今から20年前の登場以来、ハーレー乗りの間で広く愛用される、クラッチ軽量化パーツの金字塔『VPクラッチ』。
ハーレー固有のクラッチの重さを解消するハイパフォーマンスパーツとして国内外で市民権を得た一級品だが、遂にそのラインナップにカワサキZ用の『VPC-ULTIMATE-Z』が加わった。
革新的な遠心機構を使用したこのロックアップクラッチは、新システムを導入した設計でカワサキZ乗りを力強くバックアップ。これまでクラッチの重さに目をつぶってきたライダーの救世主として遂に降誕した。
ここではプロフェッショナルから一般ライダーまで、その実力をインプレッション。リアルな現場の声に耳を向けたい。
ワールドワイドな人気を誇るクラッチ軽量化の高性能パーツ『VPクラッチ』に、カワサキの名車Z用がリリース。Z1/Z2/Z1000Jに対応するこの『VPC-ULTIMATE-Z』は、新式の遠心機構を持つロックアップクラッチで構築。
国際特許申請済みの2分割したプレッシャープレート内におもりプレートを内蔵。そのプレートがエンジン回転と共に機能することで、低回転域でクラッチは軽く、高回転域で強化された理想的なタッチを実現する。
クラッチ軽量化の実数値として、低回転域ではノーマル比で約40%減(※アイドリング時)を記録。一方、クイックシフトするような高回転時にはおもりプレートの作用で強化クラッチへと変成。
そして、この一般的によく使われる低回転域での軽やかなクラッチワークだけでなく、ほぼすべてのハイパワーエンジンに応じたスペックが与えられている点も、動力装置に精通した開発者ならではの機構だ。
今回は、ドラッグレースのワールドレコードを保持する開発者重松さんの盟友であるファニーカーのレジェンド神戸さんを始め、数多くのオートバイに触れ審美眼を養ってきたバイク編集者や一般ライダーから率直な感想をヒヤリング。
最速を競い合う世界で磨かれた玄人目線と、ストップ&ゴーを繰り返す都心の走行やツーリングといったデイリーユースなユーザー目線の双方から、傑作VPクラッチのカワサキZ版『VPC-ULTIMATE-Z』の実力を見ていきたい。
ハーレーのトップフューエルクラスのワールドレコードを持つ開発者重松さんと交友の深い神戸さんは、同じく最速を競い合うドラッグレースのファニーカークラスで長年に渡って名を馳せ、今やリビングレジェンドとしてその世界では知らない人はいない存在。
埼玉県でカーショップ『K’Sトレーディング』を営む傍らで、各モーターイベントからの招致でエキシビションを披露。現在、国内唯一のファニーカーパイロットとして周知される。
「まずいじくったバイクのクラッチを滑らないようにしたらスプリングを強くするところから始まるんですけど、それだと当然握る力が強くなる。そこをスライダークラッチを使ってるというのがさすが凄いなと。遠心クラッチなんで回転が低ければ柔らかいまんまでいけますし。
結局そのアイデアがあっても具現化するのが大変なんです。そのシステムをあの限られたスペースに収めているというのが驚きですよね」
レースに魅せられた人間特有の性格上、自分自身でも数値を測定。その結果、ワイヤー式で7.1から4.1kg/油圧式で6.5から4.0kgへ軽減されていたと言う。その数値が物語るように、今では丸一日下道でツーリングしても手が痛くなることは無いそうだ。
また、クラッチが柔らかすぎる場合は付属のシムで強化出来る点や、よりパワーが出てる人たちのことも踏まえた大局的な設計にも手放しの賛辞を述べている。
神戸さんの奥さんもZ2 RSを所有する生粋の『Z』乗りで、同じバイクをずっと、かれこれ20年以上乗り続けているとのこと。当初はバイクのことは全然分からなかったもののカタチが気に入ったことで購入し、付き合いを深めてきた。
また、最近は離れているもののドラッグレースにも参戦。当時は750ccまでのスポーツマンクラスで年に4、5回ほど出走。ベストタイムは11.712秒を保持している。
「普段は全然乗らなくなりました。でも久しぶりに乗ってもこのクラッチの軽さがあると助かります。本当に軽いという。今までだったら行きは大丈夫でも帰りはもう疲れちゃうっていう感じだったんですけど。
でも全然違いますね。軽い分疲れがないです。スピードが出てくるとちょっと重くなりますけど出だしがめっちゃ軽いんで、軽すぎて『あれ? 半クラかな?』って思うぐらいです」
Z1の基本構造を受け継いだ最終期の車両として知られるMK2。希少なこのモデルを、笠井さんは仕事で駐在していたドイツでたまたま縁があって購入。帰国と同時に乗り始め、早2年半が経つそうだ。
しばらくバイクとは離れていたものの、子供に手がかからなくなったこともあって再開。昔からの憧れと、人とは被らないものを探していた時に出会った名車で、月に1、2度のツーリングを楽しんでいる。
「いままでツーリングに行くと後半が苦しくなってたんですよね。渋滞にはまると『またクラッチ切んなきゃ』って。でもこれ入れてからは凄い軽くなったんでツーリングも最後まで元気にいけます。
結構Z系乗る人はマスター変えたりして軽くしてる人もいますけど、これは良かったですね。見た目もカッコいいんで、それも結構重要です(笑)。純正はハウジングの表側が銀なんですけどこのクラッチは黒なんですよね」
以前はハーレーを主としたチョッパー雑誌の製作に携わり、現在はオートバイ全般のコンテンツを扱う編集者の伊藤さんは、日々やってくる旬なニュースをバイクファンの元へと配信。ひとつ枠に留まらない幅広い知見で、ライダーの多様なニーズを満たしている。
愛車はカワサキZ1で、本人のパーソナリティを投影した無二なるフォルムを創出。三菱TD06ターボを搭載したスペシャル仕様を日常の足にしている。
「軽いですね、指一本で本当にいけます。あとクラッチを強化するってなると硬いスプリングを入れるんですけど、これはそれを入れなくていい。そのまま強化出来ちゃうんで。
排気量を上げたりするZ乗りも多いじゃないですか。そうなるとみんなやっぱり強化スプリング入れたりするんですけど、このクラッチだったらノーマルスプリングのまま強化出来る作りなんで一石二鳥。排気量上げた時にも対応しているんですよね」
低速域でのやわらかいタッチは顕著だが、高速域での硬めの設定も全く気にならないレベルだと言う。何より、軽いのにプラスして『スムーズでなめらか』な印象だと表現する。その自然な『なめらかさ』は、乗る人によっては半クラが分かりにくいほどのレベルだと添える。
また、よほど純正スタイルにこだわる人にはプレート一枚分の厚みが出る点を補足するが、何にも増して、クラッチの軽さが一番の正義である。
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