HARLEY-DAVIDSON FXR
MAIDS MOTORCYCLES

派手な容姿で翻弄する
内に秘めたる素顔

国内のドラッグレース団体V.D.Aを主宰し、今年より本場NHRAのトップフューエルクラスへのエントリーを果たすメイズモーターサイクルの齊藤さんは、スピードに魅せられた人である。そして、「速いものに乗りたい」という昔から変わることのない趣向を持った氏のブランニューが、このツインカムFXRだ。

「僕18年ぐらいずっとエボのFXRに乗ってて、お客さんのツインカムFXRもこれまでに数台作って来てるんですね。それで集大成じゃないですけど、きっちりしたシャーシとエンジンで一台作りたいなと。だから基本的には店のコンセプトバイクみたいな感じです」

チョッパーガイズ製のシャーシとジムズ製エンジンのセットアップに迷いは無かった。いや、というより齊藤さんにはこれ以外の選択肢は無かったとも言える。

「もう大阪の修業時代から長いこと触ってて、純正フレームよりも軽くて剛性が高い。あとはオーダーも利いて自由度があるからチョッパーガイズにしたかった。エンジンはユニットだけじゃなくて各パーツの信頼度もあるんでジムズでいこうと」

135cu.in.（2212cc）というハイトのあるビッグモーターを搭載するために、フレームのトップとダウンチューブはセミオーダーで専用設計とされた。そして、ツーリングも街中もこなせるようバネ下重量の軽減を図り、フロントにスズキGSXの倒立フォークを流用し、前後ホイールはアルミ鍛造のアクティブ製グライドを装着。しかし最大のポイントは、それらを構成する全体のバランスにある。

氏はFXRをカスタムする時、まずは車体左側を軽くするためプライマリー内を乾式化するそうだ。ベルト駆動で整備性も上がり、何より左右のバランスが取れることで取り回しが軽くなる。ハーレー固有の左側に寄った重心を改善するだけで乗りやすさは格段に上がると言う。

「どんだけ大きいモーターを積んでても乗りやすさとか押し引きの軽さといったトータルバランスを重視する。あとは整備のしやすさですよね」。そう話す氏の言葉を聞いて気付いたことがある。それは、『整備』というフレーズが頻繁に出て来たことだ。

パッと見は派手に映るこのツインカムFXRだが、無駄な装飾物は何ひとつ付いていない。それは、作る手間を省くのと、無駄な要素を排除することで整備性を保つためである。タンクの取り付け位置が高いのも、外すことなくエンジンがばらせるようにとの理由からだ。この、外観のインパクトの裏にすっぽり隠れた整備性の高さが、同店のカスタム手法と言えよう。

FRONT FORK

スズキGSXの倒立フォークを流用。カウルは市販のオリジナルだがマウントは車種に合わせた受注対応となる。

HANDLE

Vツイン製9.5インチプルバックライザーを黒にパウダーコート。ミリ仕様のハンドルはPMCのカーボンタイプ。

GAS TANK

ノーマルタンクを2インチ幅詰め加工。整備性を考慮して2インチ上げて装着。メーターダッシュはワンオフ。

ENGINE

信頼を寄せるジムズ製135cu.in.（2212cc）のビッグモーターを搭載。大排気量に合わせてキャブはGキャブだ。

PRIMARY

プリモ製1-3/4インチのベルトドライブに換装。クラッチは親交の深いブルーパンサー製VPクラッチをセット。

SWINGARM

軽量で剛性の高さに定評ある米国のトラックダイナミックを選択。アルミ製で長さはストックサイズとなる。