HARLEY-DAVIDSON FXRSC 1993
DICE MOTORCYCLE
本質を知る
ストックラバー
その日は朝から憂鬱だった。天気予報は雨。しかも降水確率は80%のお墨付き。これじゃあ外でバイクを撮影するのは無理だから、一体どうしたもんかと。福島のダイスモーターサイクルに向かう車中で、どこか近くに雨を避けられる場所があると良いんだけどなぁ、なんて淡い期待を抱きながら待ち合わせ時刻きっかりに店に到着した。
しかしそこには、そんな当初の心配を根こそぎ払拭するスペースがちゃんと確保されていた。ショールームの裏にある、別棟のファクトリー。広々とした縦長の空間には、今回の取材車両と、堂々たるマッスルカーのコンビネーション。もうそれだけでお腹いっぱいの、問答無用の絵面が用意されていた。
取材車両は、‘93年式FXRSCコンバーチブル。ダイナやFXRといった人気車種ではなく更に踏み込んだこの希少車を出して来る辺りが、『通』な感じがビンビンである。しかも見ての通り、ほぼほぼストックのスタイルを活かしたカスタムにまとめていて、安定感というか、慣れ親しんだフォルムが目にやさしい。
「これは乗りやすく、そこそこパワーアップして、で、後ろのボックスはポリスのやつなんですけど……、なんて言えば良いんだろう……(笑)」
思わず店主の酒井さんを口籠らせてしまった質問にハッとした。そう、ダイスMCはフルスクラッチのカスタム屋ではなく、『ストックを活かしたスタイル』を得意とするショップである。なので、この見た目が万事で、パーツチョイスからマシンバランスに至るまで、そのすべてが良質な世界にどっぷり浸かってきた氏の感覚に委ねられたもの。決してビカビカに仕上げない脇に佇む’69年のシボレーノバを見れば、その感性の片鱗がうかがえる。
基本的に手を加えた箇所は、耐久性を考慮してヘッドチューンのみ施したエンジンとハンドル周り、フロントのフェアリング、マフラー、リアのポリスボックスぐらいだと言う。しかしピンポイントで触るその箇所に、同店の審美眼が光っている。
例えば、ウインカー。ストックスタイルを活かしたカスタムショップは数あれど、この種のウインカーをそのまま使うところは少ない。そして、シートも然り。ちょっとでもイメージを変えようと別のスリムな物に変えてしまうのがきっと大半だろう。そこに来て、同店の仕事である。端的に言えば、セクシー。野暮さと粋を、キワキワのラインで均衡させたそれは、見るほどに大人の色香を感じさせる。
HARLEY-DAVIDSON FXRSC 1993 DETAIL WORK
FRONT FAIRING
クラブスタイルには欠かせないフロントフェアリングは社外のライフル製を装着。色味は外装と合わせられた。
HANDLE
社外のハイライザーにスポーツスター1200S純正のハンドルをセット。敢えて両サイドに付けたミラーが乙だ。
ENGINE
耐久性を前提にしたチューン。1340ccのエンジンはヘッドのみS&S製を装着。ハイカムとEキャブを付ける。
REAR BOX
サイドボックスはエボリューション・ポリスモデル純正を流用。外周を囲う太目のステーもポリス用である。
REAR END
ウインカー、短めのシッシーバー、フェンダーなどはすべて純正タイプ。隙の無い完成されたリアビューだ。
MUFFLER
マフラーはバンス&ハインズ製を選択。シンプルなデザインがストック基調の全体のフォルムにマッチング。
BUILDER’S VOICE
DICE MOTORCYCLE
住所 | 福島県いわき市平字五色町2 |
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電話 | 0246-35-7750 |
FAX | 0246-35-7751 |
SHOP | DICE MOTORCYCLEのショップ紹介 |
営業時間 | 11:00 ~ 19:00 |
定休日 | 不定休 |