MAHLEマーレピストン ハーレーショベル用 45ディグリー広島オリジナル

MAHLE motor sport, Produced by 45Degree Hiroshima

45ディグリー製マーレピストン×シウンクラフトワークス

March 25th, 2019

ショベルヘッドで果たす
原点回帰的マーレピストン

F1やル・マンカー、NASCARといった世界最高峰のモータースポーツ競技車両に採用されるMAHLE(マーレ)製ピストン。突出したパフォーマンスで四輪のレーシングシーンでは不動の座を誇るマーレ製ピストンだが、今回、広島の45ディグリーがハーレー・ショベルヘッド用のオリジナルピストンを同社に製作依頼。

そしてそのピストンを、神戸のシウンクラフトワークス松村さんがインプレッション。歯に衣着せない公正な人柄で知られる氏の、生のコメントで実力を検証したい。

MAHLEマーレピストン ハーレーショベル用 45ディグリー広島オリジナル

製作の経緯を簡単に言うと
納得できる物がなかったから

かつては四輪用だけでなくハーレー用も手掛けていたマーレ社のピストンを元に、現代的に置き直した45ディグリーのオリジナルピストン。代表保浦さんに製作の経緯を尋ねれば、「欲しい物がなかったから」、との返答。

普段からツインカムなどの現行モデルを扱う氏にとって、物足りなさがあったショベル用ピストンだが、マーレ社のノウハウをもって覚醒したそれは、「見違えるような走り」で応えてくれると言う。

45オリジナル・マーレピストンの特徴

1. スリッパースカート型

MAHLEマーレピストン ハーレーショベル用 45ディグリー広島オリジナル

他社製と比べて一目瞭然の、高さを抑えたコンパクトサイズ。このピストンスカート部をカットした特徴的なデザインによって図抜けた強度を確保。例えば横から衝撃が加わったときに、ピストンの中心に向かって支柱が走るため既存の丸型に比べて変形しにくく、結果的に強靭で軽量なピストンとして評価される。

2. ウルトラフラットリング

MAHLEマーレピストン ハーレーショベル用 45ディグリー広島オリジナル

ピストンリングにマーレ製ウルトラフラットリングを採用。耐久性とシール性に定評があり、また比較的柔らかい特性を持っている。この利点は、常に強い張力でシリンダー内壁に当たる硬いリングと比べて『抵抗』が抑えられる点。圧縮が入った際にだけキュッとリングが張り、燃焼ガスやオイル漏れを防止する。

3. ブラックダイヤモンドとグラファルコート

MAHLEマーレピストン ハーレーショベル用 45ディグリー広島オリジナル

全体に施した黒いコーティングのブラックダイヤモンド(フォスフェートコート)は、ピストンリングの凝着やスカッフィング(※摩擦で生じる表面傷)を防止して初期馴染みを向上。マーレ社の特許技術であるグラファルコートは、潤滑性を高めてシリンダー内壁との摩擦を軽減。ピストンスラップ音の抑制にも一役買う。

シウンクラフトワークス松村さんによるインプレッション

なぜ、シウンクラフトワークスだったのか?

MAHLEマーレピストン ハーレーショベル用 45ディグリー広島オリジナル

数あるプロショップの中から、なぜ、シウンクラフトワークスの松村さんに依頼したのか。まず、そんな素朴な疑問に対して45ディグリー代表の保浦さんはこう続けた。「あれだけカッコいいチョッパーを作っているという部分。それにボンネビルやドラッグレースにも積極的に参戦して、ヴィンテージモーターのポテンシャルを追求しているという部分」。そんな感性の尖った人がこのピストンをどう見るのか。そこに強い関心があったそうだ。

MAHLEマーレピストン ハーレーショベル用 45ディグリー広島オリジナル

一方、相談を受けた松村さんは当初、その場で了承せずに一旦話を持ち帰ったとのこと。しかし後日、商品を目の当たりにするや、「じゃあやりましょう」と即決。想像していたのとは明らかに違う代物だったと言う。「もう見た瞬間にデザインが現代の設計であるのが分かった。あとは自分がピストンから受けたインスピレーションです(笑)」。そうして、ちょうどエンジン内を確認する予定だった’81年式FXSを使ったオーバーホールは開始された。

【前半】MAHLEピストンのセットアップ

カスタムでもなんでも、一番気にするのは全体のバランスだと語るシウンクラフトワークスの松村さん。今回は’81年式FXS 1340をモデルに、マーレピストンを使ったオーバーホールを実施。ハイカム以外はほぼストックの車両を前に、慣れた手付きで作業は進められる。

【1】白煙が出てきたため確認も兼ねてオーバーホール。よく走るオーナーに合わせタフ&ファンな乗り味を狙う。
【2】通常品と比較すれば瞭然のローハイトピストン(右)。サイズは89.5/90.0mmの2種で、89.5mmを使う。
【3】ピストンピンはフローティング仕様で、専用プーラー無しでも指で挿入可能。現代的ピストンの特徴部位。
【4】摺動部にオイルを塗布。すぐエンジンをかけるのでアッセンブリールーブでなくモチュール7100を使用。
【5】ウルトラフラットリングはオイルリングからセカンド、トップの順で組付け。柔軟性があり装着も容易。
【6】コンロッドに通したピストンピンをCクリップで固定。これによりスムースなフローティング状態を保持する。
【7】あらかじめ準備しておいたボーリング/ホーニング済みのシリンダー。特殊加工を要すため専門業者が施行。
【番外編】内燃機加工を担当したサカイボーリングの高橋さん。自身もハーレーでドラッグレースに出走する。
【番外編】89.5mmのオーバーサイズピストンの装着に合わせシリンダー内を切削。ミクロレベルの調整を反復。

【後半】MAHLEピストンのセットアップ

組み付けていく過程ではピストン自体に特別変わった違いはなかったと言う松村さんだが、しいて挙げれば、フローティングによるピストンピンの入れやすさ。そして、ピストンリングの柔らかさが印象にあるとのこと。では、エンジンの最終セットアップまでを追っていこう。

【1】シリンダー内壁にもモチュール7100オイルを塗布。摺動部への潤滑油の手配はオーバーホールの基本。
【2】オイルを垂らしたら手で満遍なく内壁に塗り渡らせる。こうしてメカニックの手に年輪が刻まれてゆく。
【3】勿論ピストンリングのウルトラフラットリングにもオイルを塗布。ひとつずつ丁寧な作業が繰り返される。
【4】そのままではピストンリングが広がりシリンダーに入らないためピストンリングコンプレッサーで挿入。
【5】シリンダーに入るようあらかじめ縮めておくリングコンプレッサーを使って前後ともにピストンを収納。
【6】シリンダーを組み込んだらトルクレンチでスタッドボルトを固定。規定トルク値で数回に分けて増し締め。
【7】シリンダーヘッドとロッカーカバーを装着して作業終了。残すは慣らし運転と、ハイライトのインプレだ。

実戦派『松村さん』の慣らし1000km後インプレッション

ひと言で言うと、無茶苦茶スムーズ

MAHLEマーレピストン シウンクラフトワークス松村

「味わったことない乗り味で、もうメチャメチャなめらか。もちろん圧縮比とかも関係あるんだけど、キックするのも軽くなったと感じるぐらいですね。ピストンリングとかその辺のフリクションロスの少なさが影響してると思う。

あと、組んだばかりのエンジンって硬い印象があるんですけど今回はそれを感じなかった。感覚的にはこれ慣らしいるんかな、ぐらいの感じやったです。あと勘違いされると困るのが、ショベルの乗り味が残った上での『なめらかさ』という点ですね」

MAHLEマーレピストン シウンクラフトワークス松村

誇張なく、真実をありのままに語ることで知られたシウンクラフトワークス松村さんの実直な意見である。そして、このショベルを誰よりも深く知るオーナーもまた同じ感想だったと言う。「ピストンを置き換えただけでショベルが見違えるような走りになる」、と話した45ディグリー保浦さんのコメントは、ここでカチッとはまり、実証された。

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