TASTE 河内山智のインタビュー

TASTE CONCEPT MOTOR CYCLE

河内山 智 Akira Kohchiyama

November 14th, 2016

かつてはヴィンテージハーレーブームに火を点け、その後カスタムシーンの活性に寄与してきた古参のショップである。代表の河内山さんは二十歳の時に、故郷の山口県下関市から音楽活動を機に上京。しかし、一時は離れていたバイク熱が再燃し、それをどうにも抑えることが出来なくなりハーレーの世界へと方向転換を果たすことに。

そして数軒のショップを経てバックヤードビルダーとして活動していた際に、世界の北野武の依頼によりCB50を使ったカスタムモデル『TONO』を製作。その後、ヴィンテージハーレーを専門に扱う『パラダイスロード』をプロデュースし、4年後の1994年に新天地を求めTASTEをオープンさせる。

同店の真骨頂は既存の枠をぶち壊す自由な発想と、それを具現化するバランス感覚で、都会的なボディシェイプを持つマシンは、そのどれもが高いセンスに裏付けられた見事なプロポーションを誇示。そして現在は、BUELL XBを使った『BATTLE CYLONEシリーズ』に注力し、ジャンルレスな新しいクリエイションを展開している。

TASTE 河内山智のインタビュー

今のテイストがあるのは
雀荘の3000円があったから

ー テイストはカスタムショップでありながら、どこか謎のあるイメージです。今日はその辺にも迫れたらと思います(笑)。
いいね、なんでも聞いて(笑)。
ー ではまず、オープンはいつですか?
ヴィンテージハーレーの専門ショップ『パラダイスロード』の3、4年後だから、1994年ぐらいだね。
TASTE 河内山智のインタビュー
ー パラダイスロードの前は何をしてたんです? ざっくりと教えてもらえますか。
二十歳ぐらいのときに下関から音楽でメシを食おうと上京したの。で、ずっと活動してたんだけど、ある時雀荘で定時制の学校に通う子から3000円勝って、その代償としてお金じゃなくてヤマハのRD50をもらった。それを4、5日でカフェレーサーに作り替えて乗った時に、なんだかバイクって気持ち良いなあって。それまでずっと音楽で、長い間離れてたんだけどもうダメだったね(笑)。
ー そこからバイクの道に進み出すわけですね。
2件のハーレーショップに勤めたんだけどどっちもクビになって、その後国立府中でバックヤードビルダーとして生計を立ててた。そんな時に、武さん(※世界の北野武)から話をもらって北野内燃機を立ち上げて、ホンダのCB50で『TONO』を作った。そしてその後は、ヴィンテージハーレーと深く関わりたくなってパラダイスロードをプロデュースしたという流れかな。
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ボードトラックレースの
100年の進化形を再現したい

ー テイストの由来は、「味わい深いもの、サジ加減が効くもの」と聞いてます。
そう。そして作るバイクに関してだけど、全部コンセプトを決めて作っている。ショップじゃなくて、あくまでオーナー側のね。このコンセプトという言葉に関してだけど、1970年代初頭のころの東京モーターショーで見たトヨタとかメーカーの出すコンセプトには本当に夢があったのね。未来を示唆しててドキドキワクワクさせてくれた。「それが本物になるのかな、出てくるのかな」って。その時の思いがあったからそういう方向性を持ったもの、匂いとか、存在感があるものを中心にして行きたくて、ウチでは『CONCEPT MOTOR』という言葉を使ってる。
ー その他に、BUELL XBを使った『BATTLE CYLONE』 シリーズがありますよね。これが今日撮ったマシンのシリーズなんですよね。
そう、そのシリーズの現行のキャスティングだね。自分が描く世界をもっと彩るために、かつてのヴィンテージのボードトラックレーサーが100年の月日を経て進化したであろう姿を現実のものとしたい。そのために、ある程度の台数を用意して、この日本で走らせたいんだよ。
TASTE 河内山智のインタビュー
ー 100年前のボードトラックレーサーが現代に蘇ったら的な。
僕の考える正常進化論を、今日撮ってもらったバイクで表現してる。
ー 100年前はボードトラックだったけど、現在の日本なら舞台は首都高だと。
そう、ぶっ放したい。当時のボードトラックレースのシーンを首都高で見たい。そのためのキャスティングだね。
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ヴィンテージを使うことが
痛々しく感じるようになった

ー では赤い方の、インディアンではなくシャレの効いたインディアナについて教えてもらえますか。
これは単純に、もう一台のグリーンの方、あれはハーレーのボードトラックレーサーをイメージした進化版なんだけど、当時のレースシーンを再現すると対抗馬だったインディアンは絶対に不可欠になるでしょ。そこでお客が来た時に、ちょうどインディアンで行こうという話になってこのカタチに作ったわけだよ。
ー 確かにアメリカンレーサーを語る上では、インディアンは不可欠ですね。
ハーレーVSインディアンみたいな。ただあれを作る上でもうひとつ韻を踏んでるのは、昔僕が作った1948年のインディアンチーフがあったの。それでドラッグレースに出たりストリートモデルとして普通に走ってたんだけど、当時はインディアン=チョッパーの図式で誰もが土臭く作ってて、その中で極めて都会的なボディシェイプで作りたいというのがあった。それでやってたんだけど、なんか古い物を題材にして作るということに疑問が出て来ちゃってね。
TASTE 河内山智のインタビュー
ー スタイルじゃなくて、古いエンジンを使うこと自体どうなのかと?
うん、なんか痛々しくないかって思い出しちゃって。だったら本当にぶっ放せるような、今の世の中を切り裂いて走れるようなものにしたくなった。それで、ヴィンテージを頑張らせて走らせるんじゃなくて、新しい切り口としてビューエルを使った。
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知らずに否定するのは
あまりに短絡的だと思う

ー かつてチョッパーが誕生した時、当時たくさんの人がショックを受けたと聞きます。これは、本来カスタムが正常進化したらこういう形になるのではないか、という河内山さん流のアプローチですよね。
そう、右も左もチョッパーではなくね。20世紀に生まれて、いろんなものをリスペクトしてきた人間が今21世紀に生きてるわけでしょ。20世紀のうんとこ前に戻ったものがピークだというみっともない今の風潮に耐えられなくなった。だからこれまでの、100年以上の時空の中で存在した材料を総括して、楽しくなるもの、ワクワクするものを具現化したかった。
ー なるほど。昔が良かったじゃなくて、今ある最良の物を使って未来を創り出していくというスタンスですね。
僕はパンヘッドやナックルヘッド、XRといった本物の名車をいじってきたことで、その名車がなんで時代が変わって生産されなくなったのかということをちゃんと理解出来てる。メカニズムの他に、メーカーの言うコストの問題や、社会情勢の変化で消えて行った細かい部分まで全部知っているつもり。それはレースシーンにおいても同じで、淘汰されては常に進化があった。だから、それらを知りもしないでつまらなくなったと一括して否定するのはあまりに短絡的だと思うんだよ。僕は表現者として、昔のエナジーを今の素材を使ってでも表現できる人間になりたかった。
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体感できるものを
その世界観で表現したい

ー カスタムのインスピレーションはどこから受けるんです?
もういろいろ。映画もそうだし、ひとつのシーンだよね。切り取った一枚のシーンに当てはまるキャラクターを作りたい。でもそのキャラクターはそれなりの性能が無ければダメで、それはCGで動かすものじゃないから。リアルに触れられるもの、体感できるものをその世界観にばっちりハマるカタチで表現したい。
ー そのカタチの究極形が、あたかもメーカーが作ったかのごく自然な造形だと。
そう。メーカーというものは本当に素晴らしくて、そもそも僕らが同じ勝負の土俵にすら上がれるようなものではないと思ってる。巷では、ワンオフに関して必要以上に特別な、一品製作物という響きに酔う風潮があるけど、メーカーでのワンオフ物のあり方は、量産体制に持っていくための一番最初の足掛かりでしかない。ワンオフ=苦肉の一品作でしかないんだよ。長いことこの業界にいるけど、それが最高の物だというカスタムの世界の薄さがあんまり好きじゃなくなった。
TASTE 河内山智のインタビュー
ー 薄さですか?
うん。逆に言うと、メーカーが作ったものを異形にカスタムする一方で、メーカーがさもコンセプトで作ったであろうモデルがあっても良いんじゃないのって。もしメーカーがそれをアウトサイダーの人間にやられたらどうだっていうところに興味がもの凄くある。まあその辺は自分の意地くそ悪さというかね(笑)。
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いくつになっても
好奇心を忘れないこと

ー 河内山さんにとってカスタムって何ですか? 無からクリエイトするということは。
頭に浮かんだものを、「ね、良いでしょっ」「ね、カッコ良いよねっ」「ほら、良いじゃんっ」て証明したいだけ(笑)。うん、本当にそれだけかもしれない。モヤモヤ感があるわけじゃなくて、こうやったら良いに決まってるからこういう風に作ってこうやったら出来るじゃんって。で、それを見た人が「やばい!」って。だから言葉での意志疎通じゃなくて、既にそこに存在してる物への反応を見るのがすごいエキサイティング。もう、それはメチャクチャね。
ー こう話してるとこっちまで楽しい気分になります。楽しさが伝染するというか。河内山さんみたいに少年の心のまま大人になる秘訣ってあるんです(笑)。
いや、特別無い(笑)。それどころか、周りはそう言っても家族には呆れられるから。でも、これが結局自分だからね。家族には申し訳なく思う反面、こんなもんなんですよって(笑)。
TASTE 河内山智のインタビュー
ー 秘訣も何も、年を重ねたらこうなった。
でもキーワードはあるよ、絶対的なキーワードは。それはいくつになっても好奇心を忘れないこと。これしかない。僕はもう好奇心だらけ。「こうすりゃこうなんじゃん」「証明したいなぁ」「やってみたいな」「えっ、そうなの」って。
ー 逆に、好奇心が無くなることはないんですか。常に好奇心、好奇心ですか?
やりたいことがもし無くなったらこの仕事をやる意味は無いし、お客さんや自分の周りに対しても失礼だと思う。その時は辞めるべきだと思う。だから辞めない為の努力をするんじゃなくて、存在理由がある人間でいたいというのがすごい大きい。それは自分が決めるだけの問題じゃないしね。
TASTE 河内山智のインタビュー

一緒に面白がって
YOU TUBEにアップしたい

ー 日々湧き立つ好奇心で新しいものをクリエイトし続けるという。
あと、自分が作る物は我を押し付けるものではないというのが大前提にある。自分がトライして作った物が最終的にオーナーに寄り添うものになれば良いとだけ思う。絶対に、「せっかく作ったのに」的な発想は持ちたくない。
ー その後の扱いはオーナー次第だと。
分かり易く言うと、あるオーナーにバリッと仕上げたバイクを納車した時に、いきなりその家の子供が、「パパ、このシールあげるよ」ってタンクの真ん中にペタッと貼ったとするよ。そこで僕は剥がさせる気は全くないし、むしろそのままの状態の方が良いとさえ思う。オーナーにとってはそのシールが貼られたことで子供との思い出が増えるから。その子にいきなり傷を付けられたりしてもそれは同じこと。それがその人に寄り添うという意味だからさ。
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ー そういう意味ですね。
うん。だから、例え納車した時に、「実は出来立てのバイクを爆破するのが夢だったんですけど」とか、「海に沈めたいんです」、なんて突拍子も無いことを言われても、じゃあ一緒にYOU TUBEにアップしましょうよって言える人間でいたい(笑)。それが僕のポリシーかな。それぐらいオーナーの自由があっても良いんじゃないのって。

TASTE CONCEPT MOTOR CYCLE

TASTEのショップ外観
住所 東京都八王子市川町244-286(Google MAPを開く
電話 042-652-5491
FAX 042-652-1857
SHOP TASTE CONCEPT MOTOR CYCLEのショップ紹介
営業時間 11:00 ~ 20:00
定休日 月曜日