HARLEY-DAVIDSON FLHTCU 1998
TWO KOOL HARD CHOPPERS
仕上げの良さではなく
誰も見たことがないもの
今回は勝手が違う。まず、これほど手の入ったカスタムを手掛けるショップなのだが、率先してPRをしてきた形跡がない。そして、川口オートレース場の脇道という立地からなのか、薄暗い店内にはリアルタイムでレース中継が流れている。今までお邪魔してきたカスタムショップとはどこか異質である。
しかし、蓋を開ければこの道20年以上のベテランであることが分かった。要は、現在盛り上がりを見せるカスタムシーンの遥か昔から変わらず、独自のスタイルを淡々と貫いて来たショップである。その名もツークールハードチョッパーズ。ショップと店主から受けたファーストインパクトは、燻し銀だ。
ベースは1998年式のFLHTCUウルトラだが、もはや原型を留めないスタイルに大きく様変わりしている。狙いは、ボンネビルソルトフラッツを突き抜けるスピードブレイカー。そこに同店のお家芸となるアーティスティックなカスタムマナーが存分に発揮された。
骨格となるメインフレームにはパウコ製を使い、往年のノートンを彷彿とさせるフェザーベッドフレーム仕様に。オリジナリティあるシルエットを入手している。そして、タンクに入る今回のテーマに挙げた、DORSOL(脊髄)をイメージソースにした外装のメタルワークがスタートされた。
では、プロジェクトの起点になったシートに注目しよう。真上から見ると明らかだが、メタルフィンを等間隔で配置しそのイメージを忠実に再現。また、それぞれの間に繋げられたパイプの長さは1インチである。これは、フレームを1インチ径のパイプで製作したためで、隙間から覗いた時のスペースを無くして、見る角度で1インチパイプと1インチの隙間が綺麗に重なる絵を作りたかったからだと言う。なるほど、相当に芸術肌的発想である。
そのイメージはタンクにも踏襲され、類のない造形を形成。ところが、DORSOLの外装のみが目的ではなく、最終着地点はあくまでもスピードブレイカー。見てくれだけの飾り物では終わらない。
未知のスピード領域でも対応出来るようにと、金属パーツはすべて高強度のジュラルミンで製作。スタビライザー兼用のフェンダーは鍛金でスタビリティを向上させている。そして、ひと際目を惹くエンジン周りだが、ターボチャージャーのセットアップは譲れない箇所だった。
「ボンネビルのイメージがあるから絶対に付けたかった。セッティングが出ればそうだなぁ……、夢の話だと320kmは出る(笑)。強化ミッションが組みあがればエンジンに火は入るよ」
「見たことのない夢のあるバイクに惹かれる」と話す代表武藤さんの耳にはさんだワイヤレスからは、肉迫するオートレーサーの中継が絶えず漏れていた。
HARLEY-DAVIDSON FLHTCU 1998 DETAIL WORK
HEADLIGHT VISOR
ノーマルバイザーを三分割にしてそれぞれをショートカット。新たに設けたアッパーカバーと合わせて溶接。
STABILIZER
ジュラルミン製スタビライザーはフロントフェンダーも兼ねた作り。昔ながらの鍛金で強度アップが図られる。
GAS TANK
DORSOL(脊髄)がモチーフのタンク上部。フィンの間隔は1インチでフレームの太さに合わせられた。
ENGINE
ターボ搭載のエンジンは圧縮比9.5:1の約1480cc。カム、ピストン、バルブ周りにはSHIFTON製を使う。
RAM AIR
ジュラルミンで作ったレース用パーツのラムエアー。工業製品にはないハンドメイド特有のリアリティが滲む。
METAL SEAT
カスタムの起点になったDORSOL(脊髄)シート。すべての外装に共通するジュラルミンを使いワンオフ。
BUILDER’S VOICE
TWO KOOL HARD CHOPPERS
住所 | 埼玉県川口市上青木1-25-7 |
---|---|
電話 | 048-258-5206 |
FAX | 048-258-5586 |
SHOP | TWO KOOL HARD CHOPPERSのショップ紹介 |
営業時間 | 昼 ~ 夜中 |
定休日 | 不定休 |