
750ccの水平対向2気筒エンジンを搭載したサイドカーメーカー『ウラル(URAL)』。その無骨で冒険心をくすぐる佇まいから、近年キャンプやアウトドアシーンでの評判が高まっている。
しかし、ここにひとり、少し違った趣(おもむき)をもったウラル乗りがいる。聞けば、オーナーは5人の子供を育てる現役のママ。
正規ディーラー『ガレージエルフ』を営むご夫婦の、ウラルを中心とした賑やかでたくましい日常を追った。
(写真/磯部孝夫)

「今日は天気がいいから、これでお迎え行っちゃおうかな」
そんなカジュアルな気分で、彼女はお気に入りのバイクに跨る。現在、1歳から10歳まで、5人の子供たちの母親である植原さんにとって、ウラルは特別な日のための趣味の乗り物ではない。毎日の生活に欠かせない「足」だ。

朝、子供たちにご飯を食べさせ、9時過ぎには下の子たちを幼稚園と保育園へ。その送迎はもちろん、お店の備品や日用品の買い出しにもウラルが活躍することが多々ある。
「スーパーで買った大根やネギをそのままサイドカーにポンと積んで走ってますよ(笑)。私にとっては原付感覚というか、本当に普段の足なんです」

本来、悪路を走破するために作られた2WDモデル「ギアアップ(Gear Up)」が、日本の街中で生活の道具として馴染んでいる様は痛快だ。そして、子供たちにとってもこのサイドカーはとびきりの特等席。
「ウラルのいいところは、隣に乗る人と同じ景色を見られること。それに、走行中でも会話がよく聞こえるんです」

風を感じながら、今日あった出来事を子供たちと話したり。そんな何気ない移動時間が、サイドカーという空間を通してかけがえのない親子のコミュニケーションタイムに変わる。

鮮やかな「バトルシップブルー(戦艦青)」に塗られたこの車体には、メカニックである主人植原さんの並ならない気配りが注がれている。
そもそもウラルを導入したきっかけは、当時まだ自動二輪の免許を持っていなかった奥さんの「サイドカーに乗ってみたい」という一言だった。普通自動車免許(MT)があれば乗れるウラルは、バイクへの入り口として好適だったのだ。

しかし、納車されたばかりのノーマル車に乗った際、奥さんは恐怖を感じたという。「なんだかうまく言えないですけど、どこかへ飛んで行っちゃいそうで」。
そこで植原さんの出番となる。「妻が安心して乗れるように」と、彼女に合わせたブレーキバランスの調整をはじめ、カスタムも敢行した。
別の二輪モデルのウラルからフロント周りをごっそりと移植し、それによりフェンダー位置が下がり、タイヤ径も19インチから18インチ相当へ小径化。車高が下がり、低重心化された車体は、小気味よく走る安定したマシンへと生まれ変わった。

「最初は扱いづらかったウラルが、調整してもらってからは全く別物になりました」と彼女。植原さんも、「ウラルはキャンプや犬を乗せてのツーリングなど、遊びの幅が広いのが魅力。大型免許を持っている人でも、あえてこの世界を選ぶ理由がわかります」と語る。
鮮やかなブルーの塗装も、色にこだわりを持つ奥さんのためにオーダーしたもの。この一台は、夫婦二人三脚で作り上げたとっておきの仕様だ。

ガレージエルフではウラル専用のカスタムパーツ(キャブトンマフラーなど)の製作も行っているが、その根底にあるのは「乗って楽しい」「心地よい」という原体験だ。
ノーマルでは少し物足りない出足を解消し、ノスタルジックなサウンドを響かせるマフラーは、実際にオーナーとして走り込んだからこそ生まれた製品と言えるだろう。

そんなご夫婦には、描いている未来の景色がある。
「将来的には、子供たち一人一人がバイクの免許を取って、みんな一台ずつ自分のバイクで、家族全員でツーリングするのが私の夢なんです」

そう語る奥さんの横で、植原さんも「子供たちは乗り物に対してウェルカムだからね」と微笑む。家族みんなで風を感じたい。日常の買い物から、週末の冒険、そして未来の家族ツーリングへ。
普通免許で乗れるという気軽さと、どこへでも行けるという冒険心を兼ね備えたウラルは、この大家族にとって、単なる移動手段を超えた「家族の絆」を運ぶ大切なパートナーとなっている。

「ウチのお客さんには納車時に全員教習をさせてもらってます。バイクの免許を持ってても意外と勝手が違って乗れないんですよね。ハンドルを切るっていう感覚がないですから。
バイクはどちらかというとハンドルを切らない乗り物ですから、跨った瞬間に怖くて切れないんです。体重移動したところで曲がれませんから。もう高確率で皆さんそうですね」

「実は今までのこの2WDの受注が本国で止まっているんです。そこで新しくネオという近未来的なモデルが出たんですけど、個人的にはやっぱりこれまでのレガシーモデルが良いですよね。
無骨な雰囲気だったりアドベンチャー心をくすぐるというか、ウラルらしさがありますから。なので、あとはレガシーモデルの早めの復活を期待しつつ、ウラルネオを見ていきたいと思います」
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