ハーレーのショベルから現行ミルウォーキーエイトまでのエンジンチューニングに定評のある45ディグリーが、新たに『パウダーコート』を開始。顔料を直接対象物に吹き付け、静電気の力でくっ付けた後に焼き付け乾燥炉で仕上げるこの塗装は、耐衝撃性と耐熱性に優れた塗膜を形成する特殊コートとして、広くバイク乗りの支持を受けている。
そして同店では、そのパウダーコートに専任の女性スタッフを登用。ハーレーショップならではの技術的な配慮はもちろん、女性特有のきめ細やかなサービスが合わさることで、一般ユーザーを始め業者からの依頼が広がり続けている。
ここではハーレーショップとして、また、女性スタッフが施行するからこその美質に焦点を合わせ、新たに始動させたパウダーコートのサービスに今一歩、足を踏み込みたい。
広島の45ディグリーが新たに始めた『パウダーコート(粉体塗装)』。今ではバイク乗りの間でお馴染みとなった耐衝撃性/耐熱性に優れた特殊コートで、主にフレームやフロントフォーク、ホイールといった小石や風雨のダメージにさらされやすい箇所でより効果を発揮するものだ。
そのパウダーコートの施行にあたって、同店では男性ではなく女性の専任スタッフを配備。以前に溶剤を使ったチヂミ塗装などの経験を持つ山本さんが現場を取り仕切り、粉体塗装を任されている。
一連の工程は下記で詳しく追うが、パウダーコートの作業は体力勝負だ。顔料を吹き付けた後は大型の焼き付け乾燥窯に入れて約1時間、180~190度ぐらいで焼き付けを行うが、夏場ともなればこの窯の付近にいるだけでたちまち汗が止まらなくなる。
しかし過酷な状況下でも彼女はなんら参った様子を見せずに淡々と、にこやかに作業を進める。また、無駄のない動きに加えて、その都度掃除も実施。そんな几帳面な所作はそのまま眼前の仕事に反映されている。
「言ったらちょっと恥ずかしいんですけど、一つひとつの塗装物に対して愛情を持って、綺麗になってねみたいな気持ちでやってます(笑)。もちろん下地が大事だとか、脱脂はしっかりとか、一個一個気を付けている下処理はいっぱいあります」
毎回静電ガンの清掃に気を配るのもそのためで、そうした配慮が透けて見えるからこそ目の肥えた業者からの評判も高い。そしてそれは、以前自分達が逆の立場だった時の苦い経験が活きたものでもある。
代表の保浦(やすうら)さんは言う。「元々はウチも外注してたわけですよ。でもその時に不良があって、それを意見したらそういうもんだって。そんなはずないのは分かってましたから、であれば自分たちでやろうと」。
納期も早く、これまで2、3週間待っていた経験から1週間前後で上げることを指針とした。そして氏は、山本さんに粉体塗装を託した理由を日々の化粧に例える。美しくあるための下地の大切さや塗り重ねなど、男に足らないものを全て理解している点が女性起用の原点だ。
時には代表から各パーツの専門的なアドバイスを受け、山本さんは日々パウダーコートに専心。そして彼女は、『旧車パーツには旧車の雰囲気に適した質感出し』と、専用プライマーを使った『光沢パーツのクリアーコート』に関して熱を込める。
ハーレー業界というとどうしてもラフな男性のイメージが先行するなか、女性が活躍できる晴れやかな舞台を用意することで、その才腕を存分に発揮。こうした同業種間でも頭ひとつ抜けた、女性目線の気が回るサービスが45ディグリーのしなやかな総合力となっている。
ガスタンクやフェンダーなど外装の塗装に用いられる一般的なウレタン塗装よりも塗膜が厚く、耐衝撃性と耐熱性に優れたパウダーコート。高温になるエンジン周りとの相性も高いこの特殊コートは主に、3つの工程を経て処理されている。
まず『洗浄・剥離』である。洗剤で汚れを落としてから、塗膜があるものに関しては剥離を実施。パーツを漬け置いて、完全に塗膜が剥がれ落ちてから次の作業に移行する。
両手を中に入れ、サビ落としや塗装面を均一に馴らすためサンド(砂)ブラストを施行。空気で砂を吹き付けて塗装面の足付けを行う。その後はメディア(粒子)が残ったままだと塗装面に小さなボツボツが出来るため、超音波洗浄機で喰いついたメディアを除去。
一方ウェットブラストは、ガラスビーズと水を混ぜたものを吹き付けて汚れを落とすもので、ホイールなどのアルミの素地を美しく見せるために使用する。
塗装は静電気を発生させる専用ガンを使い、塗材のパウダーを吹けば静電気の力でくっ付いていく。吸い付くように付着していき、コーティングされた対象物はその後、塗装ブースの向かいに設置された焼き付け乾燥炉へと運ばれる。
フレームも収まる大型の焼き付け乾燥炉で約1時間、180~190度で焼き付けを行う。パウダーコートはこの最終工程の高温での焼き付けを経ることで滑らかで強靭な塗膜を形成する。
表面の美しい状態を維持するために同店がメッキや光沢アルミパーツに施行しているのがクリアーパウダーコートだ。難易度が高いとされるこの独自の工法は、専用のプライマーがあって初めて成り立つもの。
密着をよくするために特殊なプライマーを使用し、基材表面に目に見えないナノレベルのプライマー層を形成させる。それがアンカーの役目を果たして塗材を密着させ、焼き付けた後も剝がれにくく強靭な塗膜を確保する。右がプライマー処理済みのもので水も弾かず浸水状態になる。
車両に応じたパウダーコートのトーンの使い分けも特徴だ。例えばショベルヘッドなど旧車のリペアでは、オリジナルの再現を一番のテーマにして、雰囲気を壊さず当時の質感に合わせた色艶を再現。
ブラックはグロスブラック/7分艶/5分艶/3分艶/完全艶消/ホットロッドブラック/リンクルブラックの中から最適な色味を抽出して各パーツに用い、逆に新しめのモデルは艶々の仕上げでクオリティを高める施策を講じている。
ハーレーのエボリューションモデルをパウダーコート。外装とフレーム以外をコーティングし、各パーツの艶やかなブラックがひとつとなってマシン単体の完成度を高めている。ハンドルレバーといった小物からホイールやオイルタンク、エンジンに至るまで女性スタッフの手で繊細に措置。ほとんどの金属/耐熱パーツを塗装対象にして要望に応じている。
米国KG社が開発したガンコートはスプレーガンで塗装した後に焼付乾燥を実施。9Hという突出した表面硬度を誇り、優れた耐熱性や耐薬品性、高放熱効果を保持。
シリンダーを始めとしたエンジンなどにも適した塗料で、パウダーコートに比べて塗膜が薄い分クリアランスがシビアな箇所で力を表す。
同店ではガンコートに続いてセラミックコーティングの取り扱いも開始。エキゾーストパイプやサイレンサーなどマフラー塗装に特化した特殊コーティングとして運用する。
温度にして1000度以上の耐熱性を誇り、またパーツクリーナーなどにも冒されない耐薬品性を備え、従来の耐熱塗料のポテンシャルを上回るコーティング剤として効果を生む。
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