HARLEY-DAVIDSON KH 1956
SPICE MOTORCYCLES
KRのパーツをぶち込んだ
ストリート・ダートトラッカー
「ベースは1956年のKH。ダートトラッカーをイメージして、ストリートで普通に乗れるバイクというオーダーだった。お客さんからは結構お任せで作らせてもらっています」
日本屈指の交通量を誇る、環状七号線と甲州街道が交差する大原交差点近くに居を構えるスパイスモーターサイクルズ。東京圏のチョッパー乗りを強力にバックアップするカスタムショップである。代表の濱本さんは金属加工を始め、エンジンチューニングなどのテクニカルな作業も得意とし、その腕を買って訪れるファンも多い。
ストリート・ダートトラッカーとでも呼びたくなる、見るからにレーシーかつスタイリッシュなフォルムである。しかし、注目は外装ではなく懐に抱くエンジンで、ベースはKH900だが、カムとヘッドはKR750のものがインストールされている。レースとなれば当然、KRやWRといった『R』の名を冠した周辺パーツを使えば速くなるのが定説。でも、KH900に排気量の小さいKR750のパーツを流用するということは、一見デチューンの印象を受けるが決してそうではないそうだ。
「KHにKRのパーツが入ったこのエンジンは、多分ファクトリーのパーツを使ったセットアップでは一番パワーが出ると思う。Kのモデルで考えればまさに理想的でしたね」
元々は、海外で知らずに買い付けたKHのエンジン内に、既にKRのパーツが入っていたと言う。これは、そうしたマニアックなチューンナップが長い間なされてきたもので、濱本さんが日本に持ち込んでからは更に手を入れて完調なセッティングを出している。
「他の車種と比べるとKモデルって結構遅い。実は乗り味がまったりしてるんですよ。だからある程度パワーをあげてやらないと乗り手は物足りない。その中でこのKHはアイアンスポーツほどではなくても、それに迫るぐらいのパワーが出てるんです。圧縮比だと通常モデルが5~6:1程度だけど、だいたい6.5~7:1は出てるかな」
ホットなチューンが施されたKH900。いかにもなレーシングフォルムではない、ストリートに溶け込むスタイルだからといって甘くみてはいけない。蓋を開ければカリッカリの仕様が与えられた一台なのである。
しかも、なにせ軽快。フロントには軽量のセリアーニフォークを装着し、タンクもダートトラック用のFRP製で、全体に渡ってライトウェイトに終始。そして極め付けは、シッシーバーである。これは実際に日本のオートレーサーに付いていたもので、正真正銘のレーシングスピリットをさり気に宿らせた箇所というわけだ。
渋谷、目黒に隣接した世田谷で長年ショップを営むだけに、手掛けるマシンには都会的なエッセンスがありながらも、相反したストリートのダーティなテイストも漂っている。この絶妙なバランス感とテクニカルなエンジンワークが、スパイス・モーターサイクルズの本領である。
HARLEY-DAVIDSON KH 1956 DETAIL WORK
FRONT FORK
フロントには軽量のセリアーニフォークを選択。造形のみでなくブラックのトリプルツリーがアクセントになる。
HANDLE
雰囲気を盛り上げるダートトラック用のハンドル。実際にレースで使われていた物だけあって装着時の迫力が違う。
GAS TANK
タンクもダートトラック用で、軽量化にウエイトが置かれる世界なだけに素材はFRP製。H-Dのロゴがひと際映える。
ENGINE
KH900にKRのヘッドやカムなどを使ったホットな仕様。フェアバンクスのマグネトーに、キャブはMIKUNI製。
MUFFLER
ブラックアウトされたワンオフのマフラー。エンド部を微妙にカチ上げることでアグレッシブな雰囲気を漂わす。
SISSY BAR
シッシーバーはオートレーサーに付いていた物。リブ入りフラットフェンダーに載るピリオンパッドはBATES。
BUILDER’S VOICE
SPICE MOTORCYCLES
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