシュなチョッパーは、それだけでも国内はおろか海外からの称賛を浴びるが、主点はやはり走ってこそ。屋号に掲げたSTOOP(猫背)のポジションが形成されて初めて、輝きを帯びるものだ。曰く、『さもないバイク』は、だからこそ人が乗って最も映えるシルエットを生む。

小学5年でホンダCBXの見積もりを取った時から始まった氏のバイクライフ。ハーレーディーラー『ピットイン樋口』に勤め、そこで現代表の黒須さんと出会い『チェリーズカンパニー』をスタートさせた後に、2002年に立ち上げたSTOOP MOTORCYCLES。以来、希代のビルダーの人生は変わらず色彩豊かだ。

(写真/磯部孝夫)

ストゥープモーターサイクルズ STOOP MC 生森”モーリー”まさとのインタビュー

小学5年の時に
見積もりを取った

ー ロッドショーが終わったばかりなのに今日はありがとうございます。では早速、モーリーさんの10代の頃の話から聞かせてもらえますか?
10代? 変な少年だね。プールに飛び込んじゃう子。
ー ほほ(笑)。
ダメな子だよ、なんて言うの、プール開きの前に掃除するでしょ、そこでもう飛び込んじゃう。中2ぐらいかな。あとはコンセントをボンドで全部埋めちゃったりとか。
ー それやられると(笑)。
なんだろう、授業中ずっと彫刻刀で机掘ってたりとか。オブラートに包んでくださいね、ほんとおかしい子になっちゃうから。
ー ううー……、是非そのまま伝えたいです。だめですか?
いや、任せますよ(笑)。
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ー じゃあバイクに興味を持つようになったきっかけは?
マッチです。
ー マッチ!? 近藤真彦?
はい、小学4年生ぐらいのときかな。映画のハイティーンブギでCBX乗ってて。で5年生ぐらいのときに大宮のバイク屋さんに見積もりを取りに行ったんです。
ー 5年生のとき!? 取れるんですか?
知り合いだったんです。で絶対乗ろうと思って。それからかな、好きになったのは。
ストゥープモーターサイクルズ STOOP MC 生森”モーリー”まさとのインタビュー
ー で実際に買ったのはいつでしょう。
実際買ったのはジョグとかが先で(笑)、リアルにちゃんと買ったのは18のときでカワサキのゼファー。だけどつまんなくてすぐSRにしたけどそれもダメで、その辺からハーレーが欲しくなった。でもハーレー乗るならスティードだけは乗りたくないと思ってて、22のときにハーレーを買ったのかな。
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それを見て憧れて
カッコ良いなあって

ー そもそもなんでハーレーだったんです?
それこそさかのぼると小学5年生の時に、友達のお父さんがFL乗ってて、よく吹かさせてくれてた。そんで他にもいろいろ出会いがあって、アキバさんって人を見たりとか。
ー どういう?
いまのデンのメンバーなんだけど、その人を樋口(※ハーレーショップ『ピットイン樋口』)で見たりとかして。
ー カッコ良い大人がいたと。
そう、当時はハーレー会の人たちしかいなかったなかで、そういう人たちがポチポチいたのね、で憧れて。
ー 人に憧れてのスタートなんですね。
そうそう、なんかショベル乗っててカッコ良いなあって。でどうしても欲しくて、大型を取りに行った。
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まだ早かったけど
いっちゃえ!って

ー ストゥープはオープンしてどれぐらいになるんです?
いま15年目ぐらい。
ー では、その始まりから教えてもらえますか?
は、元々自分でやりたかった。でもそれにはいろいろ学ばなくちゃならなかったし。
ー だからまずチェリーズカンパニーで黒須さんと一緒に働いて。
でもまだ早かったんだけど、作りたい格好のバイクはあったから「いやいっちゃえ!」っていうんで。
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ドンキ行って
ナンパしてた

ー それでストゥープを立ち上げたんですね。その頃の思い出話を聞かせてもらえますか。
なんだろう、金融公庫で金借りて始めたから。いくら借りたんだっけ? たしか400万ぐらい借りて、まず車買ってそれを改造して。ダットラかなんかを新古で買って、もう買った帰り道から改造し始めて全部取っちゃった。柵とか取ってステレオ付けて、ホイール換えてシャコタンにして、もう訳のわかんないことやってた。それで店も大改装してカウンター作って、そしたらもう1ヶ月しないうちになくなっちゃって。
ー お、お金が(笑)。
最後5万円だけ余って、もうしょうがないから当時の薄型テレビを買って終わりみたいな。
ー しょうがない!?
で、ゼロから始めようって、そっから始めようと(笑)。
ストゥープモーターサイクルズ STOOP MC 生森”モーリー”まさとのインタビュー
ー ドラマチックな幕開けです(笑)。そこからどうやって回していったんです? 
何気にドンキ行って、若い兄ちゃんのゆるんだチェーンとか「直さねえ?」ってナンパしたり。
ー そんな地道なことを!?
そうそうそう、食えなかったから。であとは、なんでもやってたからそれなりには食えてた。それでその時に一台オーダーもらったんだよね、でそれを作ってロッドショーに出して、そこからなんか面白くなってきていろいろやるようになったかな。
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ダメなやつの方が
似合うってのはある

ー モーリーさんの作るチョッパーってあの前屈み(=STOOP)のスタイルじゃないですか。まあほとんどの人が乗ってる姿にヤラれると思うんですけど、モーリーさん的に何かカッコ良い定義ってあるんです?
なんだろう、まず乗ってる姿がカッコ良くないと嫌だから。やっぱり走ってんの見て欲しくなったり影響受けたりして来てるから、人が乗ってカッコ良いバイク。なおかつ小さすぎても嫌だし大きすぎても嫌だし、自然と映えるバイクかな。
ー あとは乗り手のちょっとした不良っぽい匂いっていうか。
いや、不良っぽさなんか全然出してるつもりはないよ。ただまあ、なんかちょっとダメなやつの方が似合うってのは実際あるから。
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それだけってのは
ダサイから嫌なのね

ー モーリーさんが惹かれる人やバイクってどんなのです?
あぁ~、なんだろう……。
ー もう見た感じの感覚的なやつですかね。
そうそうそう。ぽろって似合うやつは似合うし、なんか気張って着込んでもカッコ良くない人もいるし。粋にやるための道具っていうか、ハーレーがすべてっていうのは嫌なのね。
ー あぁー、なるほど。
ダサいから(笑)、最悪だから。もちろんトライアンフでも良いし、ホンダでも良いんだけど、なんかあいつ良いよねって。1個のアイテムとしてカッコ良いものにして欲しい。やっぱそれでみんな欲しくなるし、思わず凄いねえじゃなくて、「カッコ良いね」が口からぽろっと出ちゃうような。
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ー はいはい、分かります。
人とバイクにしたいなとは思うから。
ー バイクだけじゃなくてちょっと余裕があった方が良いんですね。
そうだね、バイクにしてもなんか物足りないけどカッコいいねって。飽きたらタンク変えようよ、ハンドル変えようよっつって。なんか「これで乗って下さいコンプリートです」、っていうのでお客が似合ってないパターンが嫌だから。
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取り付けてみて
プラスになるように

ー カスタムするときに気を付けてる所ってどこですか?
例えば作ってる途中に、タンク外してカッコ良かったらタンクがおかしいし、フェンダー外してカッコ良かったらフェンダーがおかしい。そういう取り付けてプラスに作用するようにはしてる。要はタンクを乗っけたことでマイナスになるんだったら意味ないし、マフラー付けて前の方が良ければそれもそうだし。
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最高に楽しいじゃん
あんな状況ないよ

ー では、箸休めタイムをこの辺で(笑)。これまでストゥープをやってきた中でハードな思い出を。
うーん、詰められて埋め……
ー オット! それダメなやつですね。知ってますけどここでは(笑)。
他にはなんだろうね(※ずっと考えて)……適度なのがないんだよなぁ。
ー たしかに適度なのはなさそう(笑)。
あっ! でも1回バイクがもう完成してるって嘘付いて、間に合わなかったからフロントとリアブレーキ付いてない状態で走って見せたことが……
ストゥープモーターサイクルズ STOOP MC 生森”モーリー”まさとのインタビュー
ー いやいや、それも(笑)。 モーリーさんにかかると全部ドラスチックというか、振り切っちゃうじゃないですか。普通の人はそんな経験しないというか、例えば今日のロケひとつにしてもブレーキペダルが落ちたり(笑)。あれって他のショップさんだとそうそうないと思うんですよ(笑)。
だって取材がいきなり今日なんだもん(笑)。 
ー です(笑)。
あと3日あればね。だってちゃんと走るかなって思ってたぐらい(笑)。
ー そこ! そこなんですよね。まず第一に諦めないし断らない。そして結果的にああやって涼しい顔して乗ってくれるわけじゃないですか。
だって最高に楽しいじゃん。その乗ってる感じ? もうあんなカッコ良い状況無いと思うから。
ブルコ BLUCO.INC 青木厚典のインタビュー
ー 写真を見た人はカッコ良いで終わりですけど、実は裏ではブレーキペダルが外れて火花が散って、後ろであおってた車の運転手が焦って急ブレーキをかけそうになってざまあみろっていう。
ああ。
ー そんな一連の緊張感やドラマが隠れてる写真ですよね。しかも待ったなし、体を張っての。
そうだね。まあブレーキはぜんぜんどっちかがあれば良いんで。
ー いや、その時の対処というか、他の人だったら経験上いったんストップするんですよ。
それよりもやっぱりあるじゃん、なんかそういうのって。俺が見て来た人たちはカッコ良かったんだよね、トラブってペダルが取れてもそれを普通に乗って帰ったり、その場で対処したり。何乗ってもカッコ良いやつってカッコ良いからそうなりたいよね。やっぱり負けちゃうやつもいるから、乗られるじゃなくて乗ってやるほうが良いじゃん。
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おおやべえ!って
バイク屋がそうじゃないと

ー うーん……、モーリーさんって動じないポイントが高いんですよ。
ぶっ飛んでる人ばっかり周りにいたから。憧れてたアキバさんなんかピストンが吹っ飛んでタンクもすっ飛ばしてるのに涼しい顔して乗ってたり。ハーベストタイムに一番初めにEVOで行ったときなんか俺120kmぐらいで走ってたんだけど、その人なんかはエイプのナックルで路肩の段差を越えながら俺の何倍ものスピードで、『バーンッ!』てギャップくれながら走ってくんだよね。そういうの見ちゃってるから。
ストゥープモーターサイクルズ STOOP MC 生森”モーリー”まさとのインタビュー
ー めぐまれた環境で育ってきてるから。
そうそう、だからそこでストップかけて今日やめましょうならカッコ良いの撮っちゃってよって。もう死んじゃっても良いからさって(笑)。
ー (爆)。今こそ笑ってますけど実はその気配を若干現場で感じてました。
そういうのは正直あるんだよね(笑)。
ー サムライ的な美学ですね。
要はバイク屋さんが一番カッコ良くないとあれじゃん。だから怒られるけどこの辺はまあ戸田っていう特殊な町だからフル加速で走るし、やっぱ「おおやべえ! ここで買おう!」って俺がそれを見ても思うだろうし。だから控えめに小ぎれいなカッコしてっていうんだったら作業着で、とかの方が良いのかなって。
ストゥープモーターサイクルズ STOOP MC 生森”モーリー”まさとのインタビュー

さもないから
人が乗って映える

ー ちなみに、今後ストゥープをどうしていきたいとかあるんですか?
ないです。奇抜なのも作れないから、作れないっていうか俺が求めてなくて、だからその飽きのこない俺が思うチョッパーっていうのを作り続けたいなって。別に自分の作るのってさもないと思うの、さもないバイクって。
ー うーん。
でもさもないバイクが一番カッコ良くて、じゃないと人が負けちゃうんだよやっぱり。だからあとからじわじわくるようなのが良いなって。でも賞は欲しいからキラキラも作ってみようかな。
ストゥープモーターサイクルズ STOOP MC 生森”モーリー”まさとのインタビュー
ー 思ってるんですか!? 本当です(笑)?
そりゃそうだよ(笑)。キラキラっていうか全部手を入れた凄いやつを作ってみたいんだけど。だから今回(※2017横浜ホットロッドカスタムショー)はどっちかって言うと黒でショーっぽくないやつを出してみた。
ー 今回はいわゆるストゥープスタイル、モーリーさんの世界観のまんまですよね。
そうだね。
ー 嘘ついてないというか。
そうそう、もうまんま。これでダメならもう無理ですってやつ(笑)。

STOOP MOTORCYCLES

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FAX 048-485-1340
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