LITTLE WING ENGINEERING 大平芳弘のインタビュー

LITTLE WING ENGINEERING

大平芳弘 Yoshihiro Ohira

September 14th, 2016

代表の大平さんは東京都北区で生まれ育ち、青春時代はバイクとサーフィンに熱中。その後就職し、4輪のメカニックを経て、旧車ハーレーの老舗に務めて独立。リトルウイングは今年でオープン22年目を迎える。

以来、ハーレーとインディアンの内燃機のテクニカルショップとして名を馳せ、チューニング、修理、メンテナンスを軸に運営。また、一般のお客さんのみならずプロショップからの外注先としての顔も持ち、同店の腕を頼ってエンジンワークの依頼が絶えることはない。作業に関しては常にオープンな状態で、お客さんがいつでも内容を確認できる態勢をとっている。これは少しでも自分のバイクのことを知ってもらい、興味を深めてもらいたいという思いからだそうだ。

大平さんの人柄かショップの雰囲気は至ってフレンドリーで、月に1度の日帰りツーリングと、年に2度の1泊ツーリングを実施。自らがバイクに乗ることでお客さんとの視点を共有し、何よりも一緒に楽しむ時間を大切にしている。

かつては精力的に旧車レース活動にも力を注いできた同店。そこで得た経験はオリジナルのレシピとして生き、『気持ちよく走るバイク』を創造し続けている。

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ダメなものを直しては乗る
昔からやってることは変わらない

ー リトルウイングのオープンからお話を聞かせてください。
1994年の11月。今からもう22年経つのかな。
ー オープンまでの大平さんの経緯をざくっと教えてもらえますか。
ざくっとだと、僕はオープンする前はある2輪のハーレーショップで勉強させてもらってた。その前は4輪関係をやってて、まあ2輪はまったく趣味の領域だった。で、専門学校の講師見習いみたいなものも経験した。だから、そのあとに4輪関係に務めて整備をしたりして、ハーレー屋さんに出入りするようになったのかな。そこで働かせてもらうまでには、お手伝いしながらかなりの年月を通ったんですけどね。
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ー 大平さんは若い頃、10代後半の多感な時期はどんな少年だったんですか。
10代後半。……そうだなあ、まあ、あれですね。ティーンエイジャーの頃はバイクと波乗りと、あとは夜遊び(笑)。寝る暇もなく遊んでましたね、とことん。
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ー なるほど。
まあもともとね、4輪の整備をやりたいっていうのはガキの頃からあって、その気持ちがブレずにあったんで。それで一番早く原動機付の乗り物に乗れるってなると、原チャリとかバイクになるわけじゃないですか。必然的にバイクから入ってきた感じだったんですけど、まあバイクにしてもたいした技術も知識もなかったけど、自分でばらしたり買ってきたりするのが好きで。ポンコツみたいな物をもらったり安く買ったりして、それを直しちゃあ誰かに譲ったりしてた。今とあんまり変わらないことをちょこちょこしてたんですけどね(笑)。
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旧車と付き合うポイントは
人間の体と同じように労わること

ー では、今度はリトルウイングの業務について。チューンナップ、メンテナンス、内燃機専門の外注業という形態を軸にやられてますけど、カスタムメインとかではなく、そこに惹かれる理由は?
自分の所のスタイルに共感して人が来てくれる。それはそれで有りだと思います。でも、それだとお金的な制限や時間的な制限、いろんなものがある中で車両をコンプリートする自信がないっていうのかな。そういう所もあったんで、だったらカスタムはカスタムで、今もちょこっとはやるんですけど、部分的にだけその人がイメージしてるようなものをやってあげればと。それにオートバイがどんな形であれ、きちっと走って曲がって止まってというところが一番気持ちよく出来ていれば化粧はどうにでもなるという考えもあった。なので外装ではなく内燃機、「中に、中に」っていう風になったのかもしれないですね。気持ち良く乗ってる人が一番良い姿っていうか、自然な姿ですから。
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ー これまでたくさんの内燃機関を触ってきて、いろんなエンジンの故障を見てきたからこそ伝えられる、旧車との付き合い方などがもしあれば教えて欲しいんですけど。
僕はね、いつもオートバイを人間の体と同じように捉えてもらうんです。そんな偉そうなことは言えないけど、でもやっぱりお金を出せばオリペン(※当時の状態のままのオリジナルペイント)だろうがナックルだろうが今買えちゃう世の中じゃないですか。でも買ってもそれを自分の物に出来るかっていうのもそうだし、良い状態をキープして乗っていられるか、それを楽しめるかってことがすごく重要。そんな中で人間に例えると、結局自分が若ければ爺さんと一緒に遊んでるようなものだから、そろそろ休ませてあげようかなとか。最近、調子は良いけど何も見てないから不具合がないか検診に行こうとか、どれだけバイクに対して自分が労わってあげられるかというところだと思うんです。
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ー 機械だからとかではなく結局は一緒だという。
そう。で、労わるためにはある程度構造的な理解も、専門的な知識はいらないけど絶対必要だと思うんですよ。乗り物だし古い物なんで、「ここはこうしなければいけない」とか、「こういうのはNGだよ」っていうのがいっぱいあるわけじゃないですか。オートバイと良い付き合い方をしていくためには自分もそのオートバイに歩みよる必要があるし。
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ー そもそもしっかり向き合っていれば、労わる感覚は自然と生まれてくると思います。
今の時代のオートバイやクルマは、ボンネットなんて開けなくてもいい、エンジンオイルなんか見たこともないしプラグも見る必要はないっていう車両じゃないですか。でも、それとはまったく違う世界を自分が選んだんだから、その辺は自分がオートバイに歩み寄らない限り良い状態は絶対に生まれないと思います。っていうか、そういうお客さんと一緒にいたいなって。もちろん、「何をしろ」「こういう整備を自分でやれ」というところまでは求めないけど、でも自分でそこを見てなかったがために止まってしまったとか、見てなかったがために壊れちゃったというのは僕は故障とは思わないんです。
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ハーレーではない何かを探したとき
インディアンが「バチン!」ときた

ー 大平さんといえばレース活動は外せません。これまでの主だったレースの話と、今後についてはいかがでしょう。
(笑)。そうですね、僕がリトルウイングの前に勤めていた所がレースを一生懸命やってた所だった。旧車レースのはしりというか土台を作ったところで、今あるAVCC(American Vintage motorcycle Competition Clubman roadrace)の前の前の世代ですよね。そんな時代からレースをやられてた人のサポートが出来たというのは非常に良かったですね。
ー いわゆる総本山ですからね。
で、自分がそこを抜けてリトルウイングを立ち上げた時に、レースというものをどこかで意識してて、サポートではなく自分でもやっぱり走ってみたいというのが前からあって(笑)。で、これまで勤めてた店がハーレーの750サイドバルブに特化してるスペシャルショップだったんで、それとは違う路線で面白いのはないかなって。そこにインディアンがバチン! とはまってきたんですね。
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ー その出会いは偶然です?
そうですね。その前にインディアンはゴローさん(※故原宿ゴローズ店主)やその他の人達の車両もちょこちょこ見るような機会があったり、インディアンチーフは自分でも乗る機会もいじる機会もあったんだけど、当時のサーキットで最速だった車種のことを詳しく知るようになったのはもっと後だった。それで、それを乗ってみたいってそのバイクを自分で調べていって手にしたのが1937年のインディアンのスポーツスカウトっていうモデルだった。
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ー スカウトとは比較にならないハイパフォーマンスエンジンが搭載されていると聞きます。
それをアメリカで手に入れて、おんぼろトラックに乗っけて東海岸のフロリダから西海岸のロスまでビューンって運んでね。その時に、もうほんとにオリジナル度が高かったんですけど、エンジンがぎりぎりかかるかどうかのポンコツで、「これ待てよ」って。もともとのスペックってどんなものなのかまったく未知の世界なんですよ。乗ったこともないし全開くれたこともないし。そこで、じゃあちょっと迷惑かからないんだったらこのままサーキットに持ち込んでみようかなって(笑)。
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ー なんのレースです?
AVCC。それで、いっとう最初に富士(※富士スピードウェイ)に行ったのかな。ほとんどそのままで、まあワイヤリングとかレギュレーションで決まってるセーフティな作業はもちろんして、あとはちょこっと調整したぐらいでそのまま走ってみたんです。そしたら思いのほか凄い面白くて。もちろんやらなくちゃいけない箇所はいっぱいあったけど、「あっ、これ面白いな」って。もっともっと可能性もあるだろうし、あとは自分がデイトナ(※フロリダ州デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ)か何かで向こうの旧車レースを見た時に、「なんでハーレーにしてもインディアンにしてもこんなに違う感じがするっていうか速いんだろう」って感動したんで。それで可能性がまだまだあるんだろうなって思って、そこの領域は自分で楽しませてもらいたいなと。それで走り出したわけですけどね。
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内燃機の作業を掘り下げて
充実させていくのが理想

ー なるほどそういう経緯だったんですね。今後のレース活動は?
また復活したいとは思ってます。「もっとどうしたらこうなるんだろう」とか、「こうしちゃダメなんだ」とか、レースをやってた時は自分自身のモチベーションも上がったし勉強になったことも沢山あって、今でもそれが自分の大きな財産なんですよね。だからやっぱりそこは、あぐらをかかないで向き合い続けなければいけないというか、それが自然にできるのがレースだし、何より走れば楽しいですし。レース活動をやっていくのが日頃の仕事のモチベーションにも影響するんで、すごく大事な部分だと思います。
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ー では最後に、今後のリトルウイングの動きについて教えてください。
僕はもう今、すごく良いお客さんに囲まれて、仕事もそこそこ面白いことをやらさせてもらっている。だから大風呂敷を広げて、「なんでもやりまっせっ」て、いろんな人達を待たせてしまうことに凄いストレスを感じちゃう。だったら、「あれもこれもやります」と無理に欲張るよりは、いま信用してうちに来てくれてる人たちの車両を中心に、人間的にも車両的にもいろんな部分が合致する輪の中で仕事が出来たら良いなと思っています。
ー これまでリトルウイングを支えてくれたお客さんたちを優先して。
プラス、内燃機の作業をもう少し掘り下げてやっていきたいというのもあります。そこを充実させていきたいと思ってるんです。それがいま一番の理想ですね。

LITTLE WING ENGINEERING

リトルウイングのショップ外観
住所 東京都大田区南馬込1-60-2(Google MAPを開く
電話 03-6303-8009
FAX 03-6303-8997
SHOP LITTLE WING ENGINEERINGのショップ紹介
営業時間 8:00~18:00(火~土)/9:00~18:00(日、祝際日)
定休日 月曜日、第2日曜日