
H-D U 1942
SHIX MOTORCYCLES
配球センスに現れる
達観のヒューマニティ
肩の力が抜けて両腕はだらんとまっすぐに伸びている。体のどの部分にも緊張している様子のないリラックススタイル。でもいざという場面になると、すかさず絞り上げた肉体からファイティングポーズを取り、ピンポイントで相手のチンを狙ってリングに葬ってしまう。
そんな、いつだって気負ったところはないけれども、勝負時になると達観した強さをみせるカスタム屋である。

誤解してほしくないのは、いわゆるショーバイクを扱うカスタム屋ではないということ。店主自らが明言するようにただ単に『いらんことしない』店である。でもそのいらんことしないサジ加減が成熟過ぎて、上がってくる完成品はいつも玄人もろともねじ伏せてしまう塩味がたっぷりと効いている。
「もともとはこのUのエンジンがあってそこにお客さんが興味を持ってくれて、ちょっとおもしろいもん作ろうかって。Uベースでスイングアームフレームに載せてみるっていう、なかなか贅沢な感じですよね(笑)」

作り手の松村さんが話すように、遊び心がないと出来ないコンボである。そこにちょうどいいタイミングで米国から仕入れたアイアンスポーツに付いてた外装一式をトレード。
ガスタンクとリアフェンダーはそのまま活用したもので、欲を言えばフロントフェンダーも付けたかったところだがそこは若干のやり過ぎ感を覚えて止めた箇所だと笑う。

リアフェンダーの装着時にはノーマルストラットでは付かないためオリジナルパーツで固定。その際、「まあ昔あったぱくりですけどね」と、すかさず腹をかかえて笑い飛ばすこのあけすけな空気感が爽快だ。
かしこまった所が微塵もないショップスタンスは年々磨きがかかり、重鎮然とした貫禄は上書きを続けている。

それぞれのディテイルも風情だ。フォークはサイドカー用アジャスタブルツリーを使った4インチオーバーで、これ以上でも以下でもないジャストなサイズで設定。そしてマフラーは、これまたちょうどその時に転がっていた名品BUBマフラーを贅沢にも流用。
一方、操作系はこのチョッパースタイルだとジョッキーシフトが定石だがそこを嫌い、あえてのマウストラップを使ったハンドクラッチである。

この辺の球にしっかりと指が食い込んだ遊び玉の妙は、何百台ものチョッパーを取りさばいてきた場数ゆえの緩急だろう。そしてこのただ勝ちにいくだけではない配球センスにこそ、同店に足しげく通う美食家たちをしたがえた芯がある。
HARLEY-DAVIDSON U 1942 DETAIL WORK

HANDLE
同店のチョッパーにこれ見よがしなパーツアピールはない。6インチプルバックライザーにドラッグバーを装着。

FRONT FORK
後期のサイドカー用アジャスタブルツリーに4インチオーバーのグライドフォークを。ライトは汎用の角目タイプ。

GAS TANK
アメリカより仕入れたアイアンスポーツの外装一式をそのまま転用。このパーツの豊富さや自由度も強みである。

MOUSETRAP
この手のチョッパースタイルにはジョッキーシフトが定石。が、あえてマウストラップのハンドクラッチ仕様に。

MUFFLER
マフラーもスタンダードなスラッシュカット等ではなく変化球のBUBマフラー。軌道を上手く取り回している。

SISSY BAR
ツーリングを好むオーナーに合わせ製作。当時『シックス』内で流行っていたというツイスト加工が施された。
BUILDER’S VOICE
SHIX MOTORCYCLES
| 住所 | 大阪府八尾市西高安町1-83-1 |
|---|---|
| 電話 | 072-924-7540 |
| FAX | 072-924-7543 |
| SHOP | SHIX MOTORCYCLESのショップ紹介 |
| 営業時間 | 10:00 ~ 19:00 |
| 定休日 | 火曜日 |

H-D FLHX 2007
H-D FLH 1959







