平和モーターサイクル HEIWA MOTORCYCLE 木村健吾 Kengo Kimuraのインタビュー

HEIWA MOTORCYCLE

木村健吾 Kengo Kimura

April 8th, 2018

2016年と2017年度のホットロッドカスタムショーで、『BEST OF SHOW MOTORCYCLE』の2連覇を達成。ちなみに、古くは国内よりも海外での評価が高く、ここ数年でようやく日本でも正当な評価を得るようになった遅咲きのヒーローである。

木村さんのいまの活躍ぶりは目覚ましく、海外メディアからの取材やイベント招致へのオファーは絶えず、最近は世界的スーツケースメーカー『リモワ』のカタログに日本を代表するアーティストのひとりに選出され、モデルとして登場。それは、あの北野武と同列で扱われるほどに格式高いものだ。

これまで、青春時代のすべてをホッケーに捧げ、キャプテンを務めたチームで国体優勝という輝かしい実績を保持。しかしその後ホッケーを離れ、幼少期から慣れ親しんだバイクへと方向転換を果たす。そして、『超』体育会系で培った負けん気の強さと良質な感性をひっさげて、一心不乱にバイクビルドに専念し、2005年、日本では無冠だったショーバイクから『平和』の名が異境の地でとどろいてゆく。

平和モーターサイクル HEIWA MOTORCYCLE 木村健吾 Kengo Kimuraのインタビュー

小1からCRで
山を走ってた

ー バイクに興味を持ちだした頃から教えてもらえますか?
兄貴がバイク乗ってたんで。まあモトクロス、ホンダのCRとかが家にあってそれで山に行ったりとか。
ー 高校生の頃?
いや、もっとです。小1とか、小学校のときですね。
ー えっ!?
親父とかが軽バンに乗せて連れてってくれて。
ー 小1でモトクロス!
まあ。で、兄貴がゴガンとかあったじゃないですか、ガンマ500、あれ系のに乗ってて、ヤマハTZRとかオートバイ(※創刊100年近いバイク雑誌)見ながら欲しいなっていうのから。
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ー それいくつぐらいの話です?
まだ小学生。
ー 小学生でオートバイを読んでたんですか! ところでオフ車にしたのはたまたま?
そうですね。でも今の子供みたいに本気ではやってないですよ、モトクロス場とかじゃないんで。でもそれからずーっと、高校はバイク乗る時間がないぐらいの体育会系だったんで。
ー じゃあ一回バイクから離れたわけですね。
はい。
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高校はホッケー部で
国体で優勝した

ー 体育会系って何をやってたんです?
ホッケー、芝の上のホッケーなんですよ。休みは正月しかないぐらいの感じだったんで。
ー たった正月だけ? なんか大きな大会に出るほどの?
そうっすね、国体優勝とか。
ー へ(笑)!?  国体優勝!?
(笑)。
ー 木村さんが!?
そうですね、チームで。
ー ヤバイなこれ。本気の体育会系じゃないですか。じゃあ当然上下関係も。
ガンガン(笑)。だって1年のときなんか毎日深夜の12時ぐらいまで学校にいて、先輩が投げて帰ったスティックとかスネアテを手洗いで全部終わらせて、そこからチャリで家まで帰ってましたから。
ー だと家着くのはもう1時前ですね。
いや、家まで20kmありましたから。
ー おほ(笑)!
じゃけえ1時間以上かかってたかな、もう終電もないんで。
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サクッと見切りを付けて
好きだったバイクを満喫

ー そもそも今までバイク好きだったのになんでまたホッケーに?
いや、僕野球もしてて、野球部に入ろうと思ってたんだけど、名門高だったからすでに100人ぐらい名簿に名前が書いてあった。それを見て「ああこれレギュラーなれないなあ」と思ってもう帰ろうと。そしたらちょうどホッケーの人らが「ちょっちょっとー!」、名前だけ書いてみたいな。そこからです。
ー いずれにしても国体優勝って普通の部活レベルだったらまず無理ですよね。
かなり体育会系だったんで。それでインターハイ、国体と。
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ー なるほど、木村さんの負けん気の強さはそこから来てるんですね。
うーん……。まあ、うまく全日本ユースとかにもなってたんで、大学は僕の尊敬してた先輩が早稲田だったから6大学のどこかに行きたいと。でも、当時アジア大会が広島であるから、「お前は広島の経済大学に残れっ」て監督に言われてダメになった。だけどその大学が超弱かったんですよ。
ー 厳しいですねそれ。
もう関西リーグでも3部のドベだったんで、絶対そんなとこ恥ずかしくて行きたくないって(笑)。でも結局そこに行って6大学あきらめたんですけど、もう面白くない。だからそっから部活はしてたんだけどほぼバイクっすね。レースも出てたし、その時代からコイバイ(※己斐オートバイセンター廿日市店)でバイトしてレース資金貯めてたんで。
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就職はみんなサラリーマン
でも僕には迷いがなかった

ー 『平和』を始めるまでの話を聞かせてもらいたんですけど、己斐オートバイセンター廿日市店に入った時にはすでにバイク一本でやっていこうと?
そうですね、ずっとコイバイでバイトしてて、就職活動のときに先生に「次どうするん?」みたいな。「バイク屋です」って答えたらまあ経済大学なんでみんな普通のサラリーマンだったり銀行員だったりするんですよ。
ー はぐれメタル的な。
そう、「なんでバイク屋?」みたいな。いやバイトしてたんで、って答えて就職活動もせずあっこ入ったんですよね。
ー でも今振り返れば最高の選択でしたね。で、コイバイにはどのぐらい?
9年です。
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一生に1台のバイク
それが店を始める動機

ー 『平和』を始めるキッカケはあったんです。
古いバイクを使って自分の形を作りたくなった。もちろん現行車とかでも良かったんですけど、一番「なんかなあ」って思ってたのが、自分が頑張って作ってもお客さんのステップアップのためのカスタムとかだったらすぐ売ってしまうんですよ。だから例えば、国産車とかSRでも、がっつり時間とお金をかけてやったらまあ極端な言い方したら一生に1台のバイクになりますよね。そしたら次々売る人も少ないじゃないですか。
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ー 間違いないです。
僕らはもう一生に1台のバイクをその人のためにだけ作ればいいんですよ。でも、じゃったらどうやって儲けるのと言ったらその人が他の人に紹介してくれて、その友達が同じようなのを作ってくれればいい話で。要はオンリーワンのバイクを作って、長く乗ってもらうっていうことをしようと。だから販売店とは真逆の考え方だったんですよね。
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いつも12時ぐらいまで
そらあしんどかったですよ

ー 『平和』の作るバイクには作り込みやスタイリッシュなシルエットの他に、日本古来のワビサビ的な美意識を感じます。木村さん的には平和のスタイルをどうとらえてるんです?
うーん。自分らが目標にしてるのは、玄人が見てすごいっていうのじゃなくて、素人が見ても、例えばうちの雑貨屋(※2階にある雑貨屋ポッポ)に来るお客さんが見ても「あっかわいいね」「かっこいいね」って思ってもらえるものを作ろうと。
ー 訪れるかわいらしい女性の目にも留まるような。
バイク業界とは関係ない人にも評価してもらえるものを作ろうと思ってこれまでやってきたんですよ。だから良いパーツを付けてなくても、トータル的にバランスがカッコいいと思わせるものを、っていうのでやってます。まあそれがうちのスタイルじゃないかと思うんですけどね。
平和モーターサイクル HEIWA MOTORCYCLE 木村健吾 Kengo Kimuraのインタビュー
ー 雑貨屋に来るお客さん基準とはサスガです。ところで金属加工はどうやって覚えたんです?
まあ、大学は普通科だったんで、働き出しても整備のことなんてわかんないじゃないですか、旋盤とか溶接も全部専門じゃなかったので。だから旋盤にしても溶接にしても、仕事が終わってとか休みの日を利用して鉄工所に習いに行ってたんですよね。
ー うーん、高校の頃からとにかくひたむきですね。それはコイバイに就職した後の?
そう。カスタムはしたい。でも溶接の技術はないし何も分からない。教えてくれる人もいなかったんで知り合いの鉄工所とかで溶接の練習をさせてもらってた。だからそこは切り開いていくのが大変だったかな。
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ー そういうのもあって今はスタッフでもない若い子に、インターンみたいに教えてあげてるんですね。
僕が習わせてもらえてたからっていうわけじゃないですけど、ああいう愛媛から来た子だったり韓国人の子も、習いたいんだった受け入れたいんですよ。やりたいなら。
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ー 自分がそういう経験をして来てるからなんですね。で、就職してからの実際の作業は?
もちろんカスタムじゃなくて販売店としての仕事をしないといけないから、普段は夕方6時までが一般の作業。店が夜7時までなんだけど6時からカスタムやっていいって言われてたんで、そっからずーっと夜中までカスタムしてた。いつも夜の12時ぐらいに終わって帰ってましたね。
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もともと古い缶が好きで
その延長が雑貨屋だった

ー 話は変わって、雑貨屋ポッポはいつ出来たんです?
前の店(※広島市中区)からこっちに来てだから9年前かな。
ー なんでまた雑貨屋を?
もともと缶とかが好きで集めてたんです。だから前の店舗のときは壁にぎっしり缶を並べてたんですよ、ディスプレイで。
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ー 良いですねぇ、想像できます店内の様子が。
もうぎっしり。まあそうしてたら分かる人は「わあすげえ! 古いのカッコいいですね」って。じゃったらこっちの新しい所にスペースがあるから雑貨屋でもやろうかなあと。ちょうどその時にロウ(※女性ピンストライパー)が眼鏡屋の店長かなんかしてたんで、「辞めてここで売ったりせん?」みたいな。うちのお客さんだったしピンストとかもやってたんで。
ー ロウさんは初期からの店長だったんですね。
そうです。で、雑貨仕入れてくるけえ、やりながらピンストとかもやらんっていうので雇ったんです。やっぱり雑貨は女の子の方がいいけえ。
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海外で知られるキッカケは
ビリーレーンだったと思う

ー 『平和』は最初の頃は日本より海外からの注目度の方が高かったようですけど、何かそうした活動をされてたんです?
いやいや。僕も不思議なんですけど、まだ前の店舗でやってた時だから12、3年ぐらい前にお客さんが、「HEIWA MOTORCYCLEって英語で検索したらなんかすっげえ出てくるよ」って。確かに見てみたら海外のサイトに僕が作ったバイクがいっぱい載ってたんですよ。
ー 『平和』のホームページから画像を引っ張って載せられてたと。
はい。それで調べると、うちのホームページに来るだいたい1割のアクセスがアメリカからだった。1割って相当な割合じゃないですか。あとヨーロッパとかからもあって、全体の2、3割が海外からのアクセスだったんです。
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ー 10年以上前に2、3割も海外からですか!
それで、海外の人は見てくれとんじゃって。それはまあいろんなキッカケがあったと思うんだけど、僕は初めてホットロッドショーに出した2005年からなのかなと。そのときトラのチョッパーを出したんですよね。でもなんのアワードも、COOL(※アワードの中で一番数多く用意された賞)すらもらえなかったんだけど。
ー 渾身のカスタムだったのに。
そう。もうブチ切れて、2度と出すかって(笑)。
ー やっちまった(笑)。
思ったんですけど、そのとき海外の人はちゃんとチェックしてくれてたんですよね。ビリーレーン(※2000年代初頭に一世を風靡したチョッパービルダー)っていう、ああこれです(※横の棚から本を取り出して)。ビリーレーンが自分のウェブで紹介してくれてて、そこで多分平和ってやつが良かったよみたいなのがあったんだと思う。それでどんどんワイワイなっていったんですよね。
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あっと言わせる物を
僕は作りたい

ー 『平和』は英車や国産がメインでハーレーではないですよね。
そうですね。
ー その辺のこだわりは?
自分でやってたのがほぼトラとかで、ハーレーが入ってこなかったというのが実際のとこ。でまあ人数も少ないのでこれ以上触るバイクを増やしても対応しきれないし、分からない所はあまり手を付けないっていうので英車とかに絞ってたんです。
ー でも今はハーレーもやってます。
ある時期から一般の、ちょっとした修理だったりを少しへして、カスタムメインでいこうって。その時にやっぱりハーレーをやって、そういう部分も伸ばしていかないといけないんじゃないのっていうので始めたんです。まあ乗り物的にいえば、やっぱりトラとかはガンガン回してブンブン走って軽いっていうノリなので、速いバイクでいえばハーレーではないと思うんですけどね。
平和モーターサイクル HEIWA MOTORCYCLE 木村健吾 Kengo Kimuraのインタビュー
ー さすが小学生からオートバイを読んできただけあって速いバイク好きなんですね。
好きですね(笑)。
ー でもトライアンフは古いほどにエンジントラブルとかもあって大変だというじゃないですか。そういう魅力もあるんですか、大変だけど好きなんだよ的な?
ないですね(笑)。もう壊れないに越したことはない(笑)。僕はあくまでも作り物のほうで、雑貨屋に来た子たちが見てもカッコ良いと言ってくれるような、あっと言わせるものを作りたいんですよ。

HEIWA MOTORCYCLE

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FAX 0829-30-6001
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