誰もが現代社会の恩恵を存分に享受して日々を過ごしているが、その満ち足りた快適さをふとわずらわしく感じたことはないだろうか。目まぐるしく過ぎ行く情報の濁流に、心を削られるような喪失感を覚えたことはないだろうか。
そんな現代社会の喧騒と隔絶して、心をゆったりと休められる聖域。それがアウトドアフィールドだ。スマートフォンの電源を落とし、オフラインとなって自然に溶け込めば、ささくれて強ばった心の角がならされてゆく。
そうした自然との向き合い方をサポートしてくれるアウトドアブランドが、ワークウェアメーカーの雄である『BLUCO』から誕生した。ブランドの名は『BACK TO NATURE』。さぁ、自然に帰ろう ――。
(写真/山田健太郎 文/馬場啓介)
様々なアウトドアアクティビティでのタフな使用を前提としつつ、日常にも違和感なく溶け込むデザインを根幹に据えた気鋭のブランド、『BACK TO NATURE』。ディレクションを担うのは長年、BLUCO青木さんの懐刀として業務を遂行してきた伊藤友昭さんだ。
伊藤さんは都内の生まれだが、母方の実家が八ヶ岳のほど近くで牧場を営んでいたため、幼い頃から野山を駆け巡っていた生粋のアウトドアズマンだ。氏の作り出すウェアに洗練と野趣(やしゅ)、相反するその両方を感じるのはそうした背景があるからかも知れない。
「アウトドアフィールドで使うことを想定しているので、機能性を重視し開発テストは綿密に行っています。けれど日常でも着られるようにデザインを考え、過剰なハイスペックにならないように気を付けていますね」
BACK TO NATUREのアパレルやギアがいかにも使い心地良く目に映るのは、そこに過不足がないからだろう。街中を走るのに1000馬力超えのドラッグレーサーが必要か、という話だ。昨今のアウトドアブランドのプロダクトにそのきらいがあることは否めない。
出勤前のダム湖でのフィッシングから雪深い山中での年越し野営まで、伊藤さんはライトにもヘビーにも自然と向き合ってきた。「自然は心を落ち着けに行くところでもあり、自分の限界を見極める勝負をしに行くところでもあります」。
「意識はしていませんが、自分が古いギアが好きなので自然と滲み出てきますね」との言葉通り、幾多の経験をフィードバックしたウェアにはコーデュラやベンタイルといった現代的なマテリアルが採用されていながらも、どこかヴィンテージを思わせる雰囲気が漂う。
ブランドを象徴するメインモチーフに掲げたのは、原宿全盛の東京ストリートカルチャーを支えてきたデザイン集団、7 STARS DESIGNが描いたニホンカモシカ。「よく釣りに行く山でたまに出会うんです。コンセプトのひとつの野生動物との共存共生を表しています」。
また威風堂々ときつ立するニホンカモシカには、メイドインジャパンにこだわった和製ブランドであるという矜持(きょうじ)も投影している。理想を求め幾度も修正を重ねる氏の服作りのパートナーは、品質はもとよりレスポンスに優れた日本の工場でなければ務まらない。
日本らしさを想起させるデザインのギアも散見される。例えばコーデュラの強靭な表生地にウレタンフォームを充填したマルチカバーは、風呂敷からインスパイアされたプロダクトだ。ジャパンプライドを掲げる同ブランドならではのオンリーワンだと言えるだろう。
アパレルやギアを愛用してくれる顧客とのリアルな繋がりも大切にし、旧知の仲であるルアーブランドのTOP BRIDGEと共に『オーバーランダーズ(オーバーランド=車でフィールドに遊びに行くこと)』というイベントも企画している。次回は秋口に開催予定だ。
生死に関わる危険な野生動物との遭遇さえも笑い話として語る伊藤さんの笑顔はおおらかだ。自然から多くを学んだ男が生み出す服は、ともすれば現代人が忘れがちな『必要にして充分』であることの美徳を思い出させてくれる。
ハット | HT01 ¥7,700 -taxin |
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ベスト | ※来春発売予定 |
L/S Tシャツ | LPT01 ¥8,800 -taxin |
パンツ | LP01 ¥19,800 -taxin |
シェード | UNCROWD UC-017 ¥12,800 -taxin |
トラッシュバッグ | TB01 ¥2,640 -taxin |
クッション | FC01 ¥15,290 -taxin |
マルチカバー | MC01 ¥12,100 -taxin |
ショップ | BACK TO NATURE ONLINE SHOP |