Casting Custom Motorcycle Parts
砂型鋳造によるFORK製パーツの出来るまで
FEATURE
December 8th, 2017
職人技に最敬礼
砂型鋳造の震える可能性
デザインから製造までをワンストップで手掛ける、国内筆頭の鋳物パーツメーカー、『FORK』。日本古来の工法である砂型鋳造により産み出されるカスタムパーツは、今や海を越え、世界中のファンから喝采を浴びる。
なぜか。それはまず、代表の長谷川さん自身がカスタムビルダー出身の、生粋のフリークであるのがひとつ。二つに、匠の技と呼ぶにふさわしい、叩き上げの職人による鋳物の『質』がある。
氏のカスタムを愛すればこその視点で創造される一本気なパーツ群に、キメ細やかな生砂(なますな)を使ったつややかな鋳肌の質感はもはや、他のパーツメーカーが扱うそれとは別次元にあると言っても決して大げさではない。
百聞は一見に如かず。その工程を、インタビューと合わせて追ってみよう。
無限に広がる
三次元形状
ー まず、正直こんな手間のかかることをしてるとは思わなかったです。
■ だと思いますよ。
ー 本当の職人の姿を見たというか。
■ いいですねえ(笑)。本当の匠だからね。
ー さて。じゃあ鋳物の魅力からいきなり聞いていきたいんですけど。
■ まあなんといっても、やっぱり三次元形状が無限に可能というか。
ー 無限!?
■ もちろん型をいっぱい用意しないと出来ない物もあるけど無限だとは思う。だってやり方ひとつだから。別に鈑金で作れない物が多いという意味じゃないけど、立体的な物を作るやり方としてはすごく幅が広い。
一番の動機は
自分が欲しいもの
ー 鋳造のメリットって何です?
■ まあ鋳造だと広い意味になっちゃうけど、砂型鋳造のメリットに関して言えば、木型という物さえ作れればいろんな物にトライできる。初期コストを抑えて、少量多品種で出来る。一方で、金型はやっぱりすごいお金がかかってしまうから。
ー フォークは結構精力的にパーツを開発してますけど、市販化する基準は何かあるんです?
■ まず一番の動機は俺が欲しいもの(笑)。俺がこういうの付けたいなって。
ー 最高です。そこは昔から変わらず?
■ 変わらず。あとは、ちょっと大きい見方なんだけど、目指すところはスタンダードになりたいわけよ。
ー うーん、難しいです。
■ うん。奇抜な物で目立つのは簡単だと思ってるの。なんだけど、シンプルでいて、なんかこれは良い!って。そんな長く使ってもらえるような物を作りたいっていうのはいつもある。
鋳物の『質』
これには自信がある
ー 客観的に見て、既にシンプルで外しがないと思いますけど。
■ 奇抜なのは少ない。変な話、奇抜なのはいくらでも作れるけど、スタンダードになりえるような。刺激物ではなくて、噛みしめるほどに味が出るような物を目指してる。あとはなるべくオリジナリティだね。
ー 具体的にはフォークの強みってどこなんでしょう?
■ まあデザインに関しては俺も日々試行錯誤だから、「俺のデザインが凄いでしょ」という気はないの。だけど、鋳物の『質』に関しては自信がある。
ー はい。今日の工程を見て、さすがにそう言い切ってもらわないと逆に困るというか(笑)。ああやって全て手作業で創ってるのかと(※下段の作業工程参照)。
■ まあ、『味』とか言って磨かずに物を出すのは簡単なんだけど、磨いた時にピシッと巣穴なく、綺麗にっていうところまで考えて作ってるから。そこら辺は誰でも真似できるものではないと思う。
ー もっと掘り下げると、クオリティの決め手はどこです?
■ 工場長(※この道60年以上の匠)の知識は大きい、凄い大きい。かといって工場長も『見た目』の物ばかりを作って来た人じゃないから、研磨でどうやって見えるかとかはもちろん俺の経験になる。ワンロット磨いて全部ダメだったり失敗もいっぱいしてきたから(笑)。
ー 素材について教えてください。生砂(なますな)だと完成度は上がる?
■ 生砂だからっていうことはない。
ー 生砂の他には何があるんです?
■ 自硬性砂(じこうせいさ)っていうのがいまは主流で、放っておくと勝手に固まるのが特徴。あとガス砂っていって、砂に炭酸ガスをかけると固まるのもある。生砂じゃなくて固まる砂を使うのが簡単だし失敗も少ないから使ってる人が多い。
ー ではなんでフォークは生砂を?
■ 生砂じゃないと出来ない物もあるのね。ケージっていうか鳥かご状の物だったり。あとは、生砂の質感。すっごいキメが細かくて、鋳肌が独特なんだよね。
ー なるほど。では今回製造工程(※試作の第一回目)を追わせてもらったものを、この後で紹介させてもらいます。本当に楽しかった!
■ なんとか1個成功して良かったよ(笑)。
砂型鋳造とは?
砂で型を作り、その中にアルミをとろとろに溶かしたもの(溶湯)を流し込んで作る日本古来の製造法。金型に比べて型費(木型)を抑えられる分低コストで、生砂の目が細かいため微細な文字や意匠的表現の幅も広い。また、柔軟性があるので中子形状にも対応する。
【前半】エンデューロフェイスの製作工程
昔は木で作ったことから木型と呼ばれる、元になる型を事前に用意。ヘッドライトの穴を作るため中子を入れて、下型と上型で挟んで固めた後に木型を抜き取る。再度下型と上型を組み合わせることで木型の中空部が完成。
【1】昨年の展示から改良を加え正式に販売されるエンデューロフェイス。砂型鋳造の前にあらかじめ木型を用意。
【2】下型に上型を乗せて、ざるに取った目の細かい生砂を振りまぶしてゆく。その後は手で押し揉むように固める。
【3】再度生砂をスコップでかけて、次に上型の上に乗り全体重をかけて踏み込む。感触を掴むため足元は足袋。
【4】しっかりと生砂を固めたら上型の表面をきれいに均す。専用の道具を使い右から左へ確実に凸凹を処理。
【5】表面を均したら上型を開けて内部を確認。そのままゆっくり上型を外す。上・下型ともに意外と重量がある。
【6】下型の上に乗った木型を、どこにも触れないよう注意して棒で釣りあげるように取り外す。神経を使う作業だ。
【7】木型を取った下型の様子。このままではヘッドライトの穴が無いので、真ん中に中子を入れる必要がある。
【8】中子の穴をペンチでくわえ、中心をとらえてゆっくりと配置。慎重さを要する作業は意外なほど多い。
【9】中子を設置したら上型を下型に組み合わせる。内部は木型を取り除いた部分が中空になっている状態だ。
【10】下型と上型を合致させて砂型鋳造の準備段階は完了。今後は穴(湯だまり)から溶湯の注入作業に移る。
【後半】エンデューロフェイスの製作工程
炉で溶かしたアルミ(溶湯)を湯くみですくい、穴の開いた湯だまりから注入。溶湯はそのまま湯口から細長いセキを通り、中空状態の型へと流れ込む。溶湯が凝固したら砂型を壊して、中の固まった溶湯を抜き取り湯口やセキを切断。バリ取りなど最終仕上げをして完成。
【1】加工性が良く、磨いた時に綺麗なアルミAC4B材を使用。約700度弱の炉に入れて溶かし溶湯を用意する。
【2】とろとろになった溶湯を湯くみですくい、そのまま横の部屋まで移動して準備済みの湯だまりから注入。
【3】工場長はこの道60年以上と、想像を絶する時間を砂型鋳造と向き合ってきた匠である。今も尚現役だ。
【4】溶湯を入れてだいたい7、8分で早々と凝固。上型の側面をハンマーでトントンと叩いて、垂直に持ち上げる。
【5】そのまま上型を外したら、下型に残った生砂をハンマーである程度力を入れてグシャグシャとほぐしてゆく。
【6】これぞ出来立ての砂型鋳造品である。アルミ材を高温で溶かして形成された物だけに、湯気の量も盛大だ。
【7】完成した鋳物には溶湯を注入するのに必要な湯口やセキ、押し湯がそのまま付くため、それを切断する。
【8】バンドソーで切り取った後にサンダーでバリなどを除去。最終的にネジ穴や磨きをかけて完成となる。
【9】デザインから製造までをワンストップで手掛けるフォーク代表の長谷川さん。物作りの情熱は尽きない。
【10】満を持して今年の2017横浜ホットロッドカスタムショーに登場。全4タイプで1万6000円(税別)~。
メーカー |
FORK |
住所 |
東京都大田区東糀谷3-16-2 |
電話/FAX |
03-5705-4009/03-6423-2102 |
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